第38話 腹話術、みたいな

 雄叫びをあげる召喚獣パティ。


「ユーキの敵は皆殺しよおおお‼︎」


 禍々しい召喚獣パティの姿に怯むアトラス。

 召喚獣パティの姿に、顔が引きつるリアルパティ。


「ビビってんじゃないのよ! アトラス! 行くのよ‼︎」

「グ、グオオオオ‼︎」


 己を鼓舞して召喚獣パティに向かって行くアトラス。


「やかましいのよ!」


 しかし、召喚獣パティの張り手一発で吹っ飛ばされるアトラス。


「グホオオオ‼︎」

「な、何てパワーなのよ⁉︎ これはマズイのよ。チル!」

「スタンバっておくの〜」


 形勢が不利と見たパルが、すぐさまチルと次の準備に入る。


「何とか頑張るのよ、アトラス‼︎」

「ウオオオオ‼︎」


 パルに鼓舞されたアトラスが立ち上がり、再び召喚獣パティに向かって行く。


「臭い息撒き散らすんじゃないわよ!」


 必殺の悶絶ボディブローをアトラスのみぞおちに炸裂させる召喚獣パティ。


「グフウウウ!」


 腹を抑えながらうずくまるアトラス。

 そんなアトラスの頭を踏みつけながら罵倒する召喚獣パティ。


「ハッ! その程度の実力でこのあたしに向かって来るなんて、身の程知らずもいいとこね。このダンゴムシがっ‼︎」


 その光景を見て引いているBL隊。


「うわあ、パティさん酷い」

「何もそこまで言わなくても……」

「あたしじゃ無いわよっ‼︎ こら〜‼︎ ネム〜‼︎ 全部あんたがアフレコしてるんでしょおお‼︎」


 しかし、断固としてパティと目を合わそうとしないネム。


「こらああ‼︎ 無視すんなああ‼︎」


 ネムがパティの殺気に怯えていると、踏みつけられていたアトラスが足を振り払い、ハグのように召喚獣パティに抱きついて動きを封じる。


「は、離しなさいよ! この痴漢!」

「チル‼︎ 今なのよ‼︎」

「プロメテウス召喚なの〜!」


 チルが思いっきり投げた蒼天石を中心に魔方陣が描かれ、その魔石が地面に落ちると同時にまた別の巨人が召喚される。


「もう一体巨人が⁉︎」

「あれは、プロメテウスニャ! アトラスと双璧を成す巨人ニャ!」


 召喚されたプロメテウスはそのまま召喚獣パティ目がけて走り出し、動きを止めていたアトラスもろともタックルで吹っ飛ばす。


「グゥッ‼︎」

「チャンスなのよ‼︎」


 素早く起き上がるアトラスとプロメテウス。

 少し遅れて召喚獣パティが体を起こす。


「あんた達、よくもやってくれたわね〜!」


 怒りながら召喚獣パティが立ち上がった時、既にダッシュしていたアトラスとプロメテウスが、召喚獣パティの首目がけて同時にラリアットを放つ。


「グウウ‼︎」

「クロスボンバーニャ‼︎」


 両側から挟まれるようにラリアットを食らった召喚獣パティが、恨みの言葉を発しながら消滅して行く。


「おのれえええ‼︎ 貴様等全員呪い殺してやるううう‼︎」


 パル&チルの召喚獣、残り3体。

 ネム&ロロの召喚獣、残り2体。


「ネム……絶対後で泣かす……」


 パティに泣かされる事が確定したネムが、次の魔獣を召喚すべく蒼天石を準備する。


「パティ姉様が倒されちゃったか〜。なら、最強の姉様を出すよ!」

「最強の姉様⁉︎ それってまさか⁉︎」

「あたしの事ニャ⁉︎」


「シャル様の場合は最強ではなく最悪です」

「フィー⁉︎ 誰が最悪ニャ⁉︎」

「いいえ。最悪ではなく災厄と言ったんです」

「……いやどっちも悪い意味ニャ‼︎」


 蒼天石を地面に置き、魔方陣を描くネム。


「召喚‼︎ ユーキ姉様‼︎」

「やはりユーキ君か!」

「一体どんな姿で⁉︎」


 みんなが注目する中現れたのは白い大きな翼をまとった、まさに天使を思わせるような神々しい姿をした、ノーマルサイズのユーキだった。


「う、美しい……」

「ネム‼︎ さっきまでの事許してあげるから、あたしにも一体頂戴‼︎」

「ですから、長くは保たないんですってば〜、パティさん」

「強さは反映しなくていいから! 見た目だけでいいから! 触った時にちょっと恥じらいながら反応してくれればいいからああ‼︎」

「怒るよパティ」


「いくらユーキ姉様が強いとはいえ、そんな通常サイズで巨人2体を相手にできる筈無いのよ! アトラス! プロメテウス! やっておしまいなのよ!」


「またまた分かってないな〜。いくつかの変身パターンを持ってるキャラは、小さい時の方が強いんだから」

「フ◯ーザぐらいしか思い当たらないのよ!」


 ネムとパルが討論している中、召喚獣ユーキに向かって行くアトラス。


「ユーキ姉様。お願い」

「うん。まっかせて〜!」


 グッと親指を立てた召喚獣ユーキが、アトラスの目線の高さまでフワッと浮き上がる。

 間合いに入ったアトラスが右手を大きく振りかぶり、宙に浮いている召喚獣ユーキに平手打ちを繰り出す。

 しかし召喚獣ユーキは微動だにせず、左腕でアトラスの平手をいとも簡単に止めてしまう。


「グオッ⁉︎」

「そんなバカななのよ!」


 更に召喚獣ユーキを挟み込むように左腕で張り手を繰り出すアトラス。

 しかしこちらも同じく止めてしまう召喚獣ユーキ。


「そんなサイズでとんでもないパワーなのよ。だけど、これでユーキ姉様は動けないのよ! プロメテウス! チャンスなのよ!」

「グオオオオ‼︎」


 召喚獣ユーキの背後から、アトラスの両手に挟まれている格好の召喚獣ユーキ目がけて、手刀を振り下ろすプロメテウス。


「なんの!」


 アトラスに挟まれたままの状態で、右足を振り上げプロメテウスの手刀を蹴り飛ばす召喚獣ユーキ。

 その威力で倒れ込むプロメテウス。


「何てパワーニャ⁉︎ ロロとすっとこどっこいニャ!」

「どっこいどっこいです。シャル様」


 アトラスの両腕からスッと抜け出し空高く舞い上がると、前方に回転しながらアトラスの脳天にかかと落としを炸裂させる召喚獣ユーキ。


「グホオオオオ‼︎」


 アトラスが消滅して、蒼天石が地に落ちる。


「一撃⁉︎」


 そこから後方に大きく宙返りして、倒れているプロメテウスの腹に横回転しながら、高高度からのフットスタンプを繰り出す召喚獣ユーキ。


「グフウウウ‼︎」


 アトラスに続いてプロメテウスも、蒼天石を残して消滅した。


「あっという間に2体の巨人を。凄い!」

「パティちゃんはすぐ倒されましたけどねぇ」

「だから、あたしじゃないって言ってるでしょお‼︎」


 そして、役目を終えた召喚獣ユーキも返って行く。


「ありがと、ユーキ姉様。お疲れ様です」

「うん。じゃあ僕帰るね。愛してるよ! ネム!」

「ネムもです。ユーキ姉様」


「こらああ‼︎ どさくさ紛れに勝手なアフレコしてるんじゃないわよ‼︎」



 パル&チル。

 ネム&ロロ共に、残る召喚獣はあと1体となる。








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