ラブブック~♥

渋谷かな

第1話 ラブブック~♥ 1

これは普通の女の子が「ほんのおねえさん」になるお話です。



「行ってきます。」


制服姿の女の子がマンションの一室から出てくる。

中に出かける挨拶をして、玄関の扉を閉める。

今から学校に向かう。


名前は、渋井谷子。


彼女の外観は、

「貧乳」「Aカップ」「メガネ」「ソバカス」「前髪長すぎ」「パット3枚」。


彼女の性格は、

「地味」「自信が無い」「暗い」「存在感が無い」「人畜無害」

「なぜ生きているのか、わからない系」。


彼女は、イマドキの普通の女の子である。

少し大人しく人見知りなだけである。




渋井谷子。


彼女は、渋谷生まれ、渋谷育ち。

今日から、女子高生になる。

彼女はお父さんとお母さんに挨拶をした。



彼女の父、渋井谷男。


谷男は、渋谷郵便局で、

はがき・ゆうパックの配達のアルバイトをしている。

(月給10万円。)



彼女の母、渋井谷代。


谷代は、渋谷区役所で、

窓口案内のアルバイトをしている。

(月給10万円。)



天下の渋谷であっても、

正社員の仕事は無い。

渋谷家はなんとか、

生活を維持しているのだった。


谷男と谷代が若い頃に渋谷にやって来たが、

正社員になることはできず、

引っ越すお金がもったいないので、

ずっと住み続けている。




渋井谷子。


渋谷に住んでいる。


といっても、

お金持ちではない。


両親は良い仕事が無く、

アルバイトで、

なんとか毎日をを暮らしている。


マンションは築50年である。


マンションには、

ワンルームがたくさんある。


部屋の見取りは、

6畳と台所、ユニットバスがあるだけである。


壁は薄く、声は隣に筒抜け、

隣の住人が動いたら、

渋井家の住んでいる部屋も揺れるのだ。


そのうちの1部屋を、

渋井家は借りている。

(家賃5万円。)


家族3人で暮らすには、

かなり狭いのである。




渋井谷子。

今年16歳になる高校1年生。


渋井家の3人は、

渋谷の築50年のボロボロのマンションに住んでいた。


6畳と台所、

風呂とトイレが一体化しているユニットバスだけがあるワンルームだ。


狭いので渋井家には、ルールがあった。


「女性陣が、お風呂に入る時は、

 父親はお風呂と逆の方向を向いておく。」


というものである。


中3の谷子は、

汗を書いたので、シャワーを浴びていた。


ユニットバスから出て、

バスタオルで体を拭いている。


「ガパ。」


玄関の扉が開いた。

父の谷男が仕事から帰ってきたのだ。


父と娘は1瞬時間が止まる。


「ギャア!」


こうして渋井家は、

もう1部屋を借りることになったのだった。



つづく。

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