1-8-2 クイーン討伐?キング激昂?
いよいよキングに襲撃を掛ける時がきた。もう少しレベルを上げておきたかったが、食料にも魔獣にも余裕がない。美咲先輩には俺の秘密をばらして、さっきいくつかスキルをコピーしてあげた。
【剣王】Lv8もLv10にし、【筋力強化】【気配察知】【魔力感知】【魔力操作】【忍足】【隠密】【魔糸】【魔枷】などもコピーしてLv10の状態にしてある。魔法系もコピーしてあげようと思ったのだが、あまりそういう知識がないので、いきなり沢山与えられても混乱するから必要ないと断られた。
「各種パッシブを先に張って、俺の転移魔法で洞窟前の広場に飛ぶね。転移後即、俺と菜奈とフィリアはさっきマーキングを入れたプリーストと魔術師に3発ずつ【ウィンダラカッター】を放ってほしい。【多重詠唱】の連弾を3巡放ったら俺と雅と美咲先輩で突っ込むので一旦魔法は中止だ」
「龍馬よ、もっとMPがある限り魔法の連弾を放って数を減らした方が良いのではないか?」
「フィリアの意見も一理あるけど、3巡放って生きてるってことは、おそらくシールドを張って対処されてるってことなんだよ。魔法が効かない相手に無駄打ちしてると圧倒的に数が多い向こうが有利になってしまう。一旦MP回復も兼ねて様子を見た方が良いと思う。弱い雑魚はMP温存のことも考えて、剣などの物理攻撃で倒す方が良いしね」
「成程のぅ、了解じゃ」
MP回復剤を飲んでもゲームのように即時回復する訳ではないのだ。飲んでから100%の効力が得られるまでに数分の時間が掛かる。なので完全にMPが枯渇する前に回復剤を飲んで事前にMP補充する必要がある。見極めを誤るとMP枯渇で戦闘不能に陥ってしまうので、余裕を持った立ち回りをしないといけない。
「では、行くよ!」
俺のテレポで広場に飛び、速攻で敵の回復職に魔法の連弾を放つ。連弾を3巡放った時点でマップ確認を行う。
「クソッ! クイーンとプリーストが3頭倒せなかった! おそらくクイーンは【無詠唱】持ちだ、シールドの展開も早いので、皆、注意してくれ!」
「「「了解!」」」
連弾魔法を3巡も放って敵のヒーラーを全て倒せなかったのは痛い。
俺が50発×3の150発、菜奈とフィリアが10発×3の30発ずつ、合計210発の魔法を放ったにも拘らず仕留め損なったのだ。
こうなると、シールドも切り裂ける美咲先輩の刀に期待してしまう。
「じゃあ、雅、美咲先輩、突っ込むよ! 美咲先輩はその刀で、回復職のシールド破壊を優先でお願いします!」
「ええ、頑張ります」
「ん、私も頑張る」
洞窟内部からワラワラとオークやゴブリンが絶え間なく出てくる。とても内部にまで踏み込めそうにない。
この洞窟は鍾乳洞と俗に言われるもので、内部はかなり広大だ。オークだけでも300頭ほどが生息していて、ゴブリンやコボルドも合わせると700頭以上の大集落になっている。普段は数キロごとに拠点を構え食料確保の為に分散しているようだが、今回かなりの数がここに集まっている。周囲のコロニーの生き残りなども最終決戦の為に集めたのだろう。オーク側も集結して俺たちを攻める予定だったのだ。何せ洞窟内には冷凍保存された学生たちの遺体が1000体以上あるのだ。どんなに数を集めてもオークには暫く食料の心配がない。
「ん! 龍馬きりがない! このままだと押し切られる!」
「よし、任せろ!」
15分ほど、物理攻撃でオークと切り合っていたが、雅の動きが鈍ってきた。入り口付近のゴブリンが集まってるエリアに向かって上級範囲魔法の【ファイアガウォール】を5発放った。多少オークが売り物にならなくなっても仕方がない。入り口付近の洞窟内部に放ったものだから、当然入り口で足止めされてオークどもは一旦出てこなくなる。
