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「つまり当たり外れじゃないかと思うわけよ」

 水曜日の二限終わり。寧々と玲衣と食堂でお昼を食べていた。一番に食べ終わった私は、カツカレーの大きなお皿を押しやりながら呟く。

「素のままの喋り方とか、仕草とか、表情とかで、男受けがいいかどうかって。雑誌の特集とか恋愛啓発本みたいなのでよくあるじゃん、こういう受け答えに男は弱い、的な。そういうの見て頑張ってそれに近付こうとする人もいれば、何の努力も必要なくて素の状態がそれって人もいるし。生まれた時からアドバンテージあるっていうか」

「ああー、ちょっと、わかる。私は頑張ってる状態でも相当頑固らしいけどさ、なーんにも考えてなくたって超素直な子っているもんね」

 同意をして、うんうんと頷いて見せる。そんな寧々をちらりと見て、玲衣はふっと視線を落とした。ワカメだけが浮いた味噌汁の表面が、玲衣の思想を表すかのようにぐにゃりと揺れる。おそらくは、同意しかねるという方向で、何か言葉を探している。

 こういう時の玲衣の発言に、自分が自然と期待を抱いていると、唐突に気づく。

「でも、それってさ」

 とても控え目に、極力否定の色を帯びないように。玲衣の口から慎重に発された一言が、きちんとその努力をまとって聞こえたので、私は安心する。

「容姿だとかそういうものと同じだよね。綺麗だって言われる基準に、どれだけ近く、生まれてくるかっていうことと」

「……それもそうか」

「性格とかのところは、同性受けと異性受けっていうものがあるみたいだから、それだけちょっと違うかもしれないけど」

「なるほどね」

「なに、紗耶香、どしたの」

「あたしの持ってない可愛げというやつを、妹は持ってるんだなと思ってね」

「紗耶香ちゃん妹いるんだ。いくつ?」

「高三。塾のチューターが好きなんだって。高校生の時って大学生が妙にかっこ良く見えるけどさ、自分が大学生になってみると、あー錯覚だったんだなってなるよね」

「誰かがかっこよく見えるのなんて、大抵は錯覚じゃない?」

 えらい発言をして、寧々は残っていたオムライスを片付ける。例の同僚のことがそんな風に見えでもしたのだろうか。

「私も、そう思う」

「えー……。でも確か玲衣は、結構長いこと同じ人が好きなんじゃなかったっけ」

「そうだよ」

 女優のような所作で、玲衣が自分の口元を拭う。

「だから悲劇なんだよね」


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