第9話 たたむ 20100321



夢をみた




小さな家族経営の工場

何人か従業員もいた



私はそのうちの一人


みんなで引っ越しの準備をしている




どうやらそこの工場は閉鎖して

もう少し小さな工場に移るらしい




私はそこの社長さんのお嬢さんと

自分の荷物を運んでいる




荷物は少なく

2回も往復すればすんだ





社長の奥さんがお嬢さんを呼んで


『○○でお話を聞いてきたけれど

 ○○さんにはもう少しアルバイトでいてもらいましょう

 

 お父さんはいつまでも人気者でいるわけにはいきません』みたいなことを話している





車に乗り込んだお嬢さんと私は話しだした




『昔お父さんは

「人を採用するときは

 タオルのはしとはしをぴしっとそろえてたたむことができることを

 目安にするんだ」と言っていて

 実際ウチで働いてくれてた人はそれができている人達ばかりだったの

 

 そのころウチの工場の経営はどんどんよくなっていった


 

 だけど工場が大きくなって余裕がでてくると

 

 お父さんは

 タオルのはしがズレていても気にしない人を

 優しさから採用するようになった



 その中の1人に

 自分の仕事の荒さや

 人の丁寧な仕事には気づかないで


 自分の処理能力の速さを誇りにするような人がいた




 こだわりを通さず


 「タオルのはしをそろえないでたたむ人」を加わえたことで


 工場の経営はおかしくなっていったんだと

 私は思ってるんだよね』





 そんな話をしているお嬢さんの顔は淡々として

 それはそれでいいと思っているようだった





 ちょうど車ででるとき

 出入り口にメーカーの営業のような人が来ていて


 「一緒にがんばりましょう」みたいなことを

 お嬢さんのお父さんと話していた



 

 何か良い新商品のアイディアが

 あるらしい




 きっとまた工場は

 うまくいくだろう




 私は通りすがりのように


 そこに長くいるつもりは

 ない様子だった




 私も『タオルのはしをそろえないでたたむ人』の


 1人だったからかも



 しれない




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