第25話「ソラと僕との間に」

 っていっていくら姫様が超絶カワイイとしても、果たして僕が何とかする義理があるだろうか。しかも、テロリストがらみとかって、そりゃあもう命がけなのではないだろうか、最近色々な出来事があったとはいえ、いくらなんでも命がかかるような案件はさすがにごめんだ。

「ソラ、姫様には興味があるが、やめとこうぜ。僕はまだ死にたくない。それに別に義理もなければ得もない。」

 丁重にお断りすることにした。

「まあ、そう言うと思った。」

 そう返したソラ、そして少し間を開けるとこう続けた。


「一億出そうじゃないか。」


 な、なんだって!!


 い、いちおく?


「一億だ、きっちり円で一億用意する。」


「一体、なにを言ってる。そもそもそんな金持ってるのか。」


「君が口座に入れたお金を元に株式とかFXを駆使して稼いだよ。企業の情報なんて筒抜けだからな。割とあっさり稼ぐことできたよ。あとそれじゃらちが明かないから、自ら仮想通貨を作った、はっきり言ってビットコインなんか目じゃないくらい凄いシステムで構築されている。はじめて目にしたやつはビビっただろうな、価格は今もなお上昇中だ」

 仮想通貨のことはよくわからんが、とにかくソラがこの世界でお金を稼ぐことはたいして難しいことじゃないんだろう。ずるいなぁ。

 っていうか地球には干渉する気ないって言ってたのに。

「俺が作った仮想通貨のシステムは今後、実際の貨幣の代わりになるかもな。干渉する気はなかったが、まとまったお金が欲しかったんでついね。」

 なんだよこの宇宙人、はじめ言ってたこととまるで一貫性がない。

 まぃいけどさ。

「一億マジでもらっていいんだな…ケーサツとか税務署とか大丈夫なんだろうな。」


「その辺もきっちり処理する。」

 ど、どうしよう一億なら多少命がけになってもやる価値あるよな…。

 ビルの上空の鉄骨を渡っても2000万円なのに、ソラの仕事を手伝うだけで、

 1億とか美味しすぎる。問題は、簡単に金で動く主人公ってどうなのよってことと、大学生がそんな金持ったらもう就職活動なんてしないぜってことくらいだ。

「分かった引き受ける。」


 即決だった、あっさり金で動く僕であった。

 やった、この仕事終わったら僕は億万長者だ。

 ソラ、君に会えて本当によかったと今心の底からそう思ってるよ。


「太陽、君がわかりやすいキャラクターで本当に助かるよ。」


「一億だからね、是非もなしだよ。で、なんでそんな一億も払ってまで姫様助けたいんだよ。」

 いくらかわいいって言っても、ソラには関係ないだろうし、なんかと特別な事情があるとしか思えないけど。


「依頼人のプライバシーを探るな。乙女の秘密ってことにしといてくれ。」

 また、そのネタか…。お前性別ないんだろう。

 ま、いいか、秘密のままでも。僕としてはお金もらえれば不満はないし、きっと僕が聞いてもわからないことなんだろう。


「ラジャー、秘密のままでいいや。で助けるっていった以上、目途は立っているんだろ。もうすでに、ネットワークとかの痕跡見つけたのか。」

 マリンちゃんの時と同様、警察に無理でもソラには簡単に発見できるはずだ。


「いや、それが今回に関しては、あらゆるカメラにおいてイエンカ姫の姿を確認することはできなかった。また、目撃情報とかもないし、イエンカ姫がなにか発信している様子もない。」

「おいおい、お手上げじゃないか。ネットワークに痕跡がないものじゃ、ソラでもどうにもならないだろう。」

 まさか東京中を走り回って探すわけにもいくまい、そしてそれなら警察がとっくにやってるはず。


「ネットワーク上で痕跡がないってだけで、行方が分からないというわけではない。かなりの高確率でどこにいるかは見当がついてるんだ。」

 またまた、もったいぶった言い方をしだした。


「なんだい、監視カメラじゃなくて、町中のドローンを操るとかしたのか。」

「いやいや、そんな大掛かりなことするかよ。もっと簡単だ、考えれば太陽でもわかることなんだ。」

 、をすごく強調されたのが気に入らないが、そういわれたので考えてみる。

 ……とはいうものの全く見当がつかない。

「警察が全く追えないってことを考えればすぐだけどね。イエンカが誘拐されたとして犯人は誰だろうね。」

 イエンカ姫は、王の一族にもかかわらず、クーデターの首謀者。当然それを誘拐して監禁、軟禁するならば現体制に賛成の国王側の人間だろうな。そして、さらに、今回の誘拐に関して警察は全く行方を追えてない、もしかすると追うことができないのか‥‥。もし国王側が犯人だとするならば、もしかして。


「大使館か。」


 大使館内は基本的に不可侵で、日本の警察が捜査するためには、大使館の長の許可が必要となるはず、大使館内に姫を監禁してしまえば、日本は全く手出しできない。

 それに国王側が自分の国の姫を誘拐したのだから、国を通しての捜査要求が出るはずもないか。


「太陽、その通りだ。警察ももちろん検討はついてるんだろうが、言ってしまえば家族同士のもめ事だし介入する気もないんだろう。日本としても、クーデターが成功することを望んでるわけでもないし、このまま、クーデターが失敗するまで様子見をしたいって感じかな。」


「そうだな、確かに考えると大使館に監禁されてるっていうのはあり得る話だな。僕もそうだとおもう。」

 ってことは後は大使館に乗り込んでいって、姫を助けだせばいいんだな。

 ‥‥‥んっ?

「なぁ、ソラ、それってすげぇ危なくない?大使館内なら相手銃とか持ってんじゃね?そもそも、大使館潜入ってもう犯罪じゃん。国際問題じゃん、やば過ぎじゃないっすか?」

 いくらなんでも銃持ってる相手をするのはやばい。一億より命の方が大事だ、僕はカイジを読んでそれをちゃんと知っているのだった。つーか、犯罪を犯すのはやばいでしょうよ。


「だからこその一億!リスクはあるに決まってるじゃないか。もっとも危険はないように最大限の努力はする。基本見つかったら終わりだから、俺の方で見つからないように最大限の細工をするから心配はいらない。この間の廃人の件よりよほど安全だと思っていいぞ。」

 ソラのやつめ、どうしても僕を犯罪に加担させたいらしいな。あぁ、どうしよう。危険はあっても一億は魅力だ。犯罪に関してはソラがきっとばれないように処理してくれるだろうし。


「頼むよ、太陽。頼れるのは君しかいないんだ」


 ソラに出会ってから、初めてのソラからの頼み事だった。

 今まで頼りぱなしだし、恩返しするのも悪くはないか。

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