いつも使わない火魔法の威力は絶大で上級魔法の余波の熱だけで周囲の雑魚どもも死に絶えていく。何せ洞窟の入り口付近は、呼吸をしたら熱で肺が焼けただれて死に至るほどの高温になっているのだ。
オークの足が止まったこの間に全員がMP回復剤を呷る。
『……マスター、今の範囲魔法でマスターのレベルが30に達しました。フィリアも2ndジョブの取得が可能状態です。一度ステ振りした方が良いでしょう』
『分かった』
「次、誰かのレベルが上がったら、一回ステータス整理を行うために白黒世界に行くから、驚かないように備えてくれ!」
「「「了解!」」」
程無くして穂香のレベルが上がり、30分間のステ振りタイムだ。
「皆、お疲れ。予想以上に大変だね」
「ん、数が多い」
「龍馬君、今、どのくらい倒しているの?」
美咲先輩も流石にきついのか、現況を聞いてきた。
「まだ数で言えば1/3程度です。しかも出てきているのは弱い順みたいで、上位種は洞窟の奥の方にいるようです。まだまだこれからって感じですね」
「まだ1/3なんだ……数の差って結構厄介ね」
「美咲先輩は余裕そうだけど雅は大丈夫か?」
「ん、まだ大丈夫。でもさっきみたいに一気に出てこようとされたら捌き切れない」
特に雅は美咲先輩と違って体ができあがっていない。【身体強化】でスタミナも上がってるとはいえ、雅はまだ中1の女の子なのだ。幼少のころから剣道の練習で体を鍛えてきた美咲先輩と比べたら、体力や持久力に歴然とした差があるのはしょうがない。
「その時はまた、火魔法を放って足止めするよ」
「ん、なら問題ない」
すぐ近くにいた雅を抱っこしてクンクンする。
ああ~癒される。
「あなたたち、なにまったりしてるのよ! 信じらんない!」
「この後の立ち回りだが、雅の補助に穂香と薫ちゃんが付いてやってくれるか?」
「雅と組むのですね?」
「じゃあ、私は2人の盾になれば良いのかな?」
「そそ、穂香が盾で足止めしたところを雅と薫ちゃんでスイッチしながら狩ってくれればいい。フィリアはそのまま雅たちに付いてあげて。それとA班は全員種族レベル20に達したからジョブ習得してね」
「了解じゃ」
経験者への説明は楽しい気分になる……余計な説明もしなくていいしね。
俺は3rdジョブの獲得ができるようになったので、シーフ(盗賊)の上級職のアサシン(暗殺者)を選んだ。
闇属性への適性の高いアサシンのジョブ獲得で敏捷が大幅に上がり、目で追うのも苦労するほどの速度を手に入れた。相手の瞬きのタイミングで動けば、相手からは消えたように見えるだろう。【忍足】や【隠密】等、既にカンストしているスキルのパッシブ効果も更に上がるようで幽鬼のごとく立ち回れそうだ。
あと【剣王】→【剣鬼】Lv10にした。これで美咲先輩と同等レベルだ。実戦ですぐに同等レベルで使える訳ではないが、神のくれた勇者補正でかなりの剣の腕になっている。なんか幼少のころから必死で腕を磨いてきた美咲先輩に少し申し訳なさもあったが命が掛かっているんだ、心の中でごめんなさいしつつ今振れる最高レベルにした。
「ここを出たら、桜・綾・薫・穂香・雅の順に俺の所に来てもらえるか。一度武器を修理しておこうと思う。美咲先輩の刀は修理は要らないでしょうから、俺が皆の修理の為に後方に下がっているその間の抑え込みをお願いします」
「分かりました」
俺は雅にだけ皆に内緒で個別で指示を出した。
雅の1stジョブはシーフ(盗賊)だが、俺と同じアサシンに変更してもらう。そして2ndジョブに魔法剣士を選ばせた。雅的には剣士を取ろうと思っていたらしいのだが、俺の【スキルコピー】と【カスタマイズ】のことを教えたらすんなり受け入れてくれた。
