第31話「ソラに太陽がある限り」
あの時の車内の一言のあと、僕は疲れて車内で眠ってしまっていて気づけば、畑の店の駐車場にたどり着いていた。
僕を起こしたのは畑だった。
コンコンとサイドガラスをたたく音が聞こえ、僕はパワーウィンドウを操作して窓を開ける。
「おい、車で眠るなよ風邪ひくぞ。」
「……あぁ、そうか疲れてそのままだった。」
「結構早かったな、別に急がなくても何台も車はあったんだが。」
「今何時だい……、畑?」
畑はそう聞かれ、ちらっと腕時計を見る。」
「朝4時半ってとこだな。何をしてきたのかは知らんが、うまくいったのか。」
「……うまく行ったんじゃないかな、おれも正直ソラが何をしたかったのかわからない。」
そうやって、僕はソラがいるはずのスマホを覗き込む。
「おい、ソラ、畑が車取りに来たぞ。渡していいんだよな。」
しかし、スマホは何も答えない。
ただ時計の画面を示すのみだ、ちなみにこのスマホには何のアプリも入っていない。というよりUIすらアンドロイドでもiphoneでもない何かになってるので使い方はさっぱりわからない。
「寝てんじゃないのか、宇宙人だって疲れるだろう。」
畑はそうやっていう。
ソラが寝ている場面っていうのを見たことがないのだが、一応休んでるときはあるといっていた。眠ったりするのとは違うらしいのだが。
ただ、こんな風に呼びかけがあれば必ず返すんだけどな。
一応ロボットの方もいろいろ操作してみたんだが、反応はなかった。
もちろんおれのスマホの方にも何のメッセージもない。
「故障とかしたのかな。」
ソラはあくまで生命体なので、故障っていう表現が何を指すのかわからないが、体調悪いこととかあるのかもしれない。もしかすると、ただ単純にめんどくさいから返事をしないだけなのかもしれないけどね。
「心配だが、とりあえず飯でも食いに行こうぜ24のレストランとかあるだろ。俺は腹減っちまったよ。」
そうやって、畑が言うので、確かにただソラの返事を待っているだけでも仕方ないので畑に運転席を変わってもらい、レストランに向かった。
☆彡
「それで姫様を助けるためにカーチェイスか、よかったよ俺の車じゃなくて。銃とかに撃たれたら洒落になんね。」
「ちょっと声が大きいよ畑。万が一があるだろ。」
一応犯罪者なので、誰かに聞かれたくない。もっともこのデニーズに客は俺たちしかいないのだが、それでも店員とかいるしね。
「それにしても今日のソラは全然何もしゃべらないね、いつもなら彼が一番しゃべりたがりだから、なんならこっちがしゃべる暇なんてないのにさ。」
やはり先ほどから、一度もスマホに反応がない。いつもなら声を出さなくても、文字にはしてくるのにな。
「とりあえず、朝一でマキナに聞いてみようかな。まぁあいつが朝一で起きてるかっていうと自信ないけどな。」
「暇だから俺も付き合うわ、っていうか心配だしなソラ君のこと。でもマキナなら分かるのかそれって。」
「少なくとも僕よりは何かわかるんじゃないかな。なんか痕跡とかたどって、今ソラはここにいるとか、スマホ内の変化とかさ。正直僕にはなんもわからないから。」
本当に3時間近く何の反応もないなんて珍しい、もちろん今までだって寝てる間とかは話していないし、特に用がないので半日話してないなってことはざらにあったが、問いかけて答えないソラなんて初めてなのだ。
なんだか、本格的に心配になってきた。
☆彡
そしてそのままデニーズで時間をつぶし、朝8時になったので、マキナの部屋に向かうことにした。一応デニーズにいた時点で、マキナにLINEはしていたのだが、いっこうに既読すらつかないので、8時に強引に部屋に押しかけることにした。
男二人が朝に女子の部屋に押し掛けるなんて物騒なことこの上ないが、状況が状況だけに許してもらおう。
とはいえ、マキナの部屋はオートロックなので強引に押しかけようにも外のインタホンを通じて、中からマンションの入り口を開けてもらわなければ入ることができない。なんとなく出てくれなそうだけどな、寝てるだろ多分。
ためらいなく畑は、マキナの部屋の番号のボタンを押す。
すると、ざっと一瞬雑音が入って、インタ―フォン越しに声が聞こえた。
「あ、太陽さぁん、ちょうどよかったですぅ。早く中に入ってください。」
あれこの声はマリンちゃんだ、そうかマキナは起きてなくてもマリンちゃんがいてくれたか、初めてマリンちゃんに感謝したかもしれない。マンションの扉が開錠されたので僕達はさっそくマキナの部屋へと向かった。
マキナの部屋で出迎えたのは、はちきれんばかりの胸のせいで、目のやり場に困るパジャマ姿のマリンちゃんだった。あのですねマリンちゃんさすがに上になんか羽織るかなんかしてほしい、いやほしくないですけど。
いやそんなことを考えてる場合じゃないんだ。
「マリンちゃん、悪いけどマキナを起こしてくれ。」
さすがに、寝室に男二人が上がりこむわけにもいかない。
しばらく間を開けてからマリンちゃんは言った。
「……あのそれが、マリンが起きるとマキナ様はどこかに行ってしまったらしくて、それで…書き置きが……。」
な、なんだって。
「か、書き置きを見せてくれ。」
マリンちゃんは僕たちにテーブルの上の紙を指さした。
紙にはこう書いてあった。
『好きな人ができたので、その人と旅立ちます。探さないでね、心配しなくてもいつかきっとまた会えるよ。あとあの童貞の先輩にも謝っておいて。じゃあね。』
というものであった。
こ、こんだけかよ。
なんと、ソラに続いてマキナまで行方が分からなくなってしまったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます