1-6-4 龍馬協定?龍馬のハーレム観念?

 俺の今から言うことは、日本の女性に対して考えればかなり失礼で、自己中的な話だ。フィリアがダメだと言った時点でこの構想も終了なのだが……まずはフィリアだな。


「フィリア、雰囲気もなにもなくて申し訳ないんだけど、俺と結婚してほしい」


「「「キャー! プロポーズよ!」」」

「兄様!」

「ん! フィリアに出し抜かれた!」

「龍馬先輩……グスン」


「ふむ、本当に唐突で雰囲気も何もあったものじゃないのぅ」


「ごめん。でも他の懸案もあるし、新たな案件も発生している。早期に考えて行動する必要があるんだ」


「ふむ、じゃが妾の身は幼いままじゃ。其方はこのような幼き体で良いのか? 桜のようなボインボインが好きなのじゃなかったか?」


「結婚と言ったけど、今すぐって話じゃないんだ。この周辺の魔獣にも限りがある。俺たちだけで独占したら他の者は必然的に草原に出られる戦力に至れなくなる。だから、俺たちは【身体強化】を全員がLv10に達した時点で草原に進出しようと思う。俺と菜奈とフィリアがいれば何とかなると思うからね。俺たちは草原の魔獣を間引きながら先行し、後続組の安全確保をしようと思う。街に着いたら拠点を確保し、皆の安全と生活の基盤ができたら俺はフィリアと美咲先輩とで本来の目的を遂げようと考えている。結婚はフィリアの望みが叶った後でいい。だから正確には婚約って形になる」


「龍馬よ、あれほど警戒して話しすら振ってこなかった勇者召喚の目的を、其方のほうから協力してくれると言うのか?」


「うん。別に協力するから結婚しろとか言うつもりはないからね。事が解決した後にフィリアがどうなるのかが不安だけど、それは今ここで懸念してもどうにもならないし、その時がくるまで考えないことにした」


「うん? どういうことじゃ? 妾に何か起こるのかのぅ?」


「分からない。フィリアのステータスは、今、種族の欄に[人族?]って後ろにクエスチョンマークが付いてるんだよ。ひょっとしたらまだ完全に人間って訳じゃなくて女神様なのかもしれない。もしそうなら、事が解決したあと、元いた神域に女神として強制的に帰される可能性だってあるんだ」


「龍馬はそこまで大きな懸念があるのに、妾と婚約したいのかのぅ?」


「うん。疲弊して死を望んでボロボロだったあの時に、俺はフィリアに救われたんだ。ほぼ一日レベルアップ部屋でフィリアを抱き締めいろいろ話したけど、あの時に多分フィリアのことが好きになった。女神に恋してもどうしようもないと思っていたけど、こうやって下界に人として降りてきたなら、俺はフィリアがほしい、結婚したい。フィリアの為に何かしてあげたいし、力を貸せるのならむしろ嬉しいくらいだ」


「ふむ、強制送還まで思ってもいなかったが、ないとも言えんのか。その可能性を踏まえてでも妾を想ってくれておるのじゃな?」


「うん。その時が来るまででもいい。1月なのか1年なのか、10年なのか、寿命までいられるか分からない不安はあるけど、迎えが来るその時まででもいいから俺と一緒にいてほしい」


 フィリアは俺から一切目を逸らさず、少し考えた後こう言った。


「ふむ、妾のこと、よろしく頼むのじゃ。妾も其方のことは大好きじゃ!」


「「「キャー! フィリアがOKした!」」」

「兄様! うぇ~ん」

「ん! このロリコン!」

「龍馬先輩……私、返事聞く前に失恋しちゃった」


「ありがとうフィリア! あの……OKしてくれたところあれなんだけど、フィリアが許可してくれるなら、お願いがあるんだけど……」


「なんじゃ? 妾は今とても気分が良いので、大抵のことは許可してやるぞ?」


 こんなこと言うの狂ってるのは分かってるけど、できれば認めてほしい!