そう、俺は雅に秘密を少し明かしたのだ。桜でも未来ちゃんでもなく雅にだ。
近いうちに桜や穂香や沙織にもちゃんと言うつもりだけど、雅ならもし心変わりで俺のPTを去ってもまぁいいかと思えたからだ。
嫁になってくれると言ってくれる娘たちも【スキルコピー】で強化してあげたい気はあるが、街に着いた後に心変わりされそうで躊躇ってしまう。コピーできる人数に制限があるのだ。フィリアと美咲先輩を手伝うと決めたのだから、邪神討伐についてきてくれる娘に限定して与えないといけない。
「そろそろ時間だけど、皆ジョブとスキルの獲得は良いかい?」
「「「はーい」」」
現実世界に戻り、皆の武器を修理していく。
雅の番になったら【コネクション】で雅のステータスに繋げ【カスタマイズ】と【スキルコピー】でいじる。
【俊足】【筋力強化】【魔力感知】【気配察知】【魔力操作】【魔糸】【魔枷】をコピーし【忍足】【隠密】【双剣術】など、Lv10に達してないスキルを全てMAX状態にしてあげる。そして【剣聖】Lv10→【剣王】Lv10にしてあげた。
元から強かった雅もこれで完全に人間辞めちゃったレベルの仲間入りだ。
雅は俺のこの特殊な能力に驚き説明を求めてきたが、後で教えてあげると言うと満足そうな笑みを浮かべて戦闘に復帰した。
オークの残数が2/3を切った辺りで奥の上位種陣が動いた。
「キングのパーティーが出てくるぞ! 30頭ほどの上位種のみの部隊だ! おそらく決戦のつもりだ! 皆、MP回復剤を呷って備えてくれ!」
俺は美咲先輩と事前に打ち合わせてた作戦を実行する。
洞窟を出たすぐの所に、俺はさっきマーキングしてきていたのだ。
クイーンぽい、なんとなく色気のある豚がそのマーキングを通り過ぎた辺りで美咲先輩と手を繋ぎ転移でそこに飛ぶ。美咲先輩の刀は、フィリアが女神の頃に与えた結界まで切断できるチートな神刀なのだ。
キングはクイーンを守るべく前に出過ぎていた。
転移で魔法職のいる後衛の場所にいきなり飛び、【音波遮断】で後衛陣の周囲だけ音を消し、美咲先輩の刀でシールドを一刀で断ち切る。即座に俺はクイーンに止めを刺した。
美咲先輩には【殺害強奪】のスキルのことも話して、できるだけ止めを譲ってくれるようお願いしてある。
美咲先輩と連携し、プリーストを追加で2頭切った時点でキングが異変に気付く。
後ろを振り返ってクイーンの首が切断されて血飛沫を上げているのを見たキングは俺たちに向かって咆哮を上げた。その直後、俺と美咲先輩は3秒ほどの硬直に陥った。
クイーンの止めを刺した俺は、この硬直中にキングやジェネラルからこれでもかというくらい滅多切りにされる。ダメージ吸収1万もあるシールドが破壊されそうになったが、フィリアが冷静にリバフしてくれたので事なきを得て美咲先輩と転移で離脱する。
キングが放ったスキルでの硬縮中は、【オートリバフ】や【無詠唱】での自己魔法も発動できないようだ。
「フィリアありがとう! 危なかった、もうちょっとでシールドが解けてた」
「どういたしましてじゃ。一番厄介なクイーンは倒したが、まだ気を抜くでないぞ」
「龍馬君、さっきのは何だろ?」
「美咲先輩とさっき一緒に動けなくなったのはおそらく威圧系のスキルです。3秒も動けなかったのでかなり気を付ける必要があります。あれはちょっとヤバいですね」
3秒の硬縮は長すぎる……俺は【威圧耐性】の常時発動系のパッシブスキルを創ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます