第61話 神様より天使の方が美しいイメージ

 ネムとウーノが激しいバトルを繰り広げている中、未だにケンカ中のベール親子。


「パル達よりひとつしか違わないネム姉様があんなにがっつりしっかりバッチリ戦ってるのよ! パル達だって戦えるのよ!」

「シェーレでそのネムに手も足も出なかったくせに、偉そうに言うんじゃありません〜!」


「その語尾を伸ばす喋り方、むかつくの〜」

「どのツラ下げて言ってるのよ!」

「それ、私にも刺さるんですけどぉ?」


「そういう偉そうな事は、ネムと同等の強さになってから言いなさい〜!」

「つまり同等になればいいって事なの〜」

「え⁉︎」


 パルとベールが振り向いたそこには、肉体から離れたチルの霊体が宙に浮いていた。


「チ、チル⁉︎ 何やってるのよ⁉︎ 何でまたそんな状態になってるのよ⁉︎」

「チルが、また死んじゃった……私はまたチルを守れなかった……」


 霊体姿のチルを見て、愕然としているベール。


「母様が卒倒しそうになってるから早く体に戻るのよ!」

「心配無用なの〜。ネム姉様みたいになりたいって強く想ってたら自由に抜けられるようになってたの〜。いつでも出入り自由なの〜」

「物凄い特技に目覚めてるのよ! い、いやそうだとしても、それに何の意味があるのよ⁉︎」


「これであの時みたいに、またパルと合体出来るの〜」

「なっ⁉︎」

「チル、あなたそうまでして……」


 セラの支えもあり、何とか倒れずに意識を保ったベール。


「強く想えば何でも出来るって母様が教えてくれたの〜。あとは母様にうんと強い召喚獣を出してもらって更に合体すれば、ネム姉様にも匹敵する強さになるの〜。母様には留守中のチルの体を守る任を与えるの〜」


 少し考えてから心を決めるベール。


「分かりました。フフッ、2人共いつの間にか大きくなっていたんですね。ならば、私のとっておきの召喚獣を出してあげます! 見事使いこなして見せなさい!」

「おまたせなの〜」

「お任せなのよ!」

「いくわよ! 召喚‼︎ ラファエル‼︎」


 ワイバーンの背中に魔方陣が描かれると、そこから眩い光を放ちながら、複数の白い翼を持った巨大な天使が現れる。

 その神々しい姿に感嘆するパル達。


「凄くキレイなのよ。こんな凄い魔獣を召喚出来るなんて、さすがは母様なのよ」

「中々やるの〜。褒めてつかわすの〜」

「何様なのよっ‼︎」

「また天使ですかぁ? 益々私の魔装のプレミア感が薄れますねぇ」


「じゃあ行くのよ‼︎ チル‼︎」

「合点承知なの〜」

「魔装アンド獣魔装なのよ‼︎」


 チルと合体して少し成長したパルが更にラファエルと合体して、正に天使のような姿に変わる。


「ユーキ姉様! ネム姉様! 今助けるのよ!」


 背中の翼を羽ばたかせ、あっという間に飛翔して行くパル。

 残ったセラがポツリと呟く。


「優しい娘達ですねぇ」

「愛情表現が不器用ですけどね」

「似た者親子ですよぉ」


 ウーノに対して旋回しながら何度も何度も魔法を放ったり体当たりを繰り返したりするネムだったが、その全てを軽くいなされていた。


「もう〜! 全然当たんないっ! 腹立つな〜! 反撃するとか言っといてちっとも仕掛けてこないのも腹立つし!」

「フフッ」

「その余裕の笑みもムカつくうう‼︎ ファイアーエッグ‼︎」


 ネムが右手を大きく薙ぎ払うと、無数の炎の玉が空間に浮かび上がる。


「行けっ‼︎」


 ネムの号令でウーノに向かって飛んで行く炎の玉。


「今更こんな物が何になるんだい⁉︎」


 その玉を全て剣で真っ二つに斬って行くウーノ。

 すると、割れた炎の中から炎のヒナが出現してウーノの周りを取り囲む。


「何だこれ?」


 それを見たネムがニヤリと笑う。


「ヴェイパーエクスプロージョン‼︎」

「何だと⁉︎」


 ウーノの周りを浮遊していた炎のヒナが、大爆発を起こす。


「どうだっ‼︎ 全方位からの爆発。かわしきれないでしょ⁉︎」


 しかし爆炎の中から、全身に防御魔法を張ったウーノが現れる。


「残念! 作戦は良かったけど、いかんせん威力が足りなかったようだね」


 だが、ネムの攻撃を防いで一瞬油断したウーノへ、獣魔装したパルが猛スピードで突っ込んで来る。


「エンジェルクラッシュなのよおお‼︎」

「何いいっ⁉︎」


 ウーノにぶち当たった勢いのまま、ウーノごと城の屋根に激突するパル。


「やったか⁉︎」


 一撃が決まった事を確信したユーキを、冷静に否定するネム。


「姉様、そのセリフを言った時は100パーセント決まってないから」

「あ〜、そうだった。つい……」


 アニメの定番通り、パルの突撃を防御魔法で防いでいたウーノ。


「いや〜、今のは危なかったよ。ただ少しタイミングが遅かったね。あと一瞬来るのが早かったら防御が間に合わなかったのにね」

「くっ! 手強いのよ!」


 ウーノから離れて、ユーキとネムの近くに来るパル。


「パル、その姿ってまさか、またチルと合体したの?」

「そうなのよ。そして更に母様の召喚獣と合体したのよ」

「あの一度の戦闘でもう獣魔装まで使いこなせるなんて、さすがはネムの妹達だね」

「ほ、褒めたって鼻血しか出ないのよ!」


「2対1か、いいね。ならばこっちも」


 右手に持った剣に左手を添えるウーノ。

 すると剣が2本になり、左右の手に1本ずつ剣を持つ格好となる。


「二刀流⁉︎」

「相手が2人になったからね。それに対応させてもらったまでだ。しかしさっきの一撃、当たらなかったとはいえ中々の威力だったよ。君も僕の嫁候補の中に入れてあげよう」


 ウーノの言葉にドン引きのパル。


「な、何なのよあいつ⁉︎ エースってあんなに気持ち悪い奴だったのよ? 少しがっかりなのよ!」

「気を付けてパル! あいつはロリコンらしいから、パルも狙われてるよ!」

「何度も言うけど、そのロリコンってのはやめてよね! 単純に君達に興味があるだけなんだから!」


「ほ、本当なのよ! パル達もロックオンされてるのよ! あっ! でも今のパルはチルと合体して推定年齢14歳ぐらいだから、ロリコンの対象外なのよ!」

「もう分かったから‼︎」




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