3-16 【従属契約】魔法?ゴメン、ハティ?
セバスたちの班に合流し、何を買ったのか聞いてみた。
「私服や下着類と執事服やメイド服を人数分購入いたしました」
見たら私服が少ない。使い切るように言ってあったのにどうやら遠慮しているみたいだ。
「セバス、10万ジェニーはきっちり私服の購入で使い切るんだ。王都に行ったらまた渡すつもりでいるから遠慮はするな。それと仕事着は経費なのでこちら側で出すので別計算して良い」
「ですが旦那様、勇者としての活動資金が足らなくなっては一大事でございます。余裕ができるまでは極力抑えた方が賢明ではないかと判断致します」
「ああ、そうか。セバスたちを奴隷商から譲り受ける時値切ったから、手持ちがないと思っているのだね? あれは只の交渉術であって、お金を心配する必要はないよ?」
「サーベルタイガーの売上金を当てにしているのかもしれないですが、勇者様が装備する品となったら、億ぐらいのお金はあっという間に使ってしまいます。ましてパーティー全員分の装備となると何十億もいることでしょう。奴隷ごときに使っている資金はないはずです」
やはり家宰にするなら、もっとお互いに話し合う必要があるな。
「今さっき公爵様と取引を終えてきて、手持ちは10億ほどある。王都に行ったら国王に耐毒の指輪(効果大)を10億で2つ売る話も付いている。資金で困る事はないのでセバスたちがお金の心配をする必要はないよ。それにセバスに与えた剣は俺が造った物だけど、市場で買える品より遥かに優れている筈だ。防具もそのうち造るつもりなので、メンテ代も含めてそれほど装備品にお金は必要ないと思っている」
「この武器を旦那様が!? そうでございましたか……余計な心配でした。申し訳ありません」
「いや、むしろ俺たちのことを考えて行動してくれてありがたいくらいだ。でもちゃんと今後の話をまだしていないからね。家宰的な事をやってもらうつもりなので、セバスとマイヤーにはある程度お金のことも含めてうちの内情を教えておこうと思っている。じっくり一度話し合おう」
「「了解いたしました」」
「菜奈、良いの買ったか?」
「う~ん、この世界の生地は素材が良くないのです。特に下着はダメです……」
紐パンやかぼちゃパンツ? ドロワーズって言うのかな? 種類があまりないようだ。
「下着は俺が作ってあげるよ。生地の素材も良い物もあるんだぞ? 入った店が悪かったのかもな。俺たち異世界人が買い漁っているらしいから、良いのが残ってなかったのかもしれないね」
不意に誰かが後ろから腰に抱き着いてきた。
「リョウマ様! 似合っていますか?」
「お! チロルはメイド服着てるのか? とっても可愛いぞ」
黒を基調としたクラシックなメイド服だ。
「兄様、全然可愛くないです! チロルにはもっと可愛いのを着せなきゃダメです!」
「ん! これはダメ! 60点!」
うっ……確かに本音を言えば俺的に50点だ。
『……マスター! ナビーにお任せください! もうすぐ織機も完成形が出来上がりますので!』
うわ~何でテンションこんなに高いの? しかも『完成する』じゃなく『完成形』ってなんだよ!?
『いいけど、俺メイド服にはこだわりあるよ?』
『……勿論承知しています。アキバ系が御所望なのですよね? 勿論チロルには黒を基調としたゴスロリ調に、白フリルをアクセントに使ったミニ丈が宜しいのですよね? セシルにはプラスガーターベルト着用ですよね?』
『お主、分かっておるではないか!』
『……何故悪代官風におっしゃられるのでしょうか……イヤラシイ』
『ウグッ……ナビーに任せるよ』
「チロルのメイド服は俺が作っておくよ」
「兄様が? 裁縫とかしたことありませんよね?」
「そういうスキルを持っているんだ……」
「じゃあ、菜奈の下着も忘れずに作ってくださいね?」
「ん、私のも」
「分かった、菜奈と雅の下着も作っておくよ」
「あれは良い物です! 先生もう一着欲しいな~」
あっ……今、言っちゃまずいよ!
