ハルヒの毎日
@adlib
第1話
「ああ、わかったよ。卵だな」
そう言って電話を切り、今日も一日社会の荒波を共に戦い抜いた戦友である二着目千円のスーツのポケットに携帯を入れた俺の背後から、聞き覚えのある声がした。
「お帰りですか?」
そこには、高校の頃から比べるとキザったらしさが確実に三割以上アップしている笑顔の、SOS団副団長こと小泉一樹がいた。ただし、服装は高校の制服ではなく、俺同様にスーツである。二着目千円かどうかは知らんが。
「ああ、そうだ」
「僕も帰りです。奇遇ですね」
その言葉を額面通りに受け取るつもりはない。お前の言う「奇遇」や「偶然」は、昔から信用ならんからな。
「これは手厳しい。ですが今日に限っては、神に誓って何の意図もありません。正真正銘、たまたま帰り道に偶然あなたを見かけただけです」
そこまで言うなら、そういうことにしといてやるよ。
「せっかくお会いしたのですから、ここは一つ週末のサラリーマン同士らしく、どこかで一杯やっていきませんか?」
お前と仕事帰りのサラリーマンごっこなんぞしても楽しくねぇよ。それに、そのキザったらしい顔を見ながら酒を飲んでも、気持ち良い酔い方は出来なさそうだ。
「残念だがついさっき、電話で卵を買って帰って来いとの指令を受けちまったところだ」
そう言うと、小泉は芝居がかったように両掌を天に向けた。
「おやおや、そのような重要な先約があるのでしたら、僕のことなど気にせず、どうぞ早くお帰り下さい」
驚いた顔が、あまりにもわざとらしい。お前、全部解ってて誘っただろ?
「是非とも涼宮さんにも宜しくお伝え下さい」
こいつの言うことをまともに相手にしていても疲れるだけなので、とっとと帰路につくことにしよう。
しかし、このまま別れるだけだと何か知らんが負けた気がするので、一矢報いてやることにする。
「じゃあお言葉に甘えてとっとと帰らせてもらうが、その前に小泉、一つお前の間違いを指摘してやるよ」
「おや、何でしょう?」
「あいつはもう「涼宮ハルヒ」じゃない」
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