【第三回】え、たったの3人?情報の「信頼性」と「妥当性」
「なるほどな、20代女性の80%は左利きの男が好きなのか。今日から左手で箸使う練習しようっと!」
っておいコラ、コアラぁああああ!
お前の目は節穴かぁああああああ!
調査対象10人だよ10人!それ本当に信用していいの?!
極端な例だとお思いでしょうか?実はテレビなんかだとたまに見るんですよ。私がこの間見た番組なんか、「なんと60%が…」とか言ってアンケートの対象者5人!なんてのがありましたからね…呆れて物も言えませんでした。
前回、主張の根拠となるものについては、事実と意見の2つを挙げましたね?
今回はこの根拠について、もう少し深く考察してみましょう。
事実、と言っても色々ありますよね。例えば、筆者の経験談だって、意見か事実かと聞かれたら紛れもない事実です。
他には、やはりみなさんが信用を置くのは、統計的なデータでは無いでしょうか。アンケートなどがこれに該当しますね。
科学の分野であれば当然、実験結果の提示をするべきでしょう。数学論文なら証明がこの根拠に当たりますね。「多分こうなる」で定理が出来たらたまったものじゃありませんから。
余談ですが、科学や数学の世界においては証明無しに仮説を立てた場合、一般的に「ナントカ予想」と呼ばることが多いです。リーマン予想、みたいな感じです。
さてここでは、特に統計的データについて理解を深めまていきますよ。
画面の前のみなさん、
「数字を根拠に出されると、つい信用しちゃう!」
どうです?該当する人は手を挙げて、はーい!
おぉ見えます見えますよ、たくさん手が上がってますね。かくいう私も統計データはやっぱり信用したくなります。
でもご注意を、統計データが必ずしも信用できるとは限りません。
では、統計データの信憑性は何を見て確認したら良いのでしょうか?
言うまでもなく、まずは人数の妥当性でしょう。先ほど挙げた母数5の統計データなんて、論外ですよね。
次に見るべきは調査対象者の層です。
それでは例を挙げて分かりやすく説明していきますね。
今、「国や文化に関わらず、女性は赤を好む」という論文を読んでいます。
なんとその論文によると、実に95%の女性が赤が最も好きな色だと答えたと言います。しかも調査対象はなんと10万人!これは十分信用できそうですね。
でもよく見てください、アンケート対象の女性の国籍はどうでしょうか。日本人が5000人、アメリカ人が1000人、韓国人が100人、ドイツ人が25人、その他全部インド人!
これでは、「国や文化に関わらず」という主張に対して疑問が沸きますね。これはむしろ、「インド人女性の95%」というべきでしょう。
こんな風に、主張の根拠として調査対象者が適切でなければ、そのデータは意味をなさないんですね。
さて、データを見る際に注意すべき点としてはさらに、「信頼性」と「妥当性」が挙げられます。
はい来た!学生のみなさん、お待たせしました。今までわりと一般的な本やネットの記事の話が多かったですが、ここからの話は少し学術的なものになりますよ!
社会人のオレにはマジ関係ねぇしぃ、とか言わないで、学生ではない読者のみなさんも読んでくれたら嬉しいな!
「信頼性」と「妥当性」、この2つは何が違うかみなさん説明できますか?
英語ではreliability とvalidity になるわけですが、似ているようで実はこの2つには大きな違いがあります。
例えば、
『視力は、「身長-年齢」という計算式によって計測されます。』という提言があるとしましょう。
「おい天邪鬼、お前バカじゃねぇの?こんなの信頼もクソもあるかよ。なんで身長と年齢が視力に影響するんだ?信頼も出来なきゃ、妥当性もねぇな。」
へぇ、本当にそうですかぁ?
私はこの計算式を「信頼」しますよ?
なぜって?
では画面の前のみなさん、身長-年齢を計算してみてください。
はい、それがあなたの今日の視力です!
では明日また、身長-年齢を計算してみてください。
はい、それがあなたの明日の視力です!
またまたではでは、一ヶ月後に身長-年齢を計算してみてください。
はい、それがあなたの一ヶ月後の視力です!
あ、今笑ったあなた。私の言いたいことが分かっちゃいましたね?
そうです、何度やっても、「同じ」結果が出ますよね?
そりゃもちろん、一年以上経てば身長も年齢も変わりますが、それはともかく、直近で何度計っても同じ計算結果が出るはずです。
それが、データの「信頼性」です。
繰り返し何度やっても同じ結果が期待できることを、「信頼性がある」と言います。
では妥当性とは何か。これはみなさんがおそらく想像している通りの意味です。つまり、そのデータが信用に値するか。身長-年齢=視力という計算式が妥当かと訊かれれば、当然答えはNOですよね?
つまりさっきの例では、「信頼性はある」けど「妥当性はない」ということになります。
どうですか、ちょっと賢くなった気がしません?
え、知ってた?
…そこは知らないフリしてほしかったなぁ。
とにもかくにも、データの信頼性と妥当性を考慮しながら読むこと、これもまた「クリティカルリーディング」というスキルの一部です。
さて、長かったですか?短かったですか?
「天邪鬼って、話長いし横道それるし、結局何言ってるかよく分からないよねぇ…」
今言ったの誰だ?聞こえてるぞ!!!
でもご安心ください、次回は今までの総復習、まとめです。
本書はあと少しだけ続きますので、どうか最後までお付き合いください。
Love to read, think, and smile!
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