1-8-3 キング討伐?コロニーのお宝?
キングの咆哮時の硬縮が3秒と長く、かなり厄介だ。
『……マスター、どうやらキングの咆哮は範囲攻撃可能で、キングからの距離が近いほど効果が高いようですね』
『さっきは至近距離で食らってしまったからな。じゃあ3秒が最大効果時間って事かな?』
『……そうですね。後マスターは硬縮と言ってますが、畏縮の方が正しいかと。畏縮して硬直しているのです』
『そっか、成程。単純に声で脅してビビらせるスキルなんだ。ヤクザの恫喝みたいなもんか』
『……あのスキル、それほど優しくはないですよ。体育館組がまともに食らうと、気の弱い人がいたら心臓発作とかで死人が出ます。しかもキングが放ったのはLv7のスキルです。マスターが奪ってLv10にして狭い空間内で放てば大惨事です』
予想以上に危険なスキルのようだ。また食らう前に耐性用の防御スキルを創っておくとしよう。
【魔法創造】
1、【威圧耐性】
2、・威圧系のスキル耐性を得る
・レベルによって効果が高まる
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
【魔法創造】
1、【精神汚染耐性】
2、・精神系攻撃の耐性を得る
・レベルによって効果が高まる
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
『……威圧もどちらかと言うと精神攻撃の部類に入ります。被っちゃってますがまぁ、いいでしょう』
どうやら精神耐性スキルだけで十分だったようだ。ポイントを振って【威圧耐性】【精神汚染耐性】をLv10にしておく。
「俺も前線に復帰します! 美咲先輩、足止めどうもでした! 残りのプリーストは無視して2人でキングに挑みましょう。雅たちは他の上位種を抑えてくれ」
「ん! 了解!」
「「分かりました!」」
キングに再接近し美咲先輩と攻撃を仕掛けようとしたら、奴が一瞬ニヤッと笑ったような気がした。俺の周りにソルジャー2頭、ナイト3頭が近寄ったタイミングでまた咆哮を放ってきたのだ。どうやら、クイーンを殺した俺をどうあっても殺したいようだ。俺が後退している間に主力の火力に指示を出していたようで、一斉に俺めがけて襲ってきた。
至近距離で咆哮を食らったのだが、俺は耐性効果で何も感じなかった。美咲先輩はまた硬直してしまったけどね。
襲ってきたナイトとソルジャーを撃破していく。もうやつらにシールドを張れる回復職はプリースト1頭しかいないのだ。そいつもキング専用になっているので、他の上位種も雅たちでサクサク狩っている。
キングは俺に威圧スキルが効かなかったことに動揺したのか動きが鈍った。その隙を硬直の解けた美咲先輩が接近しシールド破壊する。俺はその一瞬にキングの首を薙いで刎ねた。
「「「ヤッタ! おめでとう!」」」
「兄様! おめでとうございます! やりましたね!」
「ん! 龍馬オメ! 美咲先輩GJ!」
皆と雅のMMO的な略式チャットぽい祝いの言葉をもらったが、浮かれたこういう時に怪我をしやすい。
「皆ありがとう! でも、まだ上位種は残っている。こういう気が緩んだ時にしなくていい怪我をしやすいのでまだ気を抜くんじゃない! 一頭残ってるプリーストから倒すぞ!」
「「「おおー!」」」
掛け声とともに皆が再度奮起する。
プリーストを速攻で倒し、ジェネラルとナイトを全て狩り終えた辺りで再度新たな指示を出す。
「今からフィリア・菜奈・雅の3人は【魔糸】と【魔枷】でオークを生け捕りにするように!【魔枷】を嵌めたらその辺に転がしておけばいい」
「「了解!」」
「ん? 捕らえてどうするの?」
