僕は何のために

清桜 いのり

プロローグ 世界の終末

男の子は言った


―僕は一体何のために戦うのだろうか―


彼は問うた


「悪をこの世から消すために?」


男の子は答えた


―違う。どんなに悪を消そうとも

また新たな悪が生まれてしまう―


さらに彼が問う


「じゃあ、家族を守るため?」


男の子は答えた


―守る家族なんて僕にはいない―


またさらに問う


「じゃあ…、何のために戦っているの?」


男の子は虚ろな目をしながら


―わからない…―


男の子はそう答えた


彼は言った


「わからないって、わからないのは私の方だよ。 人は戦うには必ず理由が伴っていないと

戦おうなんて考えない。戦闘狂でさえ、強いヤツと戦いたいという理由があって戦っているよ」


「それなのに君はどうしてそんなに強いにも関わらず戦う理由がわからないのかい?

それだけの強さがあるなら、必ず何かしらの理由が伴っているはずだよ?」


―……―


男の子は何も言わない


「まあ、いいよ。ゆっくりと時間をかけて

見つけるがいいさ。

私は何も急いで答えを出せとは言っていないよ」


彼は優しい口調でそう言った


「ただ…。理由がないと戦うことはおろか

生きることも辛いと思うよ」


「だからゆっくりお探し

僕が目覚めるその日まで…」


彼が目の前からすうっと消えていく


男の子が手を伸ばし


―待って…お願い…―


そんな言葉は彼の姿とともに虚しく消えた


―1人に…しないで…―


暗く誰もいない世界に場所に残された男の子

やがて、ゆっくりと目を閉じ

それとともに








世界は滅びた

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