「え~と、この世界は重婚も認められているよね? フィリアがダメだって言うなら勿論フィリア一人を愛し続ける自信はあるけど、フィリア一人を選ぶと悲しむ娘が何人か出るんだよね? それはちょっと可哀想かなって……フィリアがいいって言ってくれるなら、菜奈も第二夫人に入れてあげてほしいな~って思っているんだけど……ダメかな?」


「プロポーズしたその口で、まさか第二夫人がほしいと言われるとは予想外じゃ! お主は生涯一人を愛す奴じゃと思っておったがのぅ」


「あぅ~、そうなんだけどね。昨晩ちょっと穂香といろいろあって考えが変わったっていうか……ごめん」


「兄様! やはり昨晩何かあったのですね! でも、どういう心境の変化か知りませんが、菜奈を第二夫人にしてくれるのは嬉しいです!」


「妾だけを見てほしいと言ったら、どうする気じゃ?」


「フィリア! 龍馬協定違反です!」

「ん! 協定は絶対!」

「そうです! 抜け駆けはダメです!」


「菜奈、なんだその龍馬協定とかいうやつは? 沙織ちゃんまで加入しているの?」


「この件は秘密じゃ。で、龍馬は菜奈も嫁にしたいのじゃな?」


「え~と、フィリアと奈菜が良ければ、沙織ちゃんもかな、そしてフィリアと奈菜と沙織ちゃんが良いと言うなら雅と穂香ちゃんもなんだ――」


「「「ハーレム‼」」」


 流石に皆の視線が痛い。


「うっ……確かにそうなんだけど、俺のことを諦められるって人は別にいいんだ。菜奈みたいに相手を殺してでも諦められないって人だけでいい。雅もその気がありそうだし、どうせなら纏めて幸せにしてやろうかなって」


「龍馬は、その人数相手に全員幸せにできると申すのじゃな?」

「うん。この世界でなら、ある程度の皆の希望を叶えられると思う。問題はお互いに独占欲とか焼き餅を焼いてギクシャクしないかなんだ。幸せにしてあげられる自信はあるけど、嫉妬は絶対あると思う。こればっかりは俺の努力だけでは抑えきれないかなって」


「それも踏まえて幸せにするのが、男の甲斐性なのではないのか?」


「う~、そうなんだけど、やはり女性陣の方からの協力もないときついと思う。俺は難しく考えるのは止めて、本能的に生きようと思う。人間は色々考えるから難しいんだ。だからハーレムを形成している動物を見習うことにする」


「妾たちを動物扱いするのか? 其方昨晩何があったのじゃ? いきなりぶっ飛んだ思考になったものよのぅ」


「動物扱いするんじゃないよ! まぁ、聞いてほしい。生物の根源には絶対と言っていい、本能みたいなものが遺伝子レベルで備わっているよね? 人間の三大欲求の食べるとか、寝るとか、種の継続とか。女の幸せって本能レベルだけで考えれば、優秀な雄の優秀な遺伝子を継続するってことになると思う。ライオンのハーレムや像とか猿のハーレムで言えば、強い雄が外部の敵から守り、安心して育児が出来る環境をつくるのが良い雄の条件で、雌にとっては幸せな環境なんだと思う。あくまで動物の本能に近いレベルまで掘り下げた例えとして聞いてね」


「ふむ、あながち間違いではないな。人間も同じじゃの、子供を作り安全で快適な家庭を夫が築いてくれれば嫁は幸せじゃの。夫婦喧嘩が絶えない家庭は7割がた金銭的余裕のない家庭が多い。雄の甲斐性のなさが原因じゃの。他にも、姑問題や浮気や子育ての価値観の違いなどいろいろ理由はあるが、雄がしっかりしてれば大抵は起こらん問題じゃ」


「いや、全て男のせいにされてもきついけど、獣から学ぶなら雄次第って思うんだ。だから俺は外部から守れるだけの力と、養えるだけの資金をまずは確保することに勤しむよ。勿論その間に寂しい思いなんかさせない。子供が出来れば、動物のハーレムのように皆でワイワイ協力し合って育てるのも楽しいのじゃないかな?」


「妾はちゃんと皆を幸せにできるのであれば、容認してやるぞ。元慈愛の女神ゆえな、クククッ」


「フィリア、ありがとう! 菜奈、俺はあっちの世界でお前を彼女や嫁にする気はなかった。この学園に来たのも本当はお前を避けてのことだったんだ。お前が中2の時に俺が風呂に入ってるとこに突撃してきたことがあっただろ?」


