第87話 無くなり次第終了です
ユーキ達の様子を、離れた位置から呆れ顔で見ているアイバーン達。
「何だかユーキさん達……余り真剣さが足りないような気がしますね」
「ふむ……ユーキ君達の事だ、どこか楽しんでいる部分もあるのかもしれないな」
「ネムも参加したい……」
「無論私も行きたい所だが、最早ユーキ君達は我々とは次元の違う所に居る。今の我々が行っても邪魔になるだけだろう。そうなったらユーキ君達に余計な手間をかける事になる」
「しゅん……」
「離れて応援するしか、ないんですね……」
「鬼は外なの〜」
「蚊帳の外なのよ!」
ベリルが巨大な腕で猫師匠を殴りに行く。
「させるかっ‼︎」
猫師匠の前に出て拳を受け止めるカオス。
「カオス!」
「ダークネスパーム‼︎」
カオスの腕から発した闇のオーラが、ベリルの腕を侵食して行く。
「汚らわしい悪魔め! 私に触れるなっ‼︎」
左腕に付いた盾で、横からカオスを殴りつけるベリル。
「ぐっ!」
吹っ飛ばされるカオス。
その隙にベリルの耳の所に位置するパティと猫師匠。
「わあっ‼︎‼︎」
「ニャアッ‼︎‼︎」
ベリルの両サイドの耳から、風魔法に乗せて大声を出すパティと猫師匠。
「ぐおおっ‼︎ やかましい‼︎」
両耳を塞ぎながら翼で2人を叩き落とそうとするベリル。
それを何とかかわすパティと猫師匠。
ベリルが2人に気を取られている隙に、顔の前に現れるフィー。
「ここにも居たか‼︎ 薄汚い悪魔めっ‼︎」
罵倒されたフィーが、上を向きながら黙って人差し指を上に向ける。
「何だ⁉︎」
つい釣られて上を向いたベリルの下から、急上昇して来たユーキが横回転しながらベリルの顎にアッパーカットを食らわせる。
「きりもみ昇竜アッパーあああ‼︎」
「がっ‼︎」
死角から顎を突き上げられたベリルが崩れかかる。
「決まったわ‼︎」
「があああっ‼︎」
途中で踏み止まったベリルが、怒りに任せて全方位無差別に光魔法を撃ちまくる。
その内のひとつが離れて見ていたアイバーン達に襲いかかる。
「いけないっ‼︎ みんな逃げてえええ‼︎」
慌てて助けに向かったユーキだったが、一瞬早く光魔法はアイバーン達の元に達してしまう。
「みんなっ‼︎」
全滅かと思われたが、その危機を救ったのはレノとカオスの2人だった。
「レノ‼︎ カオス‼︎」
「大丈夫だマナよ‼︎ みんなは俺が守る‼︎ お前は安心して戦いに集中しろ‼︎」
「う、うん! 分かった‼︎」
ベリルの魔法を防ぎきったレノが、カオスに礼を言う。
「済まない、カオス。感謝する」
「守ったのはお前の防御魔法だろう?」
「だが、お前が魔力の補助をしてくれなかったら、俺だけではとても防ぎ切れなかった」
「お前が防御に特化しているのはかつての戦いで知っていたからな。俺はただ少し手を貸しただけだ」
「フッ! 皮肉な物だな。お前は我が愛する妹のセラを殺した憎っくき相手だと言うのに」
「生きてますよぉ」
「今はお前に対して全くわだかまりが無い。こうやって敵味方関係無く共に助け合う、これがマナが望んでいる世界なのかもしれないな」
「俺はこの世界を創った神のひとりとして、これからは全ての命を守って行くつもりだ。どうかお前も力を貸してほしい」
「ああ、勿論だ!」
カオスの肩にポンと手を置くレノ。
「だがその前に、やはりケジメは必要だよな!」
「何っ⁉︎」
そう言ってカオスに思いっきりビンタを食らわせるレノ。
「ぶふうっ‼︎ そんな気がしたああっ‼︎」
カオスが制裁を受けていた頃、依然ベリルに苦戦中のユーキ達。
「さすがに天使100人分は厄介ニャ」
「言ってみればネムが、獣魔装を100回重ねがけしたみたいなもんだものね」
「少々ダメージを与えてもすぐに回復しますしね。シャル様のようにしぶといです」
「フィー! お前はいつもひと言多いニャア‼︎」
「大っきいからな〜。ひとつやふたつのダメージではすぐ治っちゃう。かと言って力を分散させると威力が弱くて通用しないし。もっと人数が欲しいとこだけど、アイ君達では厳しいだろうし……」
「ならいい方法があるわっ‼︎」
「パティ⁉︎ 何か策があるの⁉︎」
「ユーキの遺伝子をあたしが取り込んで、大量に子供を作ればいいのよ! ユーキとあたしの子なら、あたし達に匹敵する強さになる筈よ!」
「作るかっ‼︎ もし仮に作ったとしても、そんな産まれてすぐ戦える訳無いでしょ⁉︎」
「いえ、私達魔族の能力ならば、産んですぐ大人にする事も可能だと思います。さあ!」
「さあじゃない‼︎ 戦いの為に命を生み出すなんて事はしないからね‼︎」
「ええ〜、いい案だと思ったのに〜」
「いや、ユーキの血を使うというのは良いアイディアニャ。ちょっと行って来るニャ」
「え⁉︎」
そう言い残して、アイバーン達の所に向かう猫師匠。
「ちょっとテト‼︎ どこ行くの⁉︎」
「戦力を増やしに行くニャ〜!」
