第17話 スーパーRコンパニオン ~【機械少女】~

 夕方、隊長がスマホで調べて電話した事が始まりだった。


「もしもし、このスーパーRコンパニオンというのを頼みたいんが……。ああ、そうだ。……そうだな、金はある。六人くらいよこしてほしいな」


 いつの時代も、男の出張となれば楽しみ方は決まっている。


「とびっきり可愛い子で頼むよ。……場所? ここは……北のはずれに温泉街があるだろう? だいぶ寂れてはいるが……。そう、それだ。分かってくれたかよかった。遠いが、三日後くらいにはどうにかなるか? なに? 今日いける?」


 もう数日滞在するつもりではあったが、お楽しみは早いに越した事は無い。




 そして今に至る。 



 日本には『どんちゃん騒ぎ』という言葉がある。

 よくよく考えてみれば擬音なのか形容なのか、よく分からない言葉である。


 どんちゃんという少年のように騒ぐ、という意味ではないだろう。

 無論『どんくん』というお猿の男の子の事でもない。


「ギャハハハハハ、楽しいですね隊長! しかし早かったですね」

「ああそうだな、たまには悪くない! まあこの近隣に支店でもあるんだろう」


 ここはとある世界のとある温泉街。

 一攫千金のスコップを掘り当てる事に成功した二人はこの日、温泉街で贅沢三昧の一夜を過ごそうとやって来た。


 そして贅の限りを尽くし、男として楽しんでいる。


「いやだわ隊長さんたら」

「ほら隊員さんも飲んで」


 隊長と隊員を囲うのは、六人の美女。

 それぞれタイプは違うものの、男であれば誰しもが涎を垂らすであろう美女ばかりが二人を囲んでいた。


「そう硬い事を言うな。触らせろ」

「飲みます飲みますぐいーっとね」


 乱れに乱れ、破廉恥極まりないとはこの事だ。


 寂れた温泉宿には、この二人以外に客はいない。

 そもそも温泉街とは名ばかりで、とうの昔に温泉が枯れ果てており、ただのふしだらな宿に成り下がっている。

 営業している宿屋はここ一軒。

 かつては賑わっていた通りも、店など一つもありはしなかった。


 たった一軒のその宿で、たった二人の客が大いに楽しんでいるのだ。


「いやーん隊長さんったら」

「まあ素敵、隊員さん素敵だわ!」


 開けた着物を直そうともせず、豊かな胸をさらけ出した美女。

 其々に三人づつの美女が囲い、それはもう触る触らせるもみくちゃにする。


「隊長、スーパーコンパニオンって凄いっすね!」

「ただのスーパーコンパニオンじゃないぞ。Rがつくからな。スーパーRコンパニオンだ! はっはっは」



 飲めや歌えや触れや脱げや

 世間の目など気にするな

 ここはこの世の治外法権

 丸裸こそがご立派だ


 神も仏も猫も杓子も

 騒いで踊れば春が来る


 極楽浄土に興味はないが

 こんな場所なら住まうが男


 温泉枯れても女は枯れぬ

 銭が尽きても欲尽きぬ



「隊長、自分、もうここに住みたいっす」

「そうだな。スコッパーなど辞めてしまおう!」


 とっぷり夜も更け、ここから先は個別サービスを期待する二人。


「さてと、君達、三人まとめて相手しちゃうぞ!」

「そうだな。寝室へ移動しようか」


 酒に酔い、女に酔い、二人はだらしない顔で美女たちを寝室へと誘う。


「あら元気なのね。若いっていいわね隊員さん」

「いやだわあ隊長さんったら」


 そして、美女の中の一人が己の右腕をガチャリと回す。


「通話モード起動。……こちら北の温泉街、椿の間、機体番号AM-462です。お客様が夜伽を希望されています。……はい。直ぐにお相手の手配をお願い致します」


 隊長と隊員が首をかしげる。

 その目の前で、異様な角度に曲がった右腕を元に戻した美女。


「君のその手はなんだ?」

「私の手ですか? ここには通話機能とGPSが搭載されているんですよ」


 更に首を傾げる二人の前で、六人の美女がすっと立ち上がった。


「では、お二人の夜伽のお相手はこの近隣で手配しましたので。私達はこれで」

「ちょっと待て、まあそっちのサービスは別の部門だとしてもだ。こんな時間に帰るのか?」


 戸惑う隊長に、美女はにっこりと笑った。


「ええ。飛んでいけば一時間程度ですから」


 そして美女の一人が窓を開けた。

 