「昨日コロニーから救出した組の娘たちはまだ【身体強化】が目標レベルに達してないし、有用な人のLvを上げたりスキルを獲得させて戦力アップさせようかなと思ってね」
「ん、うちは全員Lv20超えたからね」
「あの、龍馬君。雅ちゃんの動きやスキルが、武器修理の後ぐらいから急に増えて良くなったような気がするのだけど、私の気のせいかな?」
おや? 周りの状況が広く見えるようになってきた桜がちょっと訝しげな眼で俺に質問してきた。
「周りの状況もちゃんと見れるようになってきてるね。桜には後でちゃんと説明するよ」
「ええ、それなら良いわ。私だけ仲間外れは嫌よ?」
洞窟から外に出てきていたオークは全て捕らえた。30頭ほど捕らえたのだが、もう少し欲しいかな。
洞窟の中にはまだ70頭以上残っているのだが、中から出てこなくなった。
「龍馬君、もう出てこなくなったね。まだ中にいるのでしょ? どうするの?」
「中からこっちの気配を窺ってるけど、上位種を全て狩っちゃったから指揮系統がもうないんだろうね」
奴らは一旦戦闘を始めたらバカなので、プギャプギャ言って全滅するまで襲いかかってくるけど、逃げろと指示があったら蜘蛛の子を散らしたように一斉に逃げ出すんだよな。今回はおそらく中で待機というキングからの指示があったのだろう。こいつらはバカだけど、上位種からの指示には忠実に従うのだ。
「一度洞窟の外で死んで山積みになっているオークやゴブリンを回収しておこうか。戦闘時足元の邪魔になるし、血の匂いでむせかえりそうだ」
狩った全ての死骸を俺のインベントリに収めた。俺一人で全て受け持ったのには理由がある。
『ナビー、丸投げで悪いが、血抜きと魔石の抜き取り、廃棄処分まで全部頼めるか?』
『……ええ、問題ありません。キングとクイーンのお肉は熟成させますか?』
『ああ、頼む。今晩料理部でちょっとしたお祝いでもしようかと考えている』
『……う~ん』
『どうした? 何か問題でもあるのか?』
『……いえ、キングとクイーンのお肉は国から賞金が懸かっています。勿論狩った者の自由にしていいのですが、国が賞金を懸けてそれを公表しているということは狩ったら国王に献上しろと暗黙的に言っているようなものです』
『あ~そういうことか。結構面倒だな……』
『……どうされますか?』
『桜や茜たち料理部の面々がそれで納得するかな?』
『……桜はともかく茜や雅はしないでしょうね。では10kgずつだけ売りに出すと言うのでどうでしょう?』
『そうだな。この世界に来たばかりで知らなかったと惚ける手もあるんだけどね』
『……成程。その手は有効ですね。「知らなかったので食べちゃった」で問題なさそうです』
『まぁ別口で10kgずつ念のために残しておいてくれ。国王とかとの謁見の時に手土産になるし、取っておいても損はないだろう』
「洞窟内に70頭ぐらい残ってるようだけど、ここからの戦闘はあまり良いものじゃない」
「どういうこと?」
「中にいる半数は子供と雌なんだよ。オークは人を襲うし、女を孕ませようとするから間違いなく敵なんだけど、あいつらもこの世界に認められ、ちゃんと子を成し、家族を大事にし、このようなコロニーを形成して生活を営んでいるんだ。メスと子供が殆どということは、オークも弱い者を庇うだけの矜持を持ち合わせているってことだ。今からの狩りは俺たちの方が侵略者だと自覚すると思うから、気分の良いものじゃないと予想できるんだよ」
「龍馬よ、そういうのは平和ボケした日本人的思考じゃ。危険故、一切の同情など起こすでないぞ。種が違うということは、それだけで相容れない場合も出てくるのじゃ。オークと人は相容れぬ。見つけ次第メスだろうが子供だろうが躊躇わずに殺すのじゃ」
フィリアからお小言を頂き、最終決戦に挑む。
