1-6-6 教員棟の奴ら?格技場の奴ら?

 勢いで桜に結婚してくれと言ってしまったが、後悔することはまずないだろう。桜はそれぐらい良い女なのだ。


 中等部の頃より成績は5位から下に落ちたことはないそうだ。スポーツも万能で何をやらせてもそつなくこなす、文武両道万能超人だ。


 俺もどちらかというと何事も無難にできる方だが、茜に言わせれば桜は天才なのだそうだ。寮であまり勉強をしているとこを見たことがないそうで、誰からも天才と認められているらしい。


 高等部の料理部を辞めてからは、運動部からの勧誘も激しいのだそうだが、料理研究会を立ち上げるために、後輩の進学を心待ちに全て断っていたようだ。




「桜、君も16歳なのでフィリア同様結婚できる年齢なのだけど、君はどうしたい?」

「街に着いたらすぐにでも結婚したいかな、私もハーレムとか本当は凄く嫌だけど、じゃあ諦めるかって言われたら、それはもっと嫌なの。私だけを選んでとか言ったら、あなたフィリアや菜奈ちゃんを選びそうだし、これは惚れた者の弱みね」


「ハーレムなのは本当に申し訳ないと思う。日本でなら法律上仕方なく誰かを選ぶだろうけど、重婚が認められている世界で、女の子たちが俺のことを諦めたくないと言ってくれるなら一人も辛い思いや悲しませたくはないんだよね。それに俺に告白してくれた娘たちを振って、数年後に違う男といるのを見かけた時、勿体ないとか惜しいとか絶対相手の男に嫉妬して後悔すると思う。皆それぐらい良い女の子ばかりなんだよ。俺からすれば高嶺の花と言っていい。絶対後悔したくないから、皆と結婚して皆を幸せにする方を選択したんだ」


「確かにそうね。料理部にいる娘たち、私から見ても贔屓目なしで良い子なんだよね。はぁ~仕方ないわね。私もあなたのハーレムに入ります。フィリアたちも良いかな? 私も仲間に入れてもらえる?」


「桜なら妾はむしろ歓迎じゃ。菜奈や雅は危ない思想があるからのぅ。妾と沙織だけじゃちと抑えるのに不安があったからのぅ」


「あの! 私はダメなのでしょうか?」

「おお、すまぬ。穂香も勿論歓迎じゃ」


 穂香もなんか嬉しそうだ。沙織ちゃんと親友だそうだが、いいのだろうか。



「じゃあ、桜は街に着いて落ち着いたらすぐ結婚、フィリアは勇者案件が片付いてから、他の子たちは成人になってから順次ということでいいのかな?」


「妾も街に着いて落ち着いたら桜と一緒に式を挙げたいのぅ。第一夫人を桜に持っていかれるのはちと嫌じゃ」


「嫁の順位付けとかはしないからね。王族や貴族じゃないから大丈夫だとは思うけど、世間的に正室側室なんかがあって、紹介時にどうしても順位づけが必要なら、正妻はフィリアにお願いするね。それ以降は同順とする。好きな女の子たちに順位付けとかしたくないし、それを俺に求められても正直困る……」


「兄様、その辺はこちらで勝手にしますのでご心配なく。格付けは必ず必要なことなので、自分たちで決めさせていただきます」


「そうね。大奥とはそういうものよね。ハーレムには必ずある女の戦場かな」


 桜たちの会話怖いです……そっちの件には係わらないようにしよう。



「じゃあ、次の案件だけど。大谷と教頭と高等部男子2年の奴がパーティーを組んで、レベル上げしまくっている。現在大谷のレベルが17、教頭が15、男子が16になっている。桜や菜奈でもレベルが14なので少し抜かれている。あいつらの目的は言わなくても分かるね?」


「仕返しじゃのぅ。大谷は美弥ちゃんに、教頭は龍馬にと言ったところか? 男子生徒は協力者かの?」


「仕返しには違いないけど、正しくは大谷は美弥ちゃん先生と桜に、男子生徒は桜メインの女子目的、教頭は俺への仕返しに菜奈と美弥ちゃん目的かな。3人ともレイプが主目的で、それをすることで恨みも晴らせると思っているようだ」


「はぁ~信じらんない! 男ってそんな奴ばっかなの!?」


「プライバシーのない集団生活っていうのは、男にとっては結構きついんだよ。だから日本の被災地でも必ずと言っていいほど性犯罪は起きている。海外なんかもっと酷いよね? 暴徒化して集団で商店や女を襲うからね。その辺はお国柄の違いなんだろうけど、大谷たちのレベル上げは正直困るんだよね」


