第26話 変態の妹もまた変態

 レノの作り出したバリアードームの中で戦うレノとリマ。


「ほらほらっ! どうしたの⁉︎ あんたも中に入ってるって事は何か作戦があっての事でしょ⁉︎ なら早く仕掛けて来なよっ!」


 リマの猛攻に、未だ防御するばかりのレノ。


「まあ、こんなに距離を詰めちゃったら当然攻撃の回転も早くなるんだ。あんたじゃとても対処出来ないよね〜⁉︎」

「ふう……本当によく喋る奴だな。俺の戦い方を知らないと言ったな? ならば何故俺が貴様のスピードに付いて行けないと決めつける?」


 槍を構えたレノが、今まで散々食らっていた玉を次々に槍で弾き返して行く。


「何だって⁉︎」


 レノに弾かれた玉はバリアーの壁に当たる度に速度を増して、ドームの中を乱反射しながら飛び回り、敵味方関係無く襲い掛かる。


「ぐっ! このおっ!」


 初めの内は何とか蹴り落としていたリマだったが、速度が早くなるにつれて徐々に食らい始める。


「くそっ‼︎ 止まれええ‼︎」


 電撃を発し、飛び交う玉を全て停止させるリマ。

 停止した玉はそのままポトンと地面に落下する。


「なるほどね。今のがこのドームの特性って訳か⁉︎」

「そうだ。このドームの中で放たれた魔法は、壁に当たる度にその威力を増して行く」


「それを一緒に中に入って食らってるんだからあんた、ドMを通り越してイかれてるね」

「そうでもないさ。貴様の魔装衣はどう見ても防御力が高いようには見えないからな。同じように食らえば、先に根を上げるのは貴様の方だと確信していた」

「へえ、意外に考えてるって事か。だけど、飛び道具がダメなら直接蹴り倒すまでだよ‼︎」


 玉を撃ち出す事をやめ、レノに直接蹴りを繰り出すリマ。

 再びガードを固めて防御に徹するレノ。


「直接攻撃だと、あんたを倒すまで時間がかかりそうだったからレールガンを使ったけど、別に時間を気にしなければこうやって簡単に倒せるんだよ!」

「……レベル7とはいえ、やはりまだ子供だな。圧倒的に戦闘経験が足りない」

「負け惜しみかい⁉︎ みっともないね!」


「愚かな……俺は貴様のレールガンとやらを弾き返せるのに、あえてこの狭いドームに閉じ込めた事を変だとは思わないのか⁉︎」

「えっ⁉︎」


 レノの体が発光し始め、体から漏れ出たいくつもの電撃がレノの体の表面を走る。


「ま、まさか⁉︎」

「充電完了だ! タケミカヅチ‼︎」


 次の瞬間、レノに蓄積されていた電流が一気に放出され、ドーム内で大爆発を起こす。

 その威力にドームは壊れ、レノとリマは吹き飛ばされてしまう。

 少し経ち爆風が収まった頃、数メートル先に飛ばされたリマがボロボロの体を起こして、同じく吹き飛ばされて倒れているレノを見る。


「そ、そうか。ぼ、僕の蹴りをあえて食らう事で僕の電気エネルギーも一緒に貯めていった訳か……そして、ドームに閉じ込めておいて蓄えた電力を一気に放出した。だ、だけど、いくら防御力に自信があるからって……じ、自分も一緒に爆発に巻き込まれるなんて……やっぱりあんた、狂ってるよ……」


 そのまま意識を失うリマ。

 そんなリマの言葉を、仰向けに倒れたまま聞いていたレノ。


「ふう、何とかナンバーズの1人を倒せたか。これでマナやセラにも顔向けができるな。まあ、相手が経験の浅い子供だから助かったというのもあるが。しかし、俺の売りは防御力だとセラに言われたが……毎回こんな戦い方をしていたら、さすがに身が持たないな。かわいい妹セラちゃ〜ん! お前の愛する兄が重傷だぞ〜! 早く治療しておくれ〜!」


 レノもまた、そのまま意識を失ってしまう。

 サーティーンナンバーズ、ナンバー5、リマ撃破。

 残るナンバーズはあと7人。


 レノとリマの戦いが終わった頃、いきなり身震いするセラ。


(な、何でしょぉ? 今、とてつもなく不愉快な気分になりましたけどぉ?)


「どうしたんですの? 身震いなんかして。わたくしと戦うのが怖いんですの?」

「いえ、それは無いですぅ。何故か急に鳥肌が立っただけですぅ」


「なるほど。つまりわたくしの余りの美しさに身震いしたという事ですわね?」

「むしろあなたのぉ、そういう痛い所に身震いしたと思いますけどねぇ」

「誰が痛いですって⁉︎」


(……レノ、半殺し状態でも瀕死状態でも虫の息でもいいので、私が行くまで頑張って生きててくださいねぇ)


「さあ! 行きますわよ!」


 ノインが上げた右手を振り下ろすと、背中の翼から数枚の羽が飛び出しセラに襲い掛かる。


「いやんっ! 危ないですぅ」


 その羽を横っ飛びでかわすセラ。


「ぶう〜! 形状だけでなく攻撃方法まで同じなんて、腹立ちますねぇ」

「まだまだ行きますわよ〜!」


 ノインがあらゆる角度で腕を振り下ろす度に、羽がセラに襲い掛かる。

 その羽を体術だけでかわして行くセラ。


「ウフフ。ヒーラーだと言うのに、中々の身のこなしですわね?」

「スキルポイントはその殆どを治癒魔法に割り振りましたからねぇ、攻撃魔法が使えない分体術を修業したんですよぉ」


「レベル7でありながら治癒魔法しか使えないなんて、勿体ない話ですわ。せっかく魔装具がそんな形状してるんですから、せめて飛行魔法ぐらい習得なさればよろしいのに」

「女の子が空なんか飛んだらぁ、下から覗かれ放題じゃないですかぁ。現に今丸見えですぅ」

「んなあっ⁉︎」


 慌ててスカートを押さえるが、見せパンを履いている事を思い出すノイン。


「つ、つい隠してしまいましたわ。わ、わたくしは別に見られてもいいんですわ!」

「見られて恥ずかしくないんですかぁ? もしかして露出狂の変態さんですかぁ?」


「誰が露出狂ですかっ‼︎ これは見せパンだから見られてもいいと言ったんですわ!」

「ええ〜⁉︎ 見せパンなんて可愛くないですよぉ。リアル下着が見えそうで見えない所がよりエロさを引き立たせるんじゃないですかぁ」

「発想がおっさんですわっ‼︎」





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