第8話「宇宙人におまかせあれ」
『すでに事件に巻き込まれてる』とソラはそういった。
「えっ、ソラくんもそう思う?」
「いまちょっと調べてみたら、マリンはいろいろなSNSに手を出してるようだな。裏アカの方で結構危険な書き込みがされていた。『とうとう裏アカ見つけた。マリンは俺のだ。』っていう書き込みだ。おだやかじゃないと思うが……」
そういってソラはスマホの画面を該当のページに切り替える。確かに、そのような書き込みがあるが……。
「それまさか、大地の仕業じゃないのか?」
このように疑わざるをえまい。
「違うわよ。裏アカとか知らないし、ライン以外やってるのは知らなかった……」
さっきまでと違ってマキナの声に元気が無いのがわかった。マリンに何かあったことが、マキナにも濃厚な説になってきたからだ。マキナの表情にも声にも焦りと不安がはっきりと現れていた。
「ねぇ、ソラ、協力してくれない?あなたの力があれば
なるほど、確かにソラの力ならネットワーク上を追って現在どうなってるのかを追うのはたやすそうだ。秋葉原なら監視カメラも多いし、ソラの映像処理能力なら発見も早いかもな。しかし、ソラはあんま地球に干渉する気はないといってたがどうだろうな。
しかし、ソラの答えはあっさりしていた。
「いいよ、マリンって子の行方を調べればいいんだな。というかもうやってる。ネットワークのつながってるカメラなら全部追えるぜ。さすがに少し時間かかるけどな」
飛んだ肩すかしを食らった。もうやってたのかよ。
「あれ、いいのか。宇宙人としてそんな地球にかかわらないんじゃなかったか。」
昨日といってること全然違うだろ。
「そんなこと言ってないだろ、べつに友達の頼みなんだから断る方がおかしいじゃないか」
友達か……。
「うれしい、ソラ君大好き。どっかの無能先輩とは大違い!」
いちいち俺を引き合いに出さないでくれよ。
僕が無能かどうかはおいといてソラの協力を得られれば、マリンちゃんを追うのはそんな難しい話ではないだろう、大ごとになってないといいのだけど。
そして引き続きソラは、関連の情報を調べ始めたようだ。
ソラが検索作業をはじめたので、間をもて余してしまった僕は再びコーヒーを作りに席を立った。
マキナは露骨に不安そうで空気が重く、ずっと正面にすわってるのがきつかった。
そうして10分ほどたったくらいでソラがしゃべりはじめた。
「大体つかめた、だが……」
何かをつかんだらしい。すげぇな宇宙人。
というか俺はもっと早く秒単位で把握できるのかと思ってたが、そこまで単純なものじゃないんだな。
しかし、なにか奥歯に何か挟まったかような言い方をするソラである。
「あまり、いい結果じゃないな。これは……うーん。正直に全部言ったほうがいいのかな?」
とソラはマキナに尋ねた。
「……お願い」
「わかった言おう。正直、ストーカーに狙われた方がましだったな、さっきの書き込みはマリンの行方不明に関係がない。ほんとにただのメイド喫茶の熱心なファンだった。行方不明にかかわってるのは、はるかにたちが悪い相手だ」
「えっ、どういうこと?」
「マリンちゃんはどうやら、月~木曜日は毎日ホスト通いしてたみたいだ。知ってたか?」
「……本当なの?」
「裏アカで、お気に入りのホストとホストクラブをつぶやいてたからな。その情報を元に近くの監視カメラを追ったら、きっちりマリンちゃんが通う姿が確認されたよ。」
「ホスト通いなんて…。」
マキナは信じられないといった顔をしている。
「問題はだな、先週の木曜の後に帰る姿がどこにも映ってないということだ。通常であれば歩いて帰る姿が監視カメラでとらえられてるんだが、それがない。それだけならタクシーで帰ったかもしれないし、だから何ってこともないんだが…。」
まぁな、姿がないってだけでは何とも言えないな。カメラがすべてをとらえられるわけでもない。
「だから次は、そのホストの方の情報をSNSや爆サイって掲示板も使って徹底的に調べた。その結果がやばいんだ。まず、このホストってやつが、少年院上がりだ。一度強姦罪で捕まってる。まぁそれもかなり悪質なやつでだ。」
おいおい、いきなりやばいやつが出てきたな。
「さらに、掲示板情報によればこいつはクスリにも手を出してるな。お客の女の子が買わされそうになったって書き込みが何件もある。そして次、おそらくマリンちゃんは相当ホストクラブに貢いだらしく、いわゆるツケがたまってたらしい。そして、このホストは源氏名が秋葉キリ、本名、
おぉLINEにもアクセスできるのはすごいな。ソラにかかったら芸能人もうっかりゲスな不倫とかできないな、あっさりLINE情報を開示されてしまう。
「そこにこう書いてあった……。『マリンってブスメイドまじ、ツケため過ぎだから、沈めることにしたわ。ぶすだけど乳はでけぇからあの変態ども1000万は出してくれんだろ』っていうものだ」
うわっ、ひでぇ内容のラインだな。
っていうかマリンちゃんブスじゃないとおもうけどそこは問題じゃないか……。
……沈める?
