〜第1章〜  夢の押し売り

第4話 ネルシャツって普通にかっこいいよね

 なぜ彼女が俺が聴いている音楽を知っているのか不思議に思っていると、



 「いつも、教室とかで音漏れしてるから。」



  音楽に夢中になりすぎて音漏れしていることなんて考えてもみなかった。



 そして自分の好きなものが、人に聴かれていたのかと思うと恥ずかしさがこみ上げてきた。



 俺はその恥ずかしさから下をむいていると、



 「私もその音楽好きなの」



 知ってるよ、いつもそこのバンドTシャツ着てたし。



 彼女はそのまま話し続ける。



 「君、いつもセンスのいい音楽ばかり聴いているよね。」

 「ゼミの初回の自己紹介でも音楽好きだって言ってたし。」



 しまった、顔見知りばかりだったから趣味で音楽とか言ってしまったけどこんなところで絡まれるとは思わなかったな。



 とりあえずここは適当に流そう。



 「いや、あのときは他に言うことがなかったからさ。音楽は別に普通くらいだよ。」



 そう言うと彼女は、食い気味に



 「そんなマニアックな音楽聴いてて、普通なわけ無いでしょ」



 「君、自分では隠してるつもりかもしれないけどロックとか好きなの意外とバレバレだよ」



 なんでそんなこと分かんだよ!やっぱりこの女エスパーだなと思っていると、



「服装とか小物とかに趣味の影響出てるよ、あとは同族のニオイがした」



いやまて、同族の匂いってなんだよ!!俺変な臭いしてるのかな。ちゃんと毎日シャワー浴びてるつもりなんだけど。




 「てかなんで君は自分の好きなものとかを表現しないの?」

 「音楽のサークルとか映画のサークルとかにも入っている感じもしないし。」



 なんでこの女質問攻めしてくんだよ!俺が答える前に質問してくるから答えられねえじゃねえか。



 「黙ってないでなんとかいいなよ。まあいいや。」



 そう言うと彼女は一枚のチケットを差し出してきた。


 「今週の金曜日、つまり明日の夜私ライブに出るの。」

 「君とは趣味が合いそうだから私のライブは絶対好きなはず。後悔はさせないから。」



 明日とかいきなりすぎだろ。俺の予定無視かよ。

 そう思い断ろうと思ったが、タイミングよく教授が入ってきてゼミが始まってしまった。



 そしてゼミが終わると



 「絶対来て」



それだけを伝え、そそくさと彼女はゼミ室から出ていった。



 「お前、あいつとなんのはなししてたの?」



 そう話しかけてきた俺の隣には、いつものダサいネルシャツにジーンズの友達が立っていた。

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