「負けて私たちがレイプされるってこと?」


「俺がいる限りそれはない。問題なのは魔獣にも限りがあるってことなんだよ。あいつら3人で狩りまくられたら、全員が平原に出るために必要な経験値が足らなくなるんだ」


「それまずいじゃない! どうしたらいいかな?」


「俺に罰を与えられるのを恐れて、ず~っとサイレントモードで常に誰かの後ろで俺の死角に隠れようと無駄な努力をしている美弥ちゃん先生はどう思う?」


「違うのよ! 先生隠れているんじゃないの! お仕置きが怖いとかじゃないのよ? ね? ネ?」

「お仕置きの件は今はいいですから、ちゃんと話し合いに参加してください」


「今はいいって……後で何かするの? 先生痛いのは嫌よ? すぐ泣いちゃうよ?」


「こうなるのを予想できたので、俺は傍観して教員棟内で決めさせようとしてたのに、勝手に行動したのは先生たちでしょ? 当事者なんだからちゃんと話に参加してください! 性欲云々の話も、中等部の子にはそれほどきつい性衝動はないのです。先生の為に言ってあげているのにちゃんと聞いてましたか? 25歳以上の出産経験のない、特に処女な女性はこっちの世界では神からペナルティーを受けるんですよ? 早く子を産んで人口増加に協力しろって意味合いだそうですが、俺は知りませんからね?」


 ちょっと強く言い過ぎたのか、ちょっと涙目だ。

 頭もよく観察眼もあるし、優しくて人望もあるのにどこか抜けている感がする。そこがまぁ可愛いところでもあるのだけど、ナビーが美弥ちゃんを名指しで警告するのだから、性衝動は酷いんだと思う。


「先生ちょっと龍馬君に聞きたいんだけどいいかな?」

「なんです?」


「どうしてフィリアちゃんが言ったことを否定して、レイプが目的って言いきれるのかな? 先生もただ単に恨みを晴らすためにレベルを上げているだけだと思うんだけどな~?」


 流石にナビーに教えてもらったとは言えないよな。勿論世界の監視システムのことも言えない。どこにいても俺に情報が筒抜けとか、女の子からすればいつ見られてるか分からないというのは苦痛でしかない。


 半分嘘だけど、あいつらの会話内容は真実を伝えよう。


『ナビー、会話を後ろから隠し撮りで記録した風に編集してもらえるか?』

『……ピンポイントでその会話部分だけを抜き取りますね?』


『ああ、それで頼む』



「実はあいつらが3人で棟を出た時、俺は後をすぐつけたんだよ。その時の会話が、皆に聞かせるのをちょっと躊躇うほど酷い内容だったのだけど……見たい?」


「え!? あるの?」


 桜も美弥ちゃんも見たいらしい。性対象の当事者なので見ないという選択肢はなさそうだ。


「森の中に入ってすぐの会話なんだけど、マジ腹立つよ」


 俺はナビーが編集してくれた動画を【クリスタルプレート】に映し出して皆に見せた。


『大谷先生、城崎さんは俺にくださいよ?』

『分かってるよ、泉本君。俺は美弥を真っ先にヤレればいい。だが後で桜ちゃんも味見させてもらうからね? その時は美弥と交換だ』

『二人とも、彼の目の前で犯すのですよ? 私の片目を奪ったんですから、その行為を散々見せつけておいてから最後に両目を抉り取りでもしないと私の気が治まりません! 私も森里先生はちょっと苛めないといけないので、後でお借りしますよ。まぁ、妹から先に頂きますけどね。ウヒヒヒィ』



 森の中で3人だけだと思ってか言いたい放題だ。


「なに、ウソでしょ? こいつら本気なの? 信じらんない!」

「龍馬君、先生凄くショックです! 美弥とか恋人にでもしたかのように呼び捨てにしてます」

「兄様! こいつら殺っちゃうね! 止めても無駄ですからね!」


「「「龍馬先輩! 殺っちゃってください!」」」


 うわー、女子が切れた! 全員でヤレって言ってるよ。沙希ちゃんや未来ちゃんまで殺せとか言うとは思わなかった。こいつら3人もう駄目だな。


「くれぐれも言っておくけど、こっちから仕掛けたら駄目だよ! 犯罪履歴ついちゃうから! 殺意を持って襲ってきたら殺してもいいけど、レイプ自体はチョッキン刑だからね! 向こうに殺意がなかったら殺しちゃダメだよ」


「龍馬よ、大丈夫じゃ。襲ってきた時点で殺して問題ない。殺意があろうがなかろうがおなごが身を守るのに殺したとて罪にはならぬのじゃ。その辺は女側の裁量に委ねられておるが、殺しても問題はない」


