閑話770・『獣の意味2』

星の光が何処までも高く優しい。


空に輝く真珠が血塗れの世界をさらに彩る。


これは元からこうだった、駆け付けた時にはこうだったのだ。


赤色の世界は最初からこうだった、闇に黒に沈む世界を強引に浮かびあがらせる月や星が悪い。


―――人のせいでは無く自然のせいにするとは感心。


「残り者」


残り物では無く残り物。


人間を食う俺の言い回しは正解でしかない。


「死体だけか、しけては無い、十分」


死んでまだ間もない。


死因は何だったのか、原因へ何だったのか。


これだけの人数が死んでる、調べようと思うのが人の性。


しかしケモノはそのような事は考えない、世界一のミステリーだろうが目の前の死肉に興味を持つ。


「肉だ肉だ」


成り上がるわけでも無く成り下がるわけでも無い。


中庸のまま、生き物としての自分として振る舞うのだ。


「ずるずると」


馬車から死体を引きずり出す。


馬はどうだろう、このような入り組んだ森の中に逃がしても人の手が無ければ足を傷めてしまう。


なので馬も食う事にしよう―――容赦なし、くふふ。


「馬は生きてて」


人は死んでる。


運ぶべき主人は死んでるのに不思議。


「逃がすか」


気紛れだ。


肉が沢山あるので馬まで食う必要は無いだけ。


森を抜けた所に草原があった、あそこで良いだろう。


「ここよりはマシか」


優しさでは無い。


生き物は気紛れだ、ケモノは気紛れだ。


ケモノは自分の行動に矛盾を感じない。


――容赦ありかァ。

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