埋もれちまった悲しみに

犬のニャン太

ぷろじぇくとすこっぷ

第1話 埋もれちまった悲しみに

 埋もれちまった悲しみに

 今日も新着の雪が降りかかる

 埋もれちまった悲しみに

 レビューの風さえ吹きすぎる





 埋もれる原因は数多い。作品自体のレベルが低いケースが多いと思われるが、決してそれだけではない。何か別の要因で埋もれてしまう事もある。


 そんな作品を掘り起こし、レビューし、その作品がランキングに掲載される事を何よりの生き甲斐とする奴らがいる事を、皆さんはご存じだろうか。

 彼らの存在を、一般的にはスコッパーと呼称する。


 しかしながら、カクヨム界隈にはそんなスコッパーの存在が実に乏しい。

 何故なら、サイト名がそもそも「カク書く」を前提としており、「ヨム読む」はあくまでカクの次なのだ。


 だがこれもビジネスである。

 そこに発生する将来収益を考慮すれば、カクさんは収益性を見込めるサイト利用者であるが、スケさんはちょっと強い色男でしかない。印籠を手にしているのは常にカクさんであり、スケさんは「控ええええい!」と言っているに過ぎないのだ。


 いや、そうではなく、兎にも角にもある程度仕方のない事であろう。

 いや、その角ではなく、現代語としてトニカクと表現される言葉のほうの角である。


 話を戻すと、それでも数少ないスコッパーは日夜活動している。

 特に短編が乱立しているカクヨム界隈では、短編への評価が集中しやすいのが現状。それはあくまで作者が評価するからであり、短時間で読了してレビューできるからこそ、自分の作品を手掛ける時間を奪われないからだ。


 だからと言って、中~長編を掘り起こす人間が存在しないわけではない。




 カクヨム界隈にひっそりと佇むとある施設で、今日もスコップに励む連中がいる。

 その中でも特に、中~長編を掘る連中は過酷な日々が続いていた。


「隊長……もう限界です」

「貴様! 何が限界か三十五文字以内で説明せよ!」


 振るえる指先でクリックし続け、埋もれまくっている長編の冒頭部分で脱落する。面白い、もしくは、面白くなりそうな作品であるか否かの判断は非常に困難であり、その判断を下せるところまで読み進めるだけでも、そこに使う労力は短編を掘る事に比べれば凄まじい過重である。


「このままでは、自身の作品を手掛ける時間が取れません」


 隊員のその言葉に、隊長の激が飛んだ。


「どうせロクな作品を生み出せないくせに、勘違いをするんじゃない!」

「ぎゃあ!」


 隊長の鋭い言葉に、隊員は心的ダメージを負う。

 隊長の言葉が続いた。


「カクヨムの理念は何だ。物語を愛するナンタラカンタラがウンタラカンタラだ! 物語を愛せ! ヒット作とまではいかないまでも、中堅程度にはなれる作品が無数に埋もれているのだ」


 しかし隊員とて、かつては立派なワナビとして活動してきた人物である。

 今でこそ趣味の一環であるが、かつては無謀な野望を抱いていた無数に存在するどうしようもない小説家志望の一人だった。


「ですが隊長。街コンの影響で短編は日増しにその数を伸ばし、その影響で新着レビューの風速もかなり早くなっています。この状況で中編や長編のレビューを上げたところで、短編へのレビューに流され我々のレビューが多くの人の目に留まる事は……ぎゃあ!」


 隊長から愛の鞭が飛んだ。

 わなわなと震える手で鞭を握りしめる隊長は、その両目から大粒の涙を流して言葉を並べていった。


「だったら何だ! 貴様の物語へ対する愛情はその程度か! 重くのしかかった新着に埋もれ、スコッパーの到来を今か今かと待ちわびている作品の声が聞こえないのか!」


 それでも隊員はキッと視線を隊長に向ける。

 彼の作品は既に、幾つかランキングに掲載された経験がある。

 短編では百五十以上の★を獲得し、中編では五十以上の★を獲得した実績があるのだ。


「私は、実力さえあればある程度の数は……あふんっ」


 再び鞭が飛んだ。


「貴様の中編★五十など、ただ運が良かっただけだろう! 違うか!」

「ぐ、それを言われると……」

「貴様の短編★百五十など、適当に書きなぐった作品がたまたま高評価を得ただけだろう! 違うか!」

「そ、その通りです……」


 隊長は優しく微笑んで隊員の肩に手を置いた。


「貴様と俺は★の数こそ違えど、広い意味でくくれば同士だ。所謂、底辺作家というやつだ。自惚れるな」

「グス……たいちょう、わたしは、わたしは……」

「掘ろう、掘るんだ。ケツではないぞ、小説を、物語をだ」


 こうして彼らは、今日も埋もれた作品を掘り起こしていくのである。

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