「「「なら殺すべし!」」」


「教頭は菜奈が殺すね!」

「私は大谷がいい!」

「先生が大谷先生を殺るので、桜さんは泉本君とやらにしてください!」


「だって大谷マジキモいし、流石にもう許せないのよ!」


「お前ら簡単に殺すとか言うな! 美弥ちゃん先生もどうしたんだよ? 先生らしくないよ?」


「龍馬君、流石に今の会話は先生も許せないな~。女をバカにしすぎです。ください? 味見? 交換? 物扱いじゃないですか! 教頭も反省どころか妹を襲う? 見てる前でヤレ? 我慢も限界です!」


「龍馬君、私が狙われたんだから私にけじめつけさせてよね?」

「そうです兄様! こればっかりは私たちの問題です。兄様は殺人をさせたくないのでしょうけど、この世界で冒険者として生きるなら早かれ遅かれ通る試練だと思います! あの3人なら殺したとしても後悔なんかしません!」


「分かったよ、お前たちの好きにしろ。でもレベル差はどうするんだよ、3レベルって結構大きいぞ。それにおそらくあいつらの目標レベルは20になってセカンドジョブを取ることだ。どうする気だ?」


「今のレベルのままでも問題ないのぅ。仮に奴らが40になって襲ってきたとしても、今のレベルのままで妾1人で十分じゃ」


「それはシールドがあるからだろ?」

「そうじゃ、其方の【マジックシールド】はそれほど優秀じゃ。桜たちまでレベルを20にしていたら魔獣が足らなくなるのではないか? 妾たちはこのままで相手をして、魔獣は皆の【身体強化】用に残すべきじゃの」


「はぁ、仕方がない。明日から全員のレベル上げをする。目標は全員が【身体強化】をレベル10にすること。これだけで大抵の魔獣や盗賊に対応できるようになるはずだ。このスキルだけで移動も楽にできるだろう。あの3人の進行ルートにそって事前に俺がマーキングしておいたオークのコロニーは全て先に狩っていく。あいつらには取りこぼし程度しか回してやらない。うちのレベル上げが完遂したら、体育館組も手伝ってやるつもりだ。それが終えたらうちのA班でキングを倒しに行く。暫く襲ってきてないが、放っておくわけにもいかないからね。コロニーの財宝は今後の資金の為にうちで頂くよ」


「龍馬君、コロニーに捕らわれている娘たちはどうするの?」

「俺の予想だけど、俺が突撃する頃には20名切ってると思う。すでに50名ほどしか生きていないんだ……見殺しにするのは気の毒だけど。今助けても弱り切った体を回復させる時間と、あてがう魔獣が足らないから助ける訳にもいかない。20名切った時点で救出に向かおうと思う。それが受け入れられる最大人数だ。それ以上は足手まといになって、俺たちの仲間から死人が出るかもしれない」


「ん! 仲間から死人が出るくらいなら、最初から全員見捨てればいい!」


「雅は皆が言い辛いことをズバッと言うね。俺の意見も概ねそうなんだけど、それでも助けたいと思ってる娘が数人いるんだよね」


「ん、仲間が死んででも、他者を助けたいの?」

「そうじゃないよ。仲間も死なせたくないし、見捨てたくもないってことなんだよ。雅もフィリアも桜も欲しいって言ってる俺と同じで欲張りなだけだよ。でも現実可能な数は最大でも20人が限界だと思う。それ以上は魔獣が足らなくなって本当に俺たちの足を引っ張る足枷にしかならない。それはパーティー自体が危険になるので絶対してはいけないんだ。だから20名になる前に死んでしまう娘には可哀想だけど見捨てる」


「ん、分かった。龍馬に任せる」

「明日俺たちのレベル上げが終えたら、体育館組のレベル上げを手伝うって案でいいか?」


「龍馬君、格技場の男子も置いて行くの?」

「桜はどうしたい?」


「置き去りは可哀想かな……」

「ん、ちょっと可哀想」


「体育館組は【身体強化】Lv5を目標にしようと考えている。草原は俺たちA班が間引いて進むから、付いてこられるだけの体力があればいいからね。全員がLv5になったその時点で俺がマーキングしておいた拠点が残っていたなら、格技場の野郎とA班と合同で全部狩りつくそうと思う。ある程度あいつらも強くなってたら、用心棒として殿に使ってやろうかとも考えている。女子に振り向いてもらう為に頑張ると思うからね」


「確かに殿も危険な場所じゃな。そこに奴らを使ってやるのは良い案じゃ。おなごを守るために必死で戦ってくれるじゃろう」




 概ね了承を得た。一部の者から教員棟と男子寮組をどうするのかと聞かれたが、そこまでは面倒見切れない。

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