「天候よし。風位風速、湿度の測定を開始します。ピピピピピ。問題ないわ。行きましょう」

「ピピピピってなに? え? 行きましょうってここ三階だけど?」


 隊員の質問に答える事もなく、美女六人が次々と窓から飛び出していく。



 ――ズゴゴゴゴゴゴゴ ズバシューー


 お尻の穴か、それより少し側の秘部か、その辺りに備えられているジェットエンジンが起動。

 凄まじい轟音を轟かせながら、六機の美女が夜空へと消えていく。


「ずごごごごー ずばしゅー っていいましたね」

「なんか凄い音がしたな」


 あんぐりと口を開いてそれを見送った二人に、これといってそれ以上の会話はない。


 しばらくすると、部屋の入口から入室者が現れた。


「これはこれは、お若いお客さんじゃなあ」


 そこには、齢七十を越えていようかという、深い皺の刻まれた笑顔を見せる女性が二人。


「この街で一番若い儂らぁがお相手しますけ、どんぞ寝室へ」

「若い女は苦手ですけ? 熟女が好みでしたら言うてくだされや。上は九十二までおりますけ」


 そこで我に返ったか、隊長が二人の女性に問いかける。


「なぜ! なぜあの子らが相手をしてくらないのだ!」


 女性はいやらしい笑みで答えた。


「そりゃあお客さん、飛んだの見たでしょう? あの子ぉらはロボットですけ。お客さんの立派なマラを加え込む穴がねえんです。じぇっとえんじんになってますけ」


 スーパーロボットコンパニオン。

 この街から遥か南の大都市で流行している、新たな娯楽である。


「た、た、隊長?」

「う、うむ。逃げるか?」


 二人の年老いた女性に詰め寄られつつ、二人は窓から飛び降りてでも逃げるかどうかを悩む。


「お客さん、ここから落ちたら死んでまいますよ」

「据え膳食わぬは男の恥でしょう。さささ、参りましょうけ」


 この後二人がどうなったかについては、敢えて書かないでおこう。

 ただ一つ確かなのは、翌朝、二人は悲痛にまみれた顔で、互いに無言のままこの宿を去った事だけである。


 そして二人が去った宿屋には、感想が記された一枚の紙が残されていた。





◆以前に読んだ作品を紹介します


タイトル:機械少女

ジャンル:SF

  作者:かいしげる様

  話数:16話

 文字数:39,836文字

  評価:★72 (2017年5月21日現在)

最新評価:2017年2月18日 17:32

 URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054881495932

 検索時:ずばり『機械少女』で検索しましょう。


キャッチコピー

 ラブコメちっく近未来ミステリー



感想★★★

 大学の合宿所で管理人のアルバイト。

 それだけで何やら、色んな意味で妄想が膨らむ物語の幕開け。


 とても可愛い女の子たち(アンドロイド)に囲まれて、羨ましい限りのアルバイト生活が始まる。

 複数出てくるアンドロイドの少女たちは、どれも個性的で素敵だった。


 だが、ラブコメではない。


 ジャンルがSFで、キャッチコピーにミステリーとある。


 哲学的というか、倫理的というか、そういった種類の題材を投げかけられる事になるわけだが、それは後半の事。

 それまではたっぷり、可愛い女の子に囲まれる生活を楽しんでもらいたい。

 そして、迎える結末まで一気に走り抜けてもらいたい。


 ぜひご一読下さい!

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