食べてすぐ横になると牛になる
エル・カズネ
1.牛刑
人間が牛になる? んなわけはないでしょう。ワラワラ
ところが、人間が牛になる時代がやってきた。
「ウィルス感染」「細胞分裂」「増殖に必要な温度変化」その他
特殊な条件247個が、そろった時に人間は牛に変化することが発見された。
牛になっても、性別は変わらず、
大きさは人間だった時の個体と同等で、成長することもできる。
この世紀の大発見は科学アカデミーの厳重な管理下に置かれ、
研究所内には、研究・実験チームと、「人間を牛に変える施設」が整備された。
その結果、数年後には、ほぼ100%に近い確率で、「牛への変体」が完成した。
倫理学的な考察を必要とする、この研究の成果であったが、
やがて死刑制度の代わりに死刑判決同等の重罪を犯した者を牛へ変えて、
家畜用食肉や闘牛にする「牛刑」は、
従来の死刑とは異なった刑罰として、日本その他の国に認証された。
雌の中には、幸運にも、乳牛として、生き延びられる者もおり、
いずれにせよ、死刑囚として投獄し、死刑にするよりも、ずっと世に貢献した刑罰であると、死刑制度に反対していた国の中にも、この刑を受け入れる国が出てきた。
日本、関東地方、冬。
新宿の繁華街に、牛が現れ、警察に捕獲されるというニュースが流れた。
その後も、銀行、国会議事堂、遊園地、地下鉄のホーム、
大学、あらゆるところで、牛が発見されるようになり、
幸い、大事故や怪我はなかったものの、
多発する珍事の背景には
牛を崇める「ヒンズー教徒説」「グリーンピース説」
「福島の牧場主のデモストレーション」「むつごろうさん」など、
憶測が飛びかった。
同じ頃、
凶悪事件で不起訴になった、元容疑者たちが、次々と謎の失踪をしていることが
明らかになり、「神隠し」、「天罰」、「元科学アカデミーの研究員による犯罪」等
さまざまな噂は、ネットを介してまたたく間に広がった。
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