便秘の一番長い日

哲学徒

第1話 カテーテルという名のイメージプレイ

 その日は、よく考えると一週間はお通じがなかった日であった。最近やたらと太ったなーと思っていたら、重度の便秘であったことは何度かあり、去年はずいぶん(5時間)苦しんだことがあったが、最終的になんとかなった。なので油断していた。

 夜12時ごろに便意を覚えトイレに行ったが、出ない。というか、苦しい。腸を内側からカリカリされている感じとぎゅうと絞りつけられる感じがあり、激痛が麻痺しない程度に断続的に襲う。この痛みは以降20時間は続くことになる。以下の出来事はすべてこの地獄の苦しみの中でのことである。

 トイレに入って6時間、尿が出なくなった。ここで生命の危機を覚え、病院が開いたらすぐ導尿(カテーテル)してもらおうと決心する。全身麻酔したときに一度やってもらったが別に痛くなかったので大丈夫だろう。

 病院を調べたり、トイレにこもったりしているうちに朝8時になったので、泌尿器科に電話を入れると、ほとんどの病院が閉まっていた。土曜日だかららしい。知らんがな。たらいまわしにされたあげく、遠くの名前も知らない病院を紹介され、ひとまずタクシー(電話で自宅付近まで読んだ)でそちらへ向かう。電車の乗り換えを調べて、そこまで歩く余裕はなさそうだった(※ここからは大分アレな描写なので好きな女キャラに置き換えて妄想してください)。

 病院について、問診等が終わったあと、椅子に座ろうとすると痛くて座れない。おそらく便秘のせいだ。少しでも楽になろうとトイレへ向かうがどっちも出ない。トイレから出ると、洗面所のところに看護師さんが立っていて驚いたが、「そんなに苦しいなら先に診てもらうようにする」とのことで、助かった。座るのがキツイので立って待つ。遅い。寒い。苦しい。ああでも、美人の看護師さんにカテーテル入れてもらえるのならそれもいいかな。ちなみに私は同性愛者なので、基本的に同性が処置するはずの医療プレイにたぎるほうである(カテーテルエロいとかは元々ゲイ作品の文脈かと)。

 一時間ほど待ってようやく名前が呼ばれる。タヌキみたいな男の先生であった。この先生に処置されるぐらいならこの苦しみが続いたほうがよい。もう膀胱がパンパンで苦しいと言っているのに、わざわざ超音波で見るらしい。なんだこいつ。ええからさっさと導尿せえや。

 ベッドに横になるのも苦しい、と言っているのに横になれと言われてしぶしぶ横になる。助手の先生は美人だなぁなどと思っていたら、急にその人に「下着下げるから腰上げてくれる?」と言われて思わずドキドキしてしまう。なんのプレイだ。

 「あー確かにパンパンだねー」

 いいからさっさと導尿しろ。このタヌキ。

 「じゃあ導尿お願い」

 タヌキは、その美人の看護師さんに言うとあとはカルテになにか書きつけていた。ああ、これでとりあえず尿の苦しみからは逃れられる。

 処置は別室で行われた。助手のその看護師さんがしてくれるらしい。

 「導尿は初めてですか?」

 こんなの初めてでもそれ以降でも、もともと異物を入れるところではないから痛いだろうとは思ったが、なぜか意地を張って「初めてではない」と言ってしまった。

 「わーじゃあ大丈夫ですね!」

 全然大丈夫ではない。元来痛みにはものすごく弱いのだ。

 「じゃあ早速。下着脱いでくれる?」

 今度は脱がしてくれなかった。下着を下すと、タオルが下半身にかけられる。意味はあるのかと思ったが、これで随分精神的に楽になったので意味はあるのだろう。

 「消毒するよ」

 鋭い痛みが走る。思わず声を上げてしまった。

 「深呼吸して、すーはーすーはー・・・吐くときに入れるから力抜いてね」

 なんでネタバレするの。余計きつい。

 「はーい、じゃあ入れます」

 待って、と言おうとしたが、いきなり入れられてしまった。

 「こらこら、ちゃんと力抜いて、深呼吸深呼吸・・・そうそう」

 導尿はベッドに寝て、膝を立てて行うのだが、看護師さんは膝頭をずっと撫でてくれた。

 「ちゃんと入ってるからね・・・えらいえらい・・・入った・・・わー、いっぱい出たね」

 すごく・・・イメージプレイでした。

 病院は、その後適当に浣腸三本を出して返された。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

便秘の一番長い日 哲学徒 @tetsugakuto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