俺的にフィリアを心配しての言葉だったのにな……却って気を使わせちゃったみたいだ。
「じゃあ、今度こそ最終戦だ。俺・フィリア・菜奈・雅で【魔糸】による拘束担当。美咲先輩・桜・綾・穂香・薫の物理担当は魔法職の護衛と襲ってくるヤツの各個撃破。魔法職の美弥ちゃん・美加・沙織・優・未来ちゃんは自己の判断で魔法でも武器ででも良いので、物理組のサポートをしつつ狩り漏れの討伐をよろしく」
「「「了解!」」」
洞窟内に生活魔法の【ライト】を20個放って、皆で一斉に中に奇襲をかける。
予想どおり中ではメスが子供を庇い、その周りでオスがメスと子供を守ろうと必死で抵抗してきた。こっちが悪者にしか感じないが、フィリアはこういう展開を予想して先にお小言をくれたのだ。
「皆、気負わず倒すのじゃ! 同情して生かして逃がすと誰かが代わりに襲われるかもしれぬ。迷ってはダメじゃぞ! キングの子でも混じっておれば、高確率で上位種になって災いをもたらすからのぅ」
フィリアの方を見ると、言ってることは正しくて正論なのだが、その顔は悲しそうだ。フィリアからすれば、本来オークも女神の立場から見れば人と同じく平等に愛すべき存在だったのだ。それなのにフィリアは我を捨て日本人的思考の甘い俺たちが気負わないように激励してくれている。
中のオークは殺害ではなく捕縛だったので、思ったより時間が掛かったが、やっと全てケリが付いた。
「皆、お疲れ様! これでオークの主だったコロニーは全て壊滅できた。美弥ちゃんはうちの拠点の留守番組に無事終えたと報告お願いします」
「そうね、みんな心配してるだろうから、すぐ茜ちゃんに連絡入れるわね」
「俺はお宝の回収をするので、ここは臭いし皆は外で待機しててくれるか?」
「「「宝物庫私も見たい!」」」
そうですよね~。全員見についてくるそうです。宝物庫やら宝箱は、こういう世界でしかなかなか見れないしね。ナビーが真っ先に行けと言った場所に向かったのだが、そこはナビーの主目的の鉱石が置かれた部屋だった。
木箱に大量に山積みにされているのが、鉄の鉱石。次に多いのが鉄から取り出した鋼のインゴット30kg。大きめの豪華な装飾がされた木の宝箱に入っていたのはミスリルのインゴット15kg。銀で装飾された高級そうな宝箱に入っていたのがオリハルコンのインゴット10kg。布で包まれて木箱に入っていた希少金属のブラックメタル鉱10kg。最近この世界では、一番希少な筈のブラックメタルが雑に扱われている。理由はブラックメタルを錬金加工できる者が世界にあまりいないかららしい。
誰も加工できないのなら、いくら稀少で優秀な金属でも、需要と供給が合っていないので不当な価格設定になってしまう。現在ブラックメタルは、ミスリルより安いのだそうだ。俺的にはラッキーって感じだ。
次に向かったのが宝物庫。
そこにあった30cmほどの銀の装飾をされた宝箱から宝石の原石が沢山出てきた。
「龍馬君! これって宝石だよね? 何の原石か分かる?」
「ん? ゲッ! ウソだろ……この5カラットぐらいあるやつ、ピンクダイヤモンドの原石だよ。削って磨いて加工しても4カラットは残るね。こっちのでっかいのもルビーみたいだ。エメラルドにサファイヤ、この20カラット級のもダイヤモンドだって」
「「「キャー! 凄い!」」」
加工済みの宝石やアクセサリーも沢山あった。乙女たちは宝石に群がって恍惚した笑みを浮かべてキャッキャッとやっている。やっぱり光物好きなんだね……二人を除いては。
二人とは勿論、雅と美咲先輩です。
彼女たちは宝石より武器が気になるようです。
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