第9話 アイコンタクトなんてそんなもの
改めてバーダに質問するユーキ達。
「何でその梅干しがこんな所に居るのさ?」
「リーゼルでネムにぶっ飛ばされた筈なのです」
「フフ、確かにあの時は油断してしまい、苦杯を舐める事になりましたが……」
「ええ〜⁉︎ 普通にネムの方が強かったよ?」
「圧勝だったのです」
「ただの負け惜しみよ」
「負け惜しみだよね?」
「負け惜しみですね」
「だまらっしゃい‼︎」
「だから、その潰れ梅干しが今更何しに来たのよ⁉︎」
「干した上に潰すんじゃありません!」
「もしかしてネムにリベンジしに来たっての?」
「フフ、いえいえ。私が今日来た目的はマナ王女……いえ、マナ女王様とお呼びするべきですかな?」
「女王様ゆ〜な!」
「サーティーンナンバーズの1人バーダとして、マナ王女を守る駒を減らしに来たんですよ!」
「ナンバーズ⁉︎」
ナンバーズという言葉に、警戒態勢をとるユーキ達。
そしてパティとメルクがさっとラケルを見るが、ラケルには特に変わった様子は無かった。
ラケルに気取られないように、パティとアイコンタクトをとるメルク。
(パティさん。もしもラケルさんが妙な動きをしたら、ユーキさんを最優先で守ってくださいね⁉︎)
コクリと頷くパティ。
(分かったわ、メル君。その時は梅干しの足止め、お願いね⁉︎)
頷き返すメルク。
続いてネムにもアイコンタクトを送るメルク。
(ネムさん、もしもラケルさんが敵だった時は召喚獣を出して撹乱、お願いしますね⁉︎)
コクリと頷くネム。
(ネムは同じ干した物なら、梅干しよりもスルメが好きよ)
ネムの意志を確認したメルクが、ロロにもアイコンタクトを送る。
(ロロさん、ラケルさんが敵だった場合、ユーキさんとまた例の合体をして、ひとまず安全な所まで避難してください)
同じく頷くロロ。
(分かってるのです。ナンバーズでちまちま元手を増やすよりも、ジャンボ宝クジで一攫千金を狙うのです!)
そしてユーキにも。
(ユーキさん、ラケルさんを信じたい気持ちは分かります。でも現にこうしてナンバーズが僕達の前に現れたんです。やはりラケルさんを完全に信用するのは危険だと思います。戦闘は僕達に任せて、ユーキさんは自分の身の安全を最優先にしてください)
頷くユーキ。
(女王様って響き、やっぱりイメージ悪いよね? 何て呼んでもらったらいいかな〜? 僕としては姫様って呼ばれるのが好きなんだけど、王になっちゃうと、もう姫様とは呼ばれないよね〜?)
頷き返すメルク。
(やっぱりか〜! はあ、どうしたもんかな〜⁉︎)
みんなに頑張ってアイコンタクトを送ったメルクだったが、まともに伝わったのはパティだけであった。
「あんたがナンバーズの1人だって言うの⁉︎」
「ナンバーズとは、パラス軍の中でレベル7に達した者に与えられる称号です。お忘れですか? 私もレベル7なんですよ?」
「そういえば、そんな事言ってた」
「では、改めて自己紹介させて頂きます。私はサーティーンナンバーズの1人、ナンバー2のバーダです」
「ナンバー2?」
「あんたがナンバー2だっての⁉︎」
「そうですが、何か?」
バーダに聞こえないように固まって小声で話すユーキ達。
「バーダってネムが1人で倒したんだよね?」
「獣魔装した状態で、だけどね」
「最後は完全にネム1人で倒したのです」
「でもそれって……」
「大層な事言ってるけど、あいつがナンバー2ならナンバーズってのも意外と大した事無いのかもね⁉︎」
「聞こえてますよ‼︎」
しまったといった顔でバーダを見るユーキ達。
「勘違いしてもらっては困ります。ナンバーズの数字はトランプカードの数字の強さと同じなのです」
「トランプ⁉︎」
「え⁉︎ トランプと同じって事は、確かエースが1番強いんだよね?」
「そうですね。そしてその次がキング、クイーン、ジャック。その下に10が来て、そこから小さい数字になる程弱かった筈です」
「……て事は?」
「2って1番下……」
「ええ、ええ、そうですとも! 私がサーティーンナンバーズでは1番下ですとも!」
「あ、何かごめんなさい……」
バーダにペコリと頭を下げるユーキ。
「余計惨めになるので謝らないでくれますかっ⁉︎ しかしお分かりですか⁉︎ あなた方の中で数少ないレベル7であり、最強の戦闘力を持つネム王女を持ってして、サーティーンナンバーズ最弱であるこの私といい勝負という事です‼︎」
「いい勝負じゃないもん。人質さえ取られなければ、ネムの圧勝だったもん」
「しかもナンバーズの上位。ジャック、クイーン、キング、エースの4人は、他のナンバーズ達とは更に別格の強さを持つと聞いています」
「聞いてるって……同じナンバーズなのに知らないの⁉︎」
「フフフ。私自身、その4人とは会った事も無ければ、名前すら知らないんですよ。ですからこれは、他のナンバーズから聞いた話です」
「あんた、下っ端過ぎて相手にされてないんじゃないの⁉︎」
「おだまりっ‼︎」
「それはそうと、今はまだカオスが言った期日前なんですよ⁉︎ いきなり約束を破るつもりですか⁉︎」
「フフフ、確かにカオス様は戦いにおいてはちゃんとルールを守るお方です。ですが、いくら先走ったとはいえ、きちんと手柄さえあげれば許してくださるのですよ!」
「何よ! 結局やったもん勝ちじゃないのよ!」
「今回の戦いで手柄をあげれば、リーゼルでの失態も帳消しにしてくださる筈! さあ! そういう訳で覚悟して頂きますよ! 誰から来ますか⁉︎ 何なら全員でかかって来てもかまいませんよ⁉︎」
「ネムさん1人に負けた方が随分大きく出ましたね?」
バーダの挑発に名乗り出るメルク。
「あなたの相手は僕1人で充分ですよ!」
「メル君⁉︎」
「この方の相手は僕がします! ユーキさん達は早く出航してください!」
「ええ⁉︎ 1人でなんてダメだよ、メル君‼︎」
「ユーキさん。船には一般の方も乗っているんです。無関係な人を巻き込むつもりですか⁉︎」
「いや、だけど……」
「メル君! あたしならそいつを倒してから飛行魔法で船に追い付けるわ。変わろうか⁉︎」
「いえ、先程も言いましたが、船の中にもナンバーズが紛れ込んでいる可能性はあるんです! パティさんはユーキさんの側を離れないでください!」
「メルク兄様! 召喚獣、何体か置いていってあげようか?」
「あ、ありがとうございますネムさん。でもそれは船を守る為に使ってください!」
「みんなで袋叩きにすれば瞬殺なのです!」
「いえ、ですから! あれ? えと、もしかして、つまり……僕ってそれ程頼りにならないって事なんでしょうか?」
必要以上にみんなに心配されて、己の期待度の低さを痛感したメルクであった。
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