第14話 ラブブック~♥14

「カキカキ。」


谷子はバイトにやってきた。

渋谷のスクランブル交差点のツタヤで働いている。


「渋谷子ちゃん、なにをしているの?」


気さくな店長(まだ名前もない)が尋ねる。


「ポップを作っています。」


谷子は昨日、

捨てられる本をもらったので、

もらって帰って、家で読んだ。


その本のポップを書いている。


谷子がポップを書くのは、

初めてだった。


「私はバイトが初めてです。

 ドキドキして緊張しまくってます。


 この本も、

 そんな私と同じ感じです。


 「これを書いた人もがんばっている!

  私もがんばらなくっちゃ!」


 と勇気をくれる本です。


 何か新しいことに、

 チャレンジしようとしている人に、

 読んでもらえたら、

 きっと、この本も幸せです。」


谷子の初めて書いたポップは、

とても長かった。


「店長!

 この本、売ってもいいですか?」


「ええ!?」


店長は谷子の急な提案に驚く。


この本の販売実績はゼロ冊だった。

どうせ売れないと思った店長は、

谷子の一生懸命な姿勢に負けた。


「いいよ。」


谷子は本にポップを

セロテープで貼った。


サササっと、

1番目立つ所に、

本とポップを置いてきた。


「ありがとうございます。」


「売れなくてもガッカリしないでよ?」


その時、

一人のカワイイ女の子が、

本を持ってレジにやって来た。


「い、い、いらっしゃいませ!」


バイト2日目の谷子は、

まだまだぎこちなかった。


お客様のカワイイ女の子が言う。


「あ、あの私、この春から高校に通うんです。

 新しい環境に馴染めるかなとか、

 友達ができるかなとか、

 不安なんですけど、がんばります!」


カワイイ女の子が持ってきた本は、

谷子が初めてポップを書いた本だった。

本にはポップもついている。


谷子の顔は満面の笑顔になる。


「ありがとうございます!」


うれしさのあまり、

バイトの緊張を忘れて、

詰まらずに、

「ありがとうございます。」

と初めて言えた。


「店長、売れました!」


「ええ!?」


予想外の展開に、

困ったのは店長だった。


「ギャアアア!」


店長は錯乱した。



こうして、

本が大好き少女、

谷子の奇跡が始まった。


将来、

谷子の書くポップは、


「神ポップ」


と呼ばれ、

ベストセラーを何冊も生み出すのだった。




「かわいい怪獣ちゃん~♪」


怪獣ちゃんこと谷子は、

人生で初めてのポップを、

一生懸命書いている。


主こと、エロメス様は、

谷子の瞳に住んでいる。

その様子を萌えながら眺めていた。


初めて出会ったのが、

天井裏の部屋でベットで寝ている、

「前髪長すぎ」「毛むくじゃら」

だったことから、

谷子のことを「怪獣ちゃん」と呼んでいる。


谷子が寝返りをうった時に、

前髪がめくれ、

エロメス様は、

谷子の素顔を見てしまったのだ。


「かわいい~♪」


誰も知らない谷子の素顔はかわいかった。

カワイイ女の子が大好きなエロメス様は、

幸せだった。


「怪獣ちゃんが、

 かわいいって知っているのは、

 私だけね~♪」


エロメス様が興奮して悶えている間に、

谷子はポップを書き終えた。


「私はバイトが初めてです。

ドキドキして緊張しまくってます。


 この本も、

 そんな私と同じ感じです。


 「これを書いた人もがんばっている!

  私もがんばらなくっちゃ!」


 と勇気をくれる本です。


 何か新しいことに、

 チャレンジしようとしている人に、

 読んでもらえたら、

 きっと、この本も幸せです。」


このポップを読んだエロメス様は、

感銘を受けた。


「こんなかわいい女の子が、

 今の時代にもいたなんて・・・、

 まさに絶滅危惧種!」


エロメス様は感動した。

そしてこのポップのついた本は、

売れないといけないと決心した。


エロメス様は、

呪文を唱え魔法をかける。


「このポップを一番最初に見た、

 「カワイイ女の子」はこの本を買う!

 エロ・エロ・エロメス~♪」


ポップが光る。

ポップから、カワイイ女の子限定の、

ピンクの萌え萌えフェロモンが出ている。


男や不細工な女は、

このポップのついた本に、

触れることはできなくなった。


「よかったね、怪獣ちゃん~♪」


谷子が初めてポップを書いた本は、

カワイイ女の子に買ってもらえたのだった。


「かわいい怪獣ちゃん~♪」


満面の笑顔の谷子を見て、

エロメス様は幸せな時間を過ごしました。


谷子の奇跡の陰に、

エロメス様がいたのです。


あなたがカワイイ女の子なら、

瞳に魔法使いが住んでいるかもしれませんよ。



つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る