久しぶりに地球に帰ったらクロワッサンが神になってた。
梨の次に愛してる。
第1話
僕が宇宙船に乗り込んで火星へと旅立ったのは15の時だった。
火星でのミッションは300年にも及んだ。そして今、素晴らしい科学技術により300年前と全く変わらない身体の僕は地球へと帰還した。階段を降りるとうるさいほどの拍手とフラッシュに迎えられた。
『おかえりなさい。ひいお爺様。』
3つ程の歳の子供が僕に花束を渡した。僕は地球を立つ前に人工的に子供を作っていた。この子はその子供の子供という訳だ。
『ああ、ただいま。』
僕は曾孫を肩に乗せて歓喜に湧く人々の間を手を振って歩いた…
のが昨日のこと。
地球へ帰還してはや2日、今日から僕は普通の高校生として過ごす。これは普通の生活に早く戻りたいという僕の希望でもあったが、未成年の宇宙飛行士はできるだけ早く学業に復帰させるのがNASAの方針だった。
『今日からこのクラスに転入になりました。時風 隼人です。よろしくお願いします。』
僕が自己紹介をするとクラスメイトは少しざわめいた。みんな僕のことは知っているらしい。
『じゃあ時風は一番後ろの左の席について。早速一時間目の授業を始めるぞ。っと、その前に。』
担任教師は白い袋から茶色いものを取り出して配り始めた。
…クロワッサン?
それは僕の机にも配られた。
『じゃあみんな、召し上がりましょう。』
《いただきます。》
クラスメイト達は神妙たる面持ちでクロワッサンを食べ始めた。
『山田ァァ!!』
突然に担任教師が叫んだ。
ぷるぷると震えて怯えている山田君の周りには食べカスがぽろぽろと落ちていた。
『そんなにぼろぼろ食べ散らかしてッばッ罰当たりなことするなァァァ!!!』
担任教師は山田の机をばんばん叩いて、号泣する山田を叱りつけた。
………いやなんだこれ。
『クロワッサン様にあッ謝れぇぇぇぇ!!!!』
『ひゃいぃ、ご、ごめんなさいぃ』
クラスメイト達は目を瞑って黙々とクロワッサンを食べ続けている。
僕は訳が分からなかったけれどとりあえず食べカスを出さない様に綺麗にクロワッサンを食べた。
一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
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