いわゆるソープに沈める的な奴かな……いやな世界だなあ。
「この会話が適当な与太話ってこともないだろう。マリンの消息が分からなくなったタイミングと合わせて考えると、何らかのやばいグループに、おそらく木曜に拉致られて、河原たちに今監禁されているんだろうと思う。沈めるっていうのは、性風俗の関係者に売るってことだろうな。1000万ってことを考えたら、風俗とかそんな生易しいものじゃないのかもしれない」
すべてを聞いてマキナが震えだした、顔面が蒼白となっている。
そりゃそうだ、聞いた内容は想像をはるかに上回る最悪の状況といえる。無関係な僕でさえすこしヤバさを感じている。
それに思った以上にマリンって子もいろいろ問題がありそうだなあ。
「なんてことなの……」
マキナは声を押し殺しながら震えている。居ても立っても居られないという感じだ。
「だが、まだ救いはある。そのあとの仲間からのラインで、『次のやり取りは火曜日だ。それまで手を出すんじゃねぇぞ。つぎ商品に手をつけたら、おめえやばいからな。』って河原のもとに送られていた」
「カワハラはそのあと『わかってる、今回はだからあの女はボス預かりだ、薬漬けにしたかったんだけどな笑』と返してる。これを考えるならまだ、マリンって子は監禁されてるだけじゃないのか?」
監禁はされてるものの、なにもされてない……。不幸中の幸いってやつか、それも希望的観測だが。
それより火曜日って?
「火曜日!今日じゃないかっ!」
ぼくは声を荒げていった。
「そう今日だ。そしてこんな取引の実行はさすがに夜だろうよ。マキナ、まだ間に合うかもしれないぞ」
ソラはマキナに問いかけた。
問いにマキナは間髪をいれずに答える。
「マリンを助けに行くに決まってるじゃない? ねぇソラ君、手伝ってくれる?」
マキナは、僕のケータイをにぎりしめ画面に向かって熱く語りかけた。彼女の声は少し震えている。
「友達だからな。任せてくれ。」
ソラは快く引き受けた。
マキナとソラによるマリン救出作戦が始まろうとしていた。
ま、まてまてまて、
なんでこの場面でマキナから僕の名前が出ない?
「僕も手伝うぜ」
置いてきぼりにされたくない一心で僕はその一言を発した。
マキナはびっくりした顔で僕をみた。
「だって、ソラはともかく、先輩はただの人間じゃない、相手はやくざまがいだよ。危なすぎるよ。っていうか、先輩が手伝ってくれてもさ……っていうね」
うそっ、なにこの外しちゃった感……。
いやいや僕をはずすとかないでしょ。やらせてくれよヒーロー役をさ。僕一応キックボクシングやってて強い設定なんだぜ。
ここでスタメンから外されるわけにはいかないので、僕はマキナに強く訴えかける。
「女の子にそんな危ないことやらせるわけにいかねぇだろ。惚れた女のために動けなくって何が男だよ。俺も手伝うぜ、マキナまかせときな!」
高らかに伝えた。
ばっちり決まったぜ。惚れ直したかマキナ!
しかも今回は大地じゃなくて、ちゃんとマキナって呼べたぜ。
そんな大したことでもないことを誇らしげに僕は胸を張っていた。
だが、マキナは困ったような顔して
「……ありがとう。じゃあとりあえず今回の件を警察に伝える役をお願いね」
とずいぶんとテンション低めに僕に伝えたのだった。
……了解。大切な役だね。
それでも、マリン救出作戦は3人でなんとか進むことになった。
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