閑話719・『隙あり、好きなし2』

ファルシオンを振り回す理由は不機嫌だからだ。


暴力的な衝動に体が突き動かされているようだ、それを躱す。


キョウ怖いねェ。


「ええい、当たれ」


「当たると真っ二つなるじゃん」


「上下と左右、どっちがいいよ」


「首とその下かなァ」


「了解」


「しないでいいよ」


「するぜ」


広い草原で向かい合う、徒手空拳で軽々と全ての追撃を受け流す。


すり抜けるようにして斬撃を躱す、その度にキョウが舌打ちをする。


くふふ。


「ぜーはーぜーはー」


「ふふん」


「………もうやんね」


「あらら」


「当たら無いとつまらん」


「当たると死ぬしねェ」


「死なないって」


「私を何だと思ってるのかなァ」


「俺だと思ってるぜ」


「そ、そう」


「うん」


「まあ、その通りだしね」


「どうした?」


「べつにぃ」


少し嬉しい。


わかっていても言葉にされるとニヤける。


「隙ありっ」


「無いよ」


無かったね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る