1章 勇者選抜と冷酷な道化
一ノ罪 《森に潜む》
酷い夢だった。
とある宿の一室で目を覚ました男、ブラーズは、憂鬱な気分を晴らすかのようにベッドから上半身を起こし、天高く伸びをした。
時間はまだ深夜。月は天高く上り、部屋の中の電気は要らないからという理由で消していて、月の光のみで照らされている。
「ふぁぁ......、よし、起きるか...。」
ブラーズは眠たそうな目を擦り、ベッドから降り、部屋を出る。
そのまま宿を出ると、冷たい夜風が全身に染み渡り、目が覚めた。
ここはモンテ村。
人口十数人の小規模な村だ。
村の中心に大きな畑があり、それを囲うようにしていくつかの木造建築が並んでいて、その中の真ん中の家が宿屋である。畑は共用のもので、村長が毎晩警備をしている。
村の端には小さな森があり、私は散歩がてら、気分転換に其処へ行くことにした。
「やっぱ、森は好きだ...。」
幾ら小さいとは言え、流石森である。
中に入れば外界と隔絶され、とても心が落ち着く。
動物らしき姿がないおかげで騒音は一切せず、私は一人、深呼吸をして肺の中の酸素を新鮮なものに入れ替える。
さて、二度目になるが森の中には一切の気配が無い。
という事は、少しでも気配があれば私にも分かってしまうのだ。
「...誰だ。」
唐突に感じた背後からの気配。
振り返ると其処には、
「...助けて...。」
黒い髪の少女が、裸足で立っていた。
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