「え⁉︎ どういう事?」
猫師匠と入れ替わりにカオスが戻って来る。
「猫の奴、どこ行くんだ?」
「いや〜それが、戦力を増やすとかなんとか」
「ふ〜ん、まあいい。あいつは昔から何考えてるか分からない所があったしな」
「そうです。それにシャル様が居ようが居まいが対して違いはありませんから」
「それもそうだな」
「酷い言われようだね……」
居ない間にボロクソ言われている猫師匠が、アイバーン達の元にやって来る。
「シャル様⁉︎」
「どうされたのですか?」
「お腹空いたんですかぁ? チルちゃんでもしゃぶりますかぁ?」
「しゃぶらないニャッ‼︎」
「神様の生煮えなの〜」
「生贄なのよ!」
「お前達! ユーキの力になりたいニャ?」
「そ、それは勿論力になりたいとは思いますが、今の我々の力では……」
「お前達に覚悟があるなら、戦える力を与えてやるニャ!」
「え⁉︎ 本当ですかシャル様⁉︎」
「あたしはたまにしか嘘は言わないニャ」
「たまに言うんだ……」
「私達の力がユーキ君の助けになるならば、是非‼︎」
「分かったニャ、では……ドーピングカプセルニャ〜!」
ドラ◯もんのように、カプセル状の薬らしき物を取り出す猫師匠。
「シャル様、それは⁉︎」
「このカプセルの中には、ユーキの血液を固めて粉末状にして飲みやすくした物が入ってるニャ」
「え⁉︎ ユーキさんの血⁉︎」
「な、何故そんな物が⁉︎ いや、それをどうすると言うんですか⁉︎」
「この血は以前、リーゼルでカオスにやられたユーキが大量に流した血を、こんな事もあろうかとあたしがせっせと集めて加工しといた物ニャ。そしてこのカプセルを飲めば、一時的ではあるがお前達も神に匹敵する力を得る事が出来る! 筈ニャ」
「自信無いんかいっ!」
「やった事は無いから分からないニャ。でもアニメとかだとこれで上手く行くニャ!」
「こ、根拠薄〜」
「やかましいニャ‼︎ 出来ると思えば出来るニャ! どうするニャ⁉︎ このまま何もせずに観客としてただ見ているだけか、それともユーキと共に舞台に上がるかはお前達次第ニャ!」
「僕達も表舞台に……」
「まあもっとも、一時的とはいえ神に匹敵する力を得るニャ。後でどんな副作用があるかは分からないけどニャ」
「副作用、ですか?」
「例えば、一生かつお節が食べられなくなったり、お昼寝の出来ない体質になったり、猫じゃらしに反応しなくなったり、それはもう想像するだに恐ろしい副作用ニャ!」
「え⁉︎ あ、いや……それぐらいだった別に……」
「ニャんだとおお⁉︎ こんな恐ろしい副作用が平気だと言うのかニャ⁉︎ 信じられないニャ……」
「いや、そもそもシャル様の勝手な妄想でしょう?」
アイバーン達が決断を迫られていた頃、どうしても力の劣るパティがベリルに狙われ始めていた。
「師匠が居なくなった途端、何であたしを狙って来るのよ⁉︎」
「現状、この中でパティが1番弱いと見なされたんでしょう」
「え⁉︎ でもそれってつまり、ベリルの中ではテトが1番弱いって事?」
「当然の事を言わないでくださいユーキさん!」
「ええ〜、テトって仮にもこの魔法世界を創った3大神のひとりなんだけどな〜」
そんなユーキ達の隙を突いて、再びベリルの魔法がパティに襲いかかる。
「パティ‼︎」
「しまっ‼︎」
不意を突かれたパティだったが、ベリルの魔法は何者かの魔方陣に阻まれて無事だった。
「強いからって少々油断が過ぎますよぉ? みなさん。リフレクション‼︎」
魔法はその魔方陣によりベリルに跳ね返された。
「何だとっ⁉︎」
「そ、その魔法は⁉︎ まさかあんた⁉︎」
何と、パティの危機を救ったのはセラだった。
「セ、セラ⁉︎ あんた飛べない筈じゃ⁉︎」
「んふふ〜、それが猫さんとユウちゃんのおかげで飛べるようになったんですよぉ」
「まあ、一時的だがな」
「でも、信じられないくらい力が溢れて来ます!」
「ああ! これなら例え相手が神だろうと、負ける気がしないぜええ‼︎」
「あ、あんた達まで飛んで⁉︎ 何で⁉︎」
ユーキの元に残りのBL隊全員と、元ナンバーズのパル達、ノイン達やロリエース、ラケルまでもが集結していた。
「どういう事⁉︎ それに何よりあんた達から感じる尋常じゃない魔力は⁉︎」
「ユーキ姉様の血だよ」
「え⁉︎ ユーキの血ですってえ⁉︎」
「猫さんに貰ったユウちゃんの血液入りカプセルを飲んだおかげでぇ、私達もチート能力を手に入れる事が出来たんですぅ」
「ユ、ユーキの血液入りカプセル……師匠‼︎ あたしにもそのカプセル頂戴〜‼︎」
「あっ、ダメ‼︎」
猛スピードで猫師匠の元に飛んで行くパティ。
危険を察知したユーキが慌ててパティを追いかける。
「ユーキの血液い! ユーキの遺伝子い!」
「パティは目的が違うからダメええっ‼︎」
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