第13話「くどい位に口説け」
突然畑に振られて、そして久々にソラが語りだす。
「さっきのふたり、マキナとマリンのやり取りはおもしろかったよ、二人には悪いがね。2人のやり取りがまったく理解ができなかったんだ。情報はそろってたのにだ、100%といっていい。100%情報があって、答えがわからないということが我々の文明では考えられない。」
うんまぁ僕もそこは同意だ。なんだってわざわざ二人とも間違った方に行くんだろう思ったよ。
「そもそも今回の行動が間違いかどうかもわからなかった。俺の考えでいえば、二人とも心の内ではおかしいとわかってながら、あえておかしい行動をしたとしか思えない。あえて狂うことが正解だってこともあるだろうが、今回マリンがホストのためにすすんで売られようとしたことや、マキナが土下座してまで、マリンをつなぎとめようとしたこと、どちらも理解不能だ。いや無理やり解釈をつけることもできるが、それは違う気がする。なんも考えてなかったんじゃないかというのが俺の見解なんだが、どうだい畑?」
「未発達文明に答えを聞くなよ、俺にだってわからねぇ。まぁ、でも俺が太陽に伝えたいのはさ。まぁそういうことだよあんま、正解とか不正解とかさ意味とか考えんなって。そこには、たぶんなんもないんだ。宇宙人だってわからないんだから。むしろソラ君の方がわかんねぇかもな、でも結構いるぜ、まったく合理性のない行動をとるやつっていうのはさ。」
「ふふふ、そうだななんだかんだ僕たちの星の奴は合理性が脳を支配している。もちろん俺も…。だからさっきのやり取りは最高のショーだったよ。」
ショーだなんてひどいことをいうなソラは、あいつらは真剣なのに。
「ま、ソラ君に聞いといてなんなんだが、ここからが本題でね。少し、太陽をいじめようと思う。ここからがお前をえぐる話なんだ。まぁクスリだと思って聞けよ?」
なんだよ、この話のどこに俺が関係あるんだよ。と心の中では思ったが、口には出さないことにした。
「…お前なんだかんだで、マキナは自分のことを好きだと思ってただろう?」
…な、何を言うんだ畑は、さすがにそんな思い上がったこと考えたことはない。おれはそんな勘違い野郎じゃないって。そう思って僕は反論する。
「いや、そんなことはない。僕は遊ばれてただけだ。」
「そんなわけないさ。お前ほどプライドが高いやつがそれを受け入れるはずはない。好かれてもない相手に対して、あんな態度をとれるほどお前は無節操じゃないさ。」
俺のプライドが高いだって、畑は何を言ってやがる?僕は、マキナの前で平気で土下座とかするような男だぞ。
「‥‥‥。」
だから、僕は何も言わない。
「自分の家にマキナが遊びに来るたびに、お前はほっとしてただろ。あぁこいつは俺のことをなんだかんだ好きなんだって思ってたはずだ。」
僕はやはり何も答えない。
「レズっていうのもなんなら嘘だと思ってたんじゃないか。本当は好きだという思いへの照れ隠しだと思ってたんじゃないのか?」
何も答えない、答える気はない。
「こういうまったりした空間を2人で楽しめてると、そう思ったんじゃないのか。」
僕はやはり答えなかった。叱られてる小学生のようにだんまりだ。
「残念だった、現実は違かったな?マキナは本当にマリンのことが好きだったんだ。本当狂う位にな。それは理解できるな。おまえに向けていたのは好意だ、いやだから好きではあるんだろう。しかし、マキナの狂うほどの愛はマリンちゃんに向けられてた。これが現実。だからな、まぁこれは、お前の初の失恋だよ。」
「畑、やめ、やめてくれ!」
僕はもう黙っていられなかった。
うそだ。嘘だ。うそだうそだうそだうそだうそだ。
「じゃあ、なんで‥‥。なんで‥‥」
「そりゃあ、おまえ、本音でむきあわずそばにいてくれたお前が楽だったんだよ。」
やめろっ!
ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう‥‥‥‥‥
「そんなはずっ‥‥。」
僕はマキナにとって特別だったはずなんだ…やめてくれよ…ゆるしてくれ…
ちくしょう…
だめだよ、そうかもしれないとは思っていたんだ。
ちがうな、知っていた…
そうだって知ってた。やっぱ、友達以上にはならないだろうってそんな気がしてた。
僕はただ、失恋を
「ただよ、太陽。俺は意地悪でお前を追い詰めたわけじゃない。」
何だよ、これ以上ない位、僕は追い詰められたぞ。正直、畑のことが嫌いだ。
「…お前、今回をなかったことにしようとしただろう。失恋を認めないことにしようとしただろう。マキナに恋した自分を消そうとしただろう。それ、つらいぜ。この先まともな恋愛がなんだかわからなくなる。だからさ、余計なお世話だが教えてあげたんだよ。これはちゃんとした失恋なんだよ。」
無視したとしても、きっといつか自分で悲しい現実に気づいていただろうと畑はいった。
ただ僕は反論した、やっと口を開いた。
「畑、別に初めての失恋ってことはないよ、振られたことなんて腐るほどある。」
そう、付き合ったことはないが振られたことはたくさんある。
「それは失恋じゃない、お前傷ついてないじゃないか。振られるとわかって、振られに行っただけだよ。今回のように心の通じた相手の感情が、自分に向いてなかったって思い知らされたのは初めてのはずだ、違うかな。」
‥‥たしかに、まじめに告ったことなんてない。付き合えたらラッキーくらいで、むしろ振られて、ほっとしたことさえあったかもしれない。
マキナは最も距離の近かった女子だった。それだけに、確かに僕はマキナをマリンに取られたという気持ちが実はある。
言われて気づいたがたしかに僕は嫉妬している。その感情を気づかないふりをしてたということに今気づかされた。これ以上ない位嫉妬している、僕は人生で一番感情を揺り動かされたのかもしれない。
「悪いわけじゃないんだよ失恋ってさ、嫉妬もいいさ。あったほうがいい。その方が人間らしいじゃないか。そして、救いを言ってあげればお前は、マキナの特別じゃないってだけで、マキナにとってのお前の地位は変わってない。特別であることに価値があるわけじゃないんだ。別に特別であることは幸せじゃない。今回よくそれをわかったんじゃないのか。誰かの特別になるっていうことがどういうことなのか、どういう覚悟が必要なのか、少しはわかった気がしないか?」
いや、わからねぇよ。僕にただあるのはただ空虚な感情だ。今僕は自分の気持ちに初めて向かい合っている。
「普通でいてあげることも大切だ。マキナにとってお前は普通だったんじゃないか。それってたぶん特別よりすごいんだぜ。お前はすごいことをしてるんだ。」
なんだ、急に、急に今度は僕をほめようっていうのか?
「間違わずに理解してほしい。特別であることが上位だとは思わない。お前にとってマキナは特別な存在だよ、でもさマキナにそれを求めるなよ。いいじゃねぇか普通で、特別を上回る普通だってあるんだ。というかその方が多い、それさえわかってればよ、いくらレズ女だって、もしかしたら普通を求めてお前のところに来るかもしれねぇぞ。」
「ど、どういうことだって。」
はっきり言って、畑も酒のせいで話が飛び散りすぎて言いたいことが通じない。
これが長編小説なら、ここで読者が離れる場面だぞ…。
「だからな、お前は童貞なんだよ。お前は今回の失恋を、いやマキナを好きだという気持ちをなくそうとしたんだ。たかが、他の女にとられた位でな。終わってねぇんだよ、お前の恋は失恋はしたが終わってない。ここからがスタートだ。ちなみに俺ならここからが面白い場面だと思うぜ。」
「す、スタート?」
「だからよ、今回の気持ちをなかったことにするなよ、忘れるなよ、今回マキナがあの変態メイドに取られたってその感情を大事にしろ。そしたら、相手がマキナじゃないとしても絶対に次の恋愛に生きるからよ。」
畑は、空になったウイスキーのグラスの氷を回すようにしながらそう語った。
なんだよ…畑、すげぇな、なんだかわからねぇ。わからねぇけど、すげぇ分かった気がする。
畑は酔っぱらいながらの語りモードだったので、正直言ってることの半分はわからなかったが、でもなにかが分かったような気がした。何がわからないかがわからないような僕の人生に光が差した気がした。
そして、結構酔っている畑に僕は尋ねた。
「どんな人生送ったら、そんなこと語れるんだよ‥‥。」
「そりゃあな30過ぎて大学に通ってたら、いろいろ見えてるもんなんだよ。元やくざだしな。」
そう
「あ、話終わったかい?」
ソラはどうやら、寝ていたらしい。
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