第24話 初の移住者

「ほら落ち着いて」

 そういって店員さんはカモミールティーを出してくれた。

「すみません、ありがとうございます」

 そういってカモミールティーを飲むと


「飲む前に睡眠薬とか毒物が入ってないか確認した? 信じてくれてるのは嬉しいけど少しはそういった事を確認してから飲みなさい」

 そういってクスクス笑ってこっちを見つめてくる。

「えっ、大丈夫ですよね? だってそんなに悪い人には見えないですし…。人を見る目はあるんですよ俺」

 そういってカモミールティーを飲み干すと


「少しはテンパってくれると面白かったんだけどな…それでセイレーンと…君は人だよね? 何の用かな? 」

 カウンター越しに首を傾げてこちらを見つめてくる。

「今からあのマホメット山に登ろうと思って、それで防寒具を買いにきたんですが、何かおすすめはありますか? 」

 ミソラがここに来た理由を説明すると


「ふーん…ねぇお代はいいから私も一緒についていっていい? 」

 店員のお姉さんが興味津々にこちらを見つめてくる。

「どうするのライム? 」

 貴方が判断してと言わんばかりに話を振ってくる。


「いや、別についてきてもいいですけどお店の人の許可は貰ったんですか? 」

 店員のお姉さんに話を聞くと

「あっ、それなら平気! 私がここの店主だから、それに今日はお客さん来てないし…裏路地っていう立地条件が悪いのかな? まぁそういうことだから一緒についていっても大丈夫だからいい? 」

 そういって見つめてくる。


「う~ん、じゃあとりあえずミソラと先にノルンお姉ちゃんとリアのところに行っててもらっていい? 俺は後でいいから。それと2人に訳も説明してもらってもいい? 」

 ミソラに頼むと渋々ながらも了承してくれた。

「それじゃあ先に行ってるね~! 」

「そんなに歩き回らないでね! 捜すのが大変だから、それじゃあ行ってくる」

 

そういって2人は街の通用門を通って街を出てノルンお姉ちゃんやリアの待つ竹林にあった癒し草の草原にむかっていった。

「さてさて、多分往復であと3時間は待つことになるから、ちょっと欲しい木材とかを買って配送の手配をしてこよう! 」

 そういって街の商売エリアにむかっていく。

◆◇◆◇

「はい、毎度あり~! 」

「それじゃあ中央配送所の方に送っといてください」

 子供が出来るにあたって必要なものを買い足していく。今もベビーベットや哺乳瓶といったベビー用品をまとめて買っていた。

「あとは、木の苗と子供用の食器とかかな?」

 

辺りを見回しそれらしいお店を探すと噴水の向こう側にあったのでそのお店に入り子供用の食器を買い、木の苗はガーデニング専門店で桃の木の苗を購入した。

 これも中央配送所に送ってもらい中央配送所で配送の手続きをしておく。

 グウゥゥゥゥ~!

 そういえばまだお昼を食べていなかった事を思い出した…。


「何か思い出したらお腹減ってきた…」

 とは言え多分向こうのメンバーも俺が戻るまで待ってくれていると思うし、俺だけ食べるのはどうかと思う。

 時間もあれから経過していて、もうすぐ3時間経つと思うのでそろそろ合流場所に向かう事にした。

「遅い! それにどこ行ってたんですか! 」

 

 ミソラが怒りながら駆け寄ってくる。

 そんなに遅れてないと思ったのだが…

 不思議に思ったので近くにあった時計を確認すると3分前についているのだが…?

「えぇーっと3分前だよね? 」

 

落ち着いてもらうために時間に間に合った事を伝えると

「普通は10分前行動5分前集合でしょ! 」

 余計怒らせてしまった。

「ほら、みんな待ってるよ! 早くして! 」

 

手を掴まれて一緒に通用門を出て3人の待つ場所へむかってミソラに連れられ飛んでいく。

◆◇◆◇

「弟くん、おかえり~! 」

「おっ、おかえりなさいです」

「ねぇどうなってるの? 話を聞いたけど多種族対応の町を作ろうとしてるんだって、私もまぜてよ! 」

 おかえり~! と言う言葉と同時に服飾屋の女店主さんに肩を掴まれ揺すぶられる。


「ちょっ、揺さらないでグワングワンする…そういえば俺はライムっていうんだけど店主さんってお名前何て言うの? 」

「あっ、ごめん。そういえばまだちゃんと挨拶したなかったね♪ 私はリカリアっていうの! それで私、移住していい? 」

 俺はノルンお姉ちゃんとミソラを見ると2人とも指でOKサインをしてくれた。

「それなら私もいいでしょうか? 1人はやっぱり寂しいので…」

 

ノルンお姉ちゃんの隣でリアも手をヒョコッと挙げてノルンお姉ちゃんを見つめる。

「勿論だよ~! 私のことはノルンお姉ちゃんって呼んでね! 」

 そういって笑いながらリアの脇に手を入れて持ち上げてクルクル回っている。

「ノルンお姉ちゃん、危ないからそのへんにして山にむかうよ~! 」

 

そういって山にむかおうとすると後ろから

「あの~、今思ったんですが私がノルンさんの妹になったらライムさんは私のお兄ちゃんになるんですか? 」

 不思議そうに尋ねてきた。

「う~ん…そうなるのかな? そこんところどうなのノルンお姉ちゃん」

 

目が回ったのかその場に座り込んでるノルンお姉ちゃんに聞くと

「そうだねぇ~私はそれでいいと思うよ」

 失礼なことなんだけど骨だけなのに目が回るんだなぁ~と思ったのは置いといて。

「じゃあ、おっ、お兄ちゃんこれからよろしくお願いします! 」

 異世界に来たらいつの間にか姉と妹が出来てしまった…。


「ほら、3人とも早く行くよ! 多分家でモニカが帰りを首を長くして待ってると思うから早く薬草を摘みに行きましょ! 」

 ミソラがそういって先に行こうとすると

「それってどんな薬草なの? 私、薬草の名前とか全然知らなくてさ~」リカリアさんがミソラにどんな薬草なのか聞いている。

 そういえば詳しいことをまだリアに聞いてなかった事を思い出した。


「リア、リアが言ってた薬草って」

 リアは俺が何を言いたいのか気づいたのか

「はい、この薬草はオトギリソウって言って月経不順とか止血に役立ちます」

 そういって背中に背負っていたバックから薬学書を取り出してオトギリソウのスケッチが書かれているページを開いて見せてくれる。

「それじゃあ、これを見つければいいんだね! よし、頑張ろ~! 」

 

後ろから見ていたリカリアさんが意気揚々とかけ声をかけ山にむかって歩いていく。

(それって俺が言うべき言葉じゃない…ながれ的に…。まぁいいけど…)

 心の中でそんなことを思いながらリカリアさんの号令で山に登っていく。


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