そしてパパになる。

第22話 できちゃった

 この異世界で家族が出来てから、はや2週間予定日より少し遅れてしまったが家と工房、教会が出来た、さらに機織り機付きの家を建ててもらった。

「それにしてもこんなにお金が余るなんて考えてなかったから何に使おっか・・・?」

 全員を呼び集め今後、余ったこのお金を何に使うべきか意見を求める。


「はい、はい! ウチは鉱石を買ってほしいです」

 ユキが手を挙げて防具や農耕具の質を向上させるためにより質の良い鉱石が欲しいことを伝えてくる。

「それもいいけど私は果物の木とか食糧の確保と保管が大切だと思うから食糧の備蓄庫を作った方がいいと思うな~」

 ミソラは備蓄庫があった方がいいと伝えてくれた。


「う~ん、それも良いと思うんだけど私は道を整備したほうがいいと思うな~どう思う弟くん? 」

 ノルンお姉ちゃんが意見を求めてくるがどれも凄く大切な事だと思う。

「う~ん、モニカはどう思う? 」

 隣にいるであろうモニカに話しかけるとそこにはいなかった・・・。


「あれ? モニカは? 」

 不思議に思いユキに尋ねると

「モニカはさっきトイレに行ったよ…何か顔が青かったけど何かあったのかな? 」

 そんなことを聞いたので不安そうにトイレの方の様子をうかがってると


「ライム…もしかしたらできちゃったかも…」

 へっ? 今なんと…。

 周りにいるみんなもポカンとしている。

「だから、私たちの子供ができちゃったかも! 」

 

モニカは恥ずかしそうにもう1度報告する。

「えっ、だって仮に妊娠したとして…えっ、1回でできちゃったの?百発百中?」

 ミソラが俺たち2人の顔を交互に見比べている。

「いや、1回だけじゃすまなかっけどね」

 

モニカがお腹を触りながら苦笑している。

「弟くんてもしかして絶倫? 」

 ノルンお姉ちゃんがクスクス笑いながらからかうように見つめてくる。

「えっ、ちがっ、違うよねモニカ? 」

 

モニカに話を振ると

「そこまではいかないと思うけど、互いにハァハァして精魂尽きてた感じはしたかなぁ~」

「うぁぁぁぁぁぁぁ~!!!! 何言ってるのダメ! ダメだから何で平気に話してるの! 恥ずかしい、恥ずかしいから! 」

 周りで今のやり取りを見ていた3人は顔を真っ赤にしてワナワナ震えて笑いを堪えている。


「笑うなよ…何必死に堪えてるんだよ! 」

 3人に伝えるとユキが

「いや、だって2人のやり取りが何か夫婦みたいで…あぁ~あ、奥さんと子供がいるのに愛人? がいるのはおかしいよね~ウチは潔く身を引くよ! 2人とも幸せになってね! 」

 そういってユキは少し残念そうにでも嬉そうに笑ってくれた。


「うん、ありがとう! この子とライムの3人で絶対に幸せになるね! 」

 こんなに幸せそうに笑うモニカは初めて見たかもしれない…。またモニカの新しい1面が見れた気がする。

「ねぇ、今の話で考えたことがあるんだけどいい? 」

 モニカのお腹を触ってはしゃいでいる3人とモニカの方をむいて今思いついた事を話すことにする。


「病院、もしくは診療所を造らないか? 」

 そう伝えたとたんモニカのお腹を触っていた3人がクスクス笑いながら

「パパお医者さんがいないと心配なんですねぇ~」

「だってお互い疲れきるまで愛し合って出来た愛の結晶だからねぇ~」

「そのスゴい愛情を受け止めて1つになった愛しい人だからねぇ~」

 

そういって温かい目で2人を見つめてきた

「そうだよ! それもあるけどみんながケガとか風邪を引く場合だってあるでしょ! だからそういった場合も考えて病院もしくは診療所があった方がいいかなと思って、どうかな? 」

 

4人に意見を聞くと

「良いんじゃない? 必要な施設だと思うよ」

 ノルンお姉ちゃんが笑って賛成してくれた。

「じゃあこれからの目標は医者の確保とモニカとお腹の中の子供の健康と出産ってところかな? 」

 

そういってモニカを見つめるとモニカがこっちを見て

「ライムが将来、親バカにならないか心配かな? 」と言って微笑んでくれた。

◆◇◆◇

 モニカの報告があったその夜モニカと2人

 家の中でお腹を触りながら

「それにしてもまさか子供が出来るなんて…俺、お父さんになるんだな、全然実感が無いや…」

 そういって擦っていると


「私はこの子を身籠ってライムの妻になったことを改めて実感しました。子供と一緒に可愛がってね、旦那様♪ 」

 旦那様と呼ばれ驚きモニカを見ると

「子供の名前、一緒に考えようねライム♪ 」

 と言われた。


「あれ? 旦那様じゃないの」

「そんなことを言ってないで~す! 」

 恥ずかしそうにニカッと笑ってベットに大の字になって

「私も、私たちの赤ちゃんも愛してくださいね♪ 」

 その夜はお互い、愛を囁きながら眠りについた。

◆◇◆◇

「ねぇ弟くん、診療所を造るならそこで使う薬草とか探しに行こ! 」

 ノルンお姉ちゃんの提案で俺とお姉ちゃん、ミソラは山に薬草摘みに行くことにした。

「癒し草ってどんなところにあるの? 」

 癒し草と呼ばれる治癒能力に特化した薬草で三つ葉の形をしている。さっきお姉ちゃんから聞いた感じだと竹林にあるって話なんだけど…。


「2人とも~! あっちの方に癒し草があったよ~! 」

 上空からミソラの声が聞こえる。

「分かった~道案内を任せてもいい? 」

 上空にいるミソラにお願いをするとミソラは隣に降りてきて歩いて先導をしてくれる。


「癒し草ってこれの事をなんだ」

 あの世界ではクローバーと呼ばれていた草だった。

「あれ? 誰か先客がいる」

 癒し草が生えている場所に行くとそこには花飾りを付けた女の子がそこにはいた。


「こんにちは、ここの癒し草を摘んでもいいですか? 」

 女の子は少し驚いた顔をして立ち上がり、走ってどこかに行ってしまった。

「俺、変なこと言った? 」

 後ろにいた2人に聞くと2人とも首を振って何も変なところは無かったと言ってくれる。

 

何で逃げられたのだろうと思いながら癒し草を摘んでいく。

「あっ、あのう…逃げてしまってごめんなさいです。あのですね、そこは癒し草と似た猛毒のアシッドグレーっていう草も生えているので、もし良ければ私もお手伝いしましょうか?私、薬とか治療とか得意なので…」

 

さっき逃げていってしまった女の子が戻ってきて、しゃがんでいる俺の目線に合わせ女の子もしゃがんでこちらに話しかけてきた。

「ライムって言います。手伝ってくれてありがとう。君の名前は? 」

 そういって手を差し出すと

「私はエルフのリアって言います。よろしくです」

 そういって差し出した手を握り返してくれた。

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