日曜日探偵
イトサ
探偵とわたし
プロローグ:全てはここから
今日は寒い。天気予報では今日の気温は最低でも15度となっていたけれど
それ以上に冷え込んでいる気がした。
きっと気温のせいだけじゃないなぁ。そう思うのには理由があった。
2つ、思いあたる。
1つはこんな寒い日に、コートを着ていなかったこと。
それは天気予報が原因だった。今日の朝七時に見ていた、朝のニュースで人気の番組。いつもは違う方を見ていたのだが、今日はいつもより早く出なくてはいけなくて急いでいたので、そっちを見ていたのだ。
その時に、朝は暖かく、夕方も気温は変わらないと、細いタイプの眼鏡をかけインテリな雰囲気を出している長身の男が自信たっぷりに、こちらに向けて喋り続ける。
「怪しいな」そんなことを思いながらも、一応気象予報士だったので、まぁいいかと諦め、コートを持っていかずに家をでることにした。
そして今に至る。
そんなことなら信用しなければよかったなぁ…
こんな事なら少しくらい我慢をして持って来れば…まあいいや。と、また諦めた。
そしてもう1つの理由。
会社を辞めたことだ。これは物理的によりも心理的にくる。
会社をやめたからには相当な覚悟があったのかと言われれば、そうでもなかった。意外とあっさりしていた。会社を辞めると決めた
理由、それこそが今の私を苦しめていた。
そして、きっとこの事が
この夜の寒さを増している原因だと私は知っていた。
……
「えーっと。村咲(むらさき)さん。でよろしかったですか?」
その、低く、落ち着きのある、いかにも大人な男性の声。
彼は顔を落とし、その手には一枚の用紙を持っていた。
それはわたしがさっき記入した用紙で、軽いアンケートが書かれていた。
趣味や住所など、ありふれた設問だ。それを一通り見て、彼がこちらに
顔をあげた。
「はい…村咲です。」弱々しい声になってしまっていた。どうやら緊張をしているらしい。
「はじめまして、新人研修担当の東野勝です、よろしくね。」
そう、この彼が原因でわたしは仕事を辞めることになる。
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