八ノ罪 《鎖の少女》
八
ブラーズとルシフが宿で別れ、ブラーズが城へ向かった後、ルシフは宿を出て都市を何処へとも無く歩いていた。
「随分と変わっているけど...、賑やかなのは変わらないな...。」
人々の噂によれば、王都ヘラクレスは今の王に変わってから急激に人や物資が増えたらしい。王都内での争い事なども全く無く、悪く言えば気持ち悪いくらいに、平和だという。
大通りは改めて見ても活気づいており、人間や獣人と言った別種の存在もちらほらと見えた。
人々の喧騒を横に聞きながら都市を歩いていると、通りの路地裏から黒いローブを羽織り、フードで顔を隠した男が二人、其処から出て来るのが見えた。
何か怪しいと感じたルシフは、彼らの後を尾行した。
するとその男達の会話がうっすらと聞こえてきた。
「あれ、本当にあのまんまにしてていいのか?」
「いい。彼処は誰も通らないからね。餓死は処刑よりも苦しいものだよ。」
「ふぅん。ま、あれにはピッタリか。」
「この後も何度か様子を見に行く
。死んでたら袋に詰めて城に運ぶぞ。」
「了解っと。」
随分と物騒な話をしていた。
ルシフは会話だけ聞くと早々に其処から立ち去り、男達の出てきた路地裏に入り...
※※※※※※
「...で、其処でこいつを見つけ、ここまで運んで来た、と。そういうことか?」
「その通りだ。幸い身体に付いてた怪我は軽症だから、ブラーズに頼もうと思ってだな。」
ブラーズは思った。
((ベルを無断で連れてきた時はこいつ俺の事殴ったよな...))
...言わないけど。
寝ている少女に目をやる。
両手両足はそれぞれ一つに拘束されていて、手は後ろで拘束されている。
口元には布が巻かれていたようだがそれはルシフが既に外しているようで、丁寧に折り畳まれ、机の上に置いてある。
服...いや、服とは呼べない、奴隷が着るようなそれは薄汚れていて、身体も随分と汚れていた。
息はしているが、死んだように動かない。予断は許されないようだ。
「やれやれ...ありがとな、ルシフ。後は俺がやる。」
そう言うとブラーズは少女の寝ているベッドの傍に座り、少女の身体に両手を添えた。すると両手が光を放ち始め、その光は瞬く間に少女の全身を包み込んでいった。
聖属性の魔法の一つ、身体のあらゆる汚れを浄化する魔法である。
拘束も解かなければだが、清潔感は大事である。
ふとルシフの方を見ると、どうやら少し落ち込んでいるようだ。
「...あぁ、何でもない。ただ少し、自分が此処で何も出来ないというのが残念でな...。」
視線に気付いたルシフはブラーズから目を離した。
「いや、ここまで連れて来てくれただけで、俺としては大助かりだよ。ありがとな。」
素直な気持ちを口にする。
ルシフはそれを聞いてか、少し安心してくれたようだ。
明日は勇者選抜戦当日。
さっさと治療を終わらせ、さっさと寝よう。
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