「兄様? もう一着とはどういうことでしょうか? まさか菜奈より先に美弥ちゃん先生に作って差し上げたとかではないですよね?」
「ん、私も貰ってない……」
ほらみろ! 面倒な二人が拗ねはじめたじゃないか。
美弥ちゃんを睨んだら、ごめんねって手を合わせてきた。仕草が可愛かったから許す!
「実は異世界の糸を使って試作してみたんだよ。カブレたりしないか被験者になってもらったんだ」
「ん? 異世界の糸?」
「蜘蛛と芋虫の糸だよ」
「兄様……虫は嫌です!」
「菜奈、シルクも芋虫なんだぞ? 蚕ぐらい知ってるよな?」
「あ! そうでした」
「先生は、蜘蛛の糸がお気に入りです。シルク同様滑らかでとても肌触りが良いです」
菜奈の奴、いつもどおりを装っているけど、ソワソワしていて、今晩の事を意識しているのがまるわかりだ。
俺も覚悟を決めたつもりなのだが、どうにも落ち着かない。
幼馴染から兄妹に、兄妹から恋人になろうとしているのだから当然なのかもしれないが……。
そうこうしている間に、ミーニャたち4班が合流してきた。
「未来たちはちゃんとこの世界の服に着替えたんだね? みんな可愛いよ!」
マジで皆、可愛い!
「「「ご主人様、服を買って頂きありがとうございます」」」
「ああ、どういたしまして。王都に行ったらまた10万ジェニーあげるから、可愛い服を着て俺に見せてくれ」
「兄様、エッチな目で見てはいけません!」
「ん、龍馬は少しエッチ」
「龍馬先輩似合っていますか? 変じゃないですか?」
「うん、沙織もとっても可愛いよ」
それ以降は、穂香や美紀や友美の順に同じように答えていく……。
見かねたセバスが助け舟を出してくれた。
「旦那様、家具の購入はどういたしましょう?」
「セバスの執務室に必要な物は全て買っておくといい。追加で1億渡しておくので、セバスに任せる」
「旦那様の執務室の分もわたくしが買い揃えて宜しいのですね?」
「いや、俺の分はまだ必要ない。セバスの買い揃えた品を参考に自主作製しようかと思っている。トレント素材も沢山所持しているので、それで作るつもりだ」
「トレントでございますか? 高級木材ですな……」
「言っておくが、自分の執務室だからとケチるんじゃないぞ? あくまでセバスは勇者様御一行の家宰として恥ずかしくない物を意識して買い揃えるんだ。無駄に贅沢する必要はないが、くだらないことで二流貴族に舐められたりするのは良い気がしない。それなりに恥ずかしくない物を買い揃えるように」
「承知いたしました。勇者様クランの家宰という大事な職務に、本当にわたくしで宜しいのでしょうか?」
「俺はセバスのことを気に入っている。セバスはその歳でそれだけの体を維持できているんだ。自らを厳しく律することができる人じゃなきゃ、その体型を維持できていないだろう。まぁそれだけが理由じゃないけど、俺たちがいない間の留守を、マイヤーと二人で上手く守ってくれるだろうと期待している」
「お任せください。老体に鞭打ってでも期待にお答えいたします」
「わたくしとて、そこまで言ってくださって期待に応えない訳にはまいりませぬ。残り少ない命ではございますが、夫婦共々精一杯お仕え致します」
この二人、マジ良い買い物をした! こういうのは雰囲気やその時の気分も大事だ!
