第8話 病院

久しぶりに大きく体調を崩しました。

僕は体調を崩しても、できる限り自力でなんとかしようとするタチで、限界ギリギリまで病院に行くことはないのですが、今回ばかりは胸の激痛に即白旗。数年ぶりに病院を受診しました。


受診の結果即日入院することになり、処置室のようなところで数日過ごすことになりました。

誰か人がいれば少しお話しすることもできただろうし、個室みたいにテレビでもあれば時間を潰せたのですが、本当になにもない部屋だったので、ただただ外の景色を見ながら様々なことに思いを巡らせておりました。

その中で、「なぜ僕が病院に行かなくなったのか」について考えてみたのです。


結論から言えば、「治療が怖い」というのが一番の理由なのかなと思います。

僕は小さい頃虚弱体質で、入退院を繰り返していた時期がありました。

病気を治すためには薬を投与しなければならないわけですが、僕はグロいものが苦手なので血だったり、体に何かが刺さっている状態を直視することができません。

点滴をされる度に、自分の腕に何かが刺さっているということが気持ち悪すぎて寝れなくなってしまい、治るものも治らず入院期間が延びたなんてことがありました。


さらに当時僕は錠剤が苦手で、粉薬ばかり処方してもらっていたのですが、ある日先生が

「そろそろ錠剤も飲めるように訓練しなきゃね。」と言って錠剤を処方したのです。

僕はどうしても錠剤が飲めず、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら毎回30分くらいかけてやっと飲み込んでいたのですが、朝昼晩訪れる拷問のような時間に耐えかねて、看護婦さんが運んできた錠剤を隙をみて窓から外へぶん投げ続け、治るものも治らずまたしても入院期間が延びたなんてこともありました。


そんなことを思い返しながら今回もどんな拷問をされるのかとビクビクしていると、先生から思わぬ治療法を宣告されます。

「これからわき腹に少し穴をあけて、胸の中にチューブを入れますね。」

・・・思わず無言。

医療知識がある方にとっては特別なことではないのかもしれませんが、知識のない僕にいきなりそんな奇想天外なことを言われても、「はい、わかりました」なんてすぐ受け入れられるわけもなく、

「そんな簡単に穴あけるなんて言われても怖いです!意味分かりません!」なんて、恐怖のあまりなかば半ギレで慌てふためく始末。


結果めちゃくちゃビビりながらも治療を施してもらい、おかげさまで体調も回復してきました。

先生や看護婦さんは僕の体調のことを考えて善処してくれているのに、それを蔑ろにするようなことをした自分が情けないと思う限りです。

心血注いで僕たちの健康を支えてくれる医療従事者の方には、本当に頭が上がらないなあと痛感した日々でした。


しかして、20代前半の男が処置室で取り乱す姿を、先生や看護婦さんはどんな目で見ていたのだろうかと思うとぞっとするので、これからは別の意味であの病院から足が遠のきそうです。

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うそつき人間 経過観察中 かずまみむめもし @kazumashi_08

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