第46話 男の娘勇者!

「ライムお兄さん、起きてください!朝ですよ!」

 そういって身体が揺すられる。

「おはようオリヴィア」

 そういって身体を起こして立ち上がり下のリビングに行くとそこにはモニカと

「うわぁ~ん!もうアイツの責任だ!イシュタル様からお嬢様と一緒に生活なさいって返事が返ってきちゃったじゃん!」

 不満をぶつくさ言いながら料理にがっつくマリアさんがいた。


「あっ、やっと起きてきましたね!さあ早く封印を解いてください!」

 俺が起きてきたのに気づいたのかマリアさんが泣きながら俺に頼み込んでくる。

「もう嫌なんです~!昨日からお嬢様に色々指示されて大変だったんですから!」

 本当に大変だったんだろうな、目の周りが腫れぼったくなってる・・・。


「分かった、分かったから!ただ、戻ってくるなって言われてるならヴァネッサのお世話係で残る方が賢明だと思うよ・・・。勝手に戻ったら怒られるよ」

 そう伝えるとマリアさんは泣きながら天を仰ぎ

「どうしろって言うのよ~!!」

 御愁傷様です、マリアさん。


 そのあとマリアさんの封印を解いたのはいいがマリアさんは結局ヴァネッサのお世話係として、この町に残ることになった。

◆◇◆◇

        次の日の朝

「兄ちゃん!大変なんだよ!今すぐ来て!」

 チーが慌てた様子で家を訪ねてきて俺を起こしにやって来た。

「どうしたのチー」

 そういって起き上がると同時にチーに腕を引っ張られパジャマのまま家を飛び出る。


「どうしたんだよ~?」

 外に出るとそこには戦士風の衣装を身に纏った女性と旅人風の衣装を纏った男の子?それと僧侶風の衣装の女性が町のみんなと見つめ合い、硬直した状態だった・・・。


「えぇ~っと、どういうことになってるのかな?」

 戦闘を開始しようとしてる両者のあいだに入り何があったのか状況を聞く。

「どうもこうもないよ、お兄ちゃん!彼女達が急に攻撃をしてきて・・・」

 珍しくリアが怒っている。


「ということなんですが本当ですか?」

戦士風の衣装を身に纏った女性に真偽を確かめると

「何で亜人種や魔人種がこんなところに町を作ってるんですか?おかしいです!人に仇なす良からぬことを考えているんでしょ!そんなことは私たちが許しません!」

 彼女達は何か壮大な勘違いをしているようだ・・・。


「何か勘違いをしてるみたいなんだけど・・・。彼女達はこの町の住民なんだけど・・・。それで俺がそのまとめ役です」

 そういって理由を説明すると旅の一行は武器をしまいこちらを見つめてきた。


「本当ですか?」

「本当です!」

「じゃあ、私たちは何もしてないこの町の住民を襲っちゃったの?」

「そうです!」


俺の返答を聞いて彼女達の顔色は、青ざめていく。

「まず初めに言うべきことは?」

戦士風、僧侶風、そして旅人風の衣装を着ている3人にそう声をかけると3人は互いに顔を見合わせて

「申し訳ありませんでした!」

「ごめんなさい!」

「すみませんでした!」


 3人はその場で座り土下座をして謝ってくる。

「だってさ、どうする?」

 みんなに意見を聞くと

「一方的にやられるのは気にいりません!」

 リアがそういうと周りのみんなも『そうだ!そうだ!』と怒号をあげている。


 すると家の中にも声が聞こえていたのかモニカが車イスに座りオリヴィアがそれを押してやって来る。

「まったく・・・。話は聞こえてたけど、やられたからやり返す、そんなことを繰り返しても生み出すのは憎しみだけだよ🎵ねっ?だから彼女達を許してあげよ🎵」

 そういってモニカがみんなを諭すとみんなはモニカが言うなら仕方ないと旅の一行に『気をつけてくれよ』と声をかけて自分達の家に戻っていく。


 それにしても、この異世界に来ても瑠璃に言われた言葉が聞けるなんて・・・。

 そう、さっきモニカが言った言葉は昔、小学生だった瑠璃がクラスの男子からイジメられていた時、犯人を見つけた俺がその男子を呼び出してボコボコにした時に瑠璃から言われた言葉で今ではもう聞けないと思っていた言葉だった。

「それじゃあ、とりあえずウチに来るか?」

 そう、伝えると頷いていた。

 そんなこんなで旅の一行はウチに来ることになった。

◆◇◆◇

「でっ、何で急に攻撃をしたの?みんなは言葉も喋れたはずだけど?」

 家に呼んだと同時に床に正座をさせてどうしてこんな状況になったのか説明を求めた。

「もういいよ🎵ライムも許してあげようよ🎵」

 モニカは、そう言うが正直俺は仲間が傷つけられたことにイラだちが隠せない・・・。


「そう言う訳にもいかないんだよ・・・。家族同然の友人達が急に傷つけられたんだよ?自分達の仲間がやられたと思ってよ・・・、傷つけた相手の事を許せる?」

 かなり真剣な顔をしていたのだろう旅の一行は今にも泣き出しそうな顔で申し訳なさそうにしている。

「ねぇ?どうなの?」

 低い声で追求するとついに僧侶風の衣装を纏った女性が泣き出してしまった。


「いや、泣けばいいって問題じゃないよね?そこらへん分かってるよね?ワンワンワンワンうるさいんだよ。いい加減、泣き止んでくれないかな?」

 そういうと僧侶風の衣装を纏った女性はグスッグスッと嗚咽まじりだが、だいぶマシになった。


「それでどうなの?君達は自分達の仲間が痛めつけられて許せるの?それとも許せない?どっちなの?」

 改めて旅の一行に言及すると3人とも

「許せないです」

 と涙ながらに呟いた。


「それが普通だよね、だから俺は君たちを許すつもりは一切無いから」

 そういって3人の頬を思いっきりビンタする。

 3人は自分達のしたことと俺がどうしてこんなにも怒っているのか理解できたのか泣き出してしまった。

 その姿を見て、改めて3人に次はないことを伝え自室に戻っていく。

◆◇◆◇

「まったく、本当にライムは不器用なんだから」

 そういってモニカが隣で腕を絡ませてくる。

「みんなのために怒ってくれて彼女たちにも考えさせるためにわざとあんなに怒って・・・。本当に不器用なんだから」


 どうやらモニカには俺の真意を見抜かれていたらしい・・・。

「不器用でも何でも彼女たちに人種に関係なく話し合ってお互いを理解しあえるって事を分かってもらいたいからね🎵戦争からは何も生み出さないからね🎵」


そうモニカに伝えると

「それ、さっき私が言った言葉をほぼそのまま使ってるじゃん!もぅ~!」

 そういって俺の鼻を指先でチョンとつついてきた。





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