「はい。兄様は10日間家出をして、隣の実家に帰っちゃいました……」


「あの時初めて菜奈のことを妹としてではなく、女として見ちゃったんだ。ちょっと膨らんできた胸に中3の俺は欲情してしまったんだ。お前とは兄妹でいたかった俺は、わざわざ全寮制のこの学園を選んで家を出たんだ」


「はい。理由は知っていました。だから編入試験を受けてまで追っかけてきたのです。大好きな兄様を逃がして堪るものですか」


「あはは、異常としか言えないけど……菜奈のことを好きなのは変わらないし、もうこの際菜奈の望みを叶えてやることにしたんだ。16歳になったら結婚してあげるから、決して自分以外を排除しようとしたりしちゃダメだぞ?」


「兄様は奈菜を誤解しています! そこまで狂っていませんよ? でも嬉しいです♪」


「それから沙織ちゃん。こんなハーレムでも良かったら、16歳になったら結婚してほしい」


「はい! 私も嬉しいです! 独占欲は強い方ですが、先輩以外とは考えられませんので、この際妥協します!」


「雅、正直いまのお前では性的に全く欲情はできない。お前さっきロリコンとか言ってたけど、俺にロリ属性はない。でも、雅の内面的精神年齢は菜奈や沙織ちゃんより上だと思っている。16歳までに何年かあるし、婚約者ってことでいいよな?」


「ん、問題ない! 16歳になるまでに桜みたいにバインバインの体になる!」




「兄様、それで昨晩何があったのですか?」


「あ~うん。穂香ちゃんが昨晩ピッタリ排卵日だったんだよね。お互い狭いテントで匂いで欲情してしまってね」


「兄様! しちゃったのですか!?」


「本番行為はしてないよ。でも我慢できなくなってお互い慰め合った」


「先輩、私を庇わなくていいですよ。実は命を助けらたうえにスンゴイおっかない魔獣を瞬殺する先輩をみていて、なんとなく運命的出会いとかを意識し始めてるうちに恋心を拗らせちゃいました。その夜にもうどうしようもないくらいムラムラしてしまって、私の方から泣いて請うたのです。最初は沙織に告白されているし返事もしていない状態だからって断られていたんですけど、泣いて乞うているうちに、私の匂いで先輩も毒されたようで……本番はしないという条件で私を鎮めてくれたのです。ごめんね沙織」


「いや、穂香ちゃんだからだよ。匂いで毒されたわけじゃない。あの過酷な条件で一人で必死で生き足掻いて、魔獣にも臆さず立ち向かえる君に俺も絆されたんだよ」


「不潔です! 知り合ったその日にエッチなんて!」


 桜のその言い方にちょっとカチンときた。


「好き合っている男女がエッチして何が不潔なんだよ? 俺からすれば会ったこともない奴と結婚するとか、そっちの方が歪で気持ち悪いけどな! 正直嫌悪するわ!」


「なっ! やはりあなた誤解してるわ! 結婚するなんて私は言ってないじゃない!」


「親が決めた婚約も仕方ないとか言ってただろ!? あ~いや……そのことはどうでもいいよ。桜の考えを別に否定はしない、家の事情もあるだろうし人それぞれだ。けど俺たちのことを不潔とかは暴言だよ。俺も穂香もお互いに好きだからエッチなこともしたし、婚約もした。そのことでちょっと懸案ができたので、皆と相談してほしいことがあるんだ」


「待ってよ! どうでもよくないわ! 私も誤解されたままは嫌よ!」

「何がだよ……桜の恋愛観念とか女子会の時にでもすればいいじゃないか」


「あなたのことが好きだから、あなたに誤解されたままじゃ嫌なの!」


「えっ!?」

「あっ!」


「「「キャー! 桜先輩キター!」」」

「嘘! 桜、あなたもなの!」


「違うの、茜!」

「違うの?」


「違わないけど! あ~! もう!」


「あの~桜さん? 俺のこと好きって本当なの?」



 恋愛感情を向けないように避けていたのだが、こんな美少女に好きって言われたら、どうしても意識が向くではないか!

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