【魔法創造】
1、【従属契約】
2、・奴隷紋の契約や解除が行える
・【魅了】や【チャーム】などの従属系精神魔法の解除ができる
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
「セバス、マイヤー、お前たちを奴隷解放する。俺の信頼に答えてくれ」
【従属契約】魔法を発動し、セバスとマイヤーの首の周りに刺青のように巻き付いている鎖を解除する。
「あなたの首の奴隷紋がなくなっています!」
「マイヤー! お前の鎖も消えている! 旦那様は、従属魔法が使えるのですか!?」
「ああ、これで貴族が訪問してきたとしても、奴隷のくせにとか言って舐められたり侮られたりはしないだろう」
本来従属魔法は神の認めた者にしか与えられないユニーク魔法なのだが、俺には関係ないようだ。
余程嬉しかったのか、人目を気にすることもなく夫婦で抱き合って泣いている。俺に一生仕えると言ってくれたが、奴隷として仕えるのと、従者として仕えるのでは意味合いが違うのだろう。
「みっともないところをお見せしました。ですが旦那様、奴隷解放された私が、この大金を持って逃げるとお考えにならないのですか?」
「セバス、兄様はそれほど甘い人ではないですよ。ちゃんとお考えがあってのことです。逃げる気があるのなら逃げても構いませんが、必ず後悔するでしょう……」
「菜奈様、逃げるなどとんでもございません。奴隷の立場ではできなかった案件も解放されたことによって可能になります。夫婦共々できうる限りのサポートを致す所存でございます」
他の奴隷たちが、羨ましそうに解放された二人を見ている。悪いが理由もなくそう簡単に解放してあげられない。セバスとマイヤーは、自分で言っていたように、貴族の接客をしないといけない。奴隷だとできないことも多々あるのだ。なので、勿体ぶって演出しながら解放した。
ナビーに腹黒いとか言われたが、頭の切れるセバスもマイヤーも俺の意図は理解している筈だ。奴隷たちの前で敢えて大仰に解放したのだ。将来は自分たちもという期待があるのとないのでは必ず態度が変わってくる。
「そうだ、美弥ちゃん先生。桜たち変態料理部が、この世界の料理が食べたいと言ってきたので、今晩の夕飯は外食にすることにしました。さっき虎の販売契約に行った時に公爵様にお願いして、この商都で一番の高級店を貸し切りにしてもらったので、今晩は全員でそこで食べましょう」
「あ、先生もこの世界の料理は興味あります」
「ん、あんまり美味しくなかった……」
「あれ? 雅ちゃんは何時この世界の料理を食べたの?」
「ん……しまった……皆には内緒だった……」
雅は沙織や穂香に捕まって、白状させられていた。
「雅、あの店は基本宿屋だ。今晩食べるところは商都で一番美味しいそうだぞ」
「ん、じゃあ期待しておく」
「予約時刻はまだ2時間ほど先だから、それまでは買い物を続けててくれ。美弥ちゃん先生の方でバグナーさんたちに連絡網を回してくれるかな?」
「兄様? バグナーさんたち、宿を引き払っていますよ? 夜になると街は閉門されるのですよね? 宿泊はどうされるのですか?」
「今から馬と馬車は俺がお屋敷に置いてくる。アレクセイとバグナーさんは、ログハウスに泊まってもらうが、他の者はログハウスからお屋敷に転移魔法で帰宅することにする」
「ですが、バグナーさんやレイラさんたちに転移魔法を知られても良いのですか?」
「転移魔法自体既存魔法であるのだし、短距離転移なら問題ないよ。彼らが俺たちを利用しようとするなら今後の関係がなくなるだけだ。別にそれで困ることは特にない」
「ん、流石龍馬。利用しようとするならバッサリ」
「そういうこと。折角凄い魔法を所持しているのに、使わないで不便な思いをすることないよね」
「龍馬君、なんて名前のお店に集合させればいいの?」
「『うさうさ亭』ってところらしいよ。メイン通りに兎の看板があるからすぐ分かるだろうって言ってた」
「「「キャー! うさ亭だって! やったー!」」」
奴隷たちが騒いでいる。それほど良い店なのかな?
「旦那様、あの店は奴隷の入店は禁止の筈です」
急に奴隷たちがシュンとなった――マジで残念そうだ。
「問題ない。その為の貸し切りだ。奴隷が行くことも公爵様を通して許可を得ているので大丈夫だ」
再度歓声が上がる。
「龍馬君って、こういうの抜かりなくて信頼できるよね……」
「兄様は凄いのです!」
「ん、龍馬は凄い」
ちょっと照れくさいが、褒められると悪い気はしない。
「さぁ、残りの買い物も終わらせるよ。買い忘れても明日また買い出しに出るから大丈夫だけど、なるべく今日中に買い揃えてね」
あちこち商店を回っていろいろな物を買い漁った。
俺はアレクセイとレイラさんたちとで馬を置きに行くため、一度街を出たのだが、門を出たところで、ホーンラビットを咥えたハティがお座りして待っていた……。
ゴメン、屋敷を出た時見かけなかったのでハティのこと忘れてた……お腹空いてるのね? マジ御免?
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