閑話575・『えに対するえ2』

にゃあにゃあ鳴けば餌が寄って来ると学習したキョウ。


耳から入り込んだ空気の振動は脳味噌を蹂躙しつつ引き寄せる。


なのに鳴こうとしない。


「今日は鳴かないぜ」


『どうしたのォ?』


「……素の状態で鳴くのは恥ずかしい」


『今更ァ?ぷふふ』


「……お腹減った」


『鳴きなァ』


「やだ」


恥辱、そのようなものを忘れないのは―――良い事なのかな。


でも促す。


『鳴けェ』


「やだってんだろ、恥ずかしい、猫じゃないぜ」


『でもエルフを捕まえるの楽だよ』


「楽でも恥ずかしいだろ」


『今更ァ』


「うるせぇ………」


『くふふ』


「……しかしお腹が減った」


『鳴けばいいのに』


鳴けばエルフがこの深い森の中からやって来る、沢山やって来る。


ふふ。


「うぅ」


『鳴け鳴けー、可愛く鳴けー』


「絶対にやだぜ」


『にゃあにゃあ言えー』


「言わないぜ」


『言ってエルフの死体を操れー』


「え」


『え』


え?

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