ニノ罪 《勤勉な腹の虫》

 夜の森の中、二十歳の男と見た目十五、六の少女が向き合っている。

 普通に見たらおかしな光景だ。現に、私もそう思っている。



「えっと...誰...?」


「私の名前はベル...。お願い...、私の、王都にいる私の友達を助けて...。」




 紺のワンピースを着た少女、ベルが、同じく紺色に輝く双眸をブラーズに向けている。

 その姿は幼いながらも妙な魅力を感じた。だが生憎、年下好きと言うわけではない。



「悪いが、俺は別の目的で王都に用事があるんだ。そっちに構ってる暇は、無いかもしれない。」


「貴方の目的と...関係はある、と思うわ...。」



 ベルの発言にブラーズは驚きの表情を浮かべる。


 私が王都へ向かう理由は二つある。

 一つは王都で開催される勇者選抜戦への参加だ。

 王都が不定期に行うイベントの一つであり、各地から腕に自身のある者が王都に集い、優勝した景品として、《闇組織討滅作戦》に加わる事が出来るのだ。

 そして私はこれに参加をする。しなければならない、理由があるのだ。


 そして二つ目の理由、それは人探しである。

 過去に置き去りにした友人、それと私と同じ『同類』。

 恐らくはそのどちらかに、関係があると言ったのだろう。




 しかし、何故ベルは、私が王都へ向かう理由を知っている...?


 それを聞こうと口を開いた時、人間の声でも木々のざわめきでもない、小さな雑音が響いた。



「...俺の名前はブラーズ。ベルだっけか。着いてこい。」



 聞く気が失せた。

 私は溜息を吐くとベルの横を素通りして、宿に帰る。

 ベルはブラーズが横を通ろうとすると無駄に大きく距離を離して避け、そのまま後をついて歩く。


 初対面にしても、とても離れ過ぎている距離であった...。

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