第2話 よくあるドタバタ劇

 ユーキが振り返るとそこに居た人物は、下へ降りて行った筈のアイバーンだった。


「ア、アイ君⁉︎ 何で⁉︎ 僕を探しに降りて行ったんじゃ⁉︎」

「甘いぞユーキ君。幻術は私も得意とする所。もしやと思ってね。君を探しに行くふりをして、姿を隠していたのだ」

「くそ〜、上手く行ったと思ったのに〜。ああ〜! でもそれだけ上手く姿を消せるって事は、まさか女風呂を覗いたりしてないよね〜?」


 ユーキの言葉に激しく動揺するアイバーン。


「な、何を言うのかね⁉︎ ユーキ君! 確かに私は変態の称号を頂いてはいるが、そういう類の変態ではない!」

「隙あり! フラッシュボム‼︎」

「なっ⁉︎」


 アイバーンが動揺している隙に、目くらましで逃亡を図ったユーキだったが、単なる目くらまし魔法の筈が、何故か大爆発を巻き起こす。


「ぐわあっ‼︎」

「ふにゃあっ‼︎」


「何事だ⁉︎」

「執務室の方で爆発が起こったらしい‼︎」

「何だと⁉︎ まさかパラス軍の襲撃か⁉︎」

「いかん‼︎ ユーキ様をお守りしろ〜‼︎」


 たちまち大騒ぎになる城内。

 その爆炎の中から姿を現わすユーキ。


「ケホッ! ケホッ! いや〜、まいった! ただの目くらましのつもりだったのに、あんな大爆発を起こすなんて。やっぱ魔装具が無いと加減が難しいな〜」


 ふと胸のペンダントに手を触れるユーキ。


「一応仮の魔装具は持ってるけど、一回限りの使い捨てみたいなもんだしな〜。いざという時の為に取っとかないと」


 一方、爆心地に居たアイバーンは。


「お、恐るべき威力……こ、これが、か、神の力、か……ガクッ」


 アイバーン脱落。

 残るBL隊はあと8人。


「よし! 階段が見えて……あうっ!」


 下へ降りる階段に差し掛かった時、いきなりユーキの足をかすめた水の矢によって転倒するユーキ。


「すみませんユーキさん。逃さないようにってアイバーン様にキツく言われてますので」

「メル君⁉︎」


 弓を持ちながら現れるメルク。

 

「撃った⁉︎ 王様に弓矢撃った⁉︎ じ、自分達の王様に弓なんて撃っていいのっ⁉︎」

「少々の事じゃ死なないから、どんな手を使ってもいいとシャル様が……」

「んなっ⁉︎ テトめえええ!」

「さあ! これ以上手荒な真似はしたくありません。戻ってくださ、ぐあっ‼︎」


 メルクの背後からユーキの操ったアローズ、というには巨大過ぎる矢がメルクにぶち当たる。


「相変わらず、勝利を確信した後の油断が過ぎるぞ⁉︎ メル君!」


 メルクを撃退したユーキが、階段を下って行く。


「こ、こんなのもう、矢じゃなくて丸太、です……ガクッ」


 メルク脱落。

 残るBL隊はあと7人。

 下の階に降りると、向こうからブレンが走って来る。


「レン君⁉︎」

「マナ王女‼︎ ご無事でしたか⁉︎」

「え⁉︎ あ、うん。僕は平気」

「城から出てはいけませんよ、マナ王女‼︎ 上の方で爆発があったらしいのです。敵の襲撃かもしれません‼︎」

「あっ! ああ〜。そ、そうだ! アイ君がその爆発に巻き込まれたんだ! 早く助けてあげて‼︎」

「何ですと⁉︎ 分かりました! 待っていろ、アイバーン‼︎ 今すぐ俺様が助けてやるぞおお‼︎」


 叫びながら去って行くブレン。


「よし、レン君もクリア! まあ、アイ君があの程度じゃ死なないだろうけど、一応これで大丈夫だよね」


 ブレン脱落。

 残るBL隊はあと6人。


「しかしまあ、攻めにくくする為にワザとそうしてるんだろうけど、階段の位置がめんどくさいな〜」


 ユーキの言うように、攻め込まれた時の対策として、あえて階段の位置を階毎に場所を変えて設置してあるトゥマール城。

 そして次の階に降りる階段の手前には、ネム&ロロの2人が待ち構えていた。


「ユーキ姉様! ここは通さないよ!」

「どうしても通りたければ、我らを倒して行けなのです!」

「ぐっ! 強敵出現か……」

(まいったな……普通に戦っても強敵なのに、今は魔装具が……)


 胸のペンダントに手をそえるユーキだったが思いとどまる。


(いやいや、まだパティやフィーも居るんだ。ここで使っちゃったらこの先間違いなく逃げ切れない。ならば!)


「ネム、お願い! お姉ちゃんを行かせて!」


 説得作戦に出たユーキ。


「ネ、ネムも通してあげたいけど、今のユーキ姉様を外に出したらすぐ敵に殺されちゃうからダメってパティ姉様が……」

「丸腰では危険なのです!」


「じゃあネムとロロが一緒に来てよ! 2人が守ってくれたら、誰が来たって安心だよ⁉︎」

「そ、そうかな?」

「そうだよ! トーナメントでは制限があって負けちゃったけど、全力が出せる状態なら、ネムとロロは僕達の中で最強だと思ってるからね!」


「じ、じゃあネム達が居れば安心?」

「うん! 何も怖くない!」

「ならいい、かな?」

「ネム! マスターに乗せられてはダメなのです! どの道研修期間が終わるまでは、外に出しちゃダメなのです!」


 ネムを説得したユーキが、今度は優しい声でロロを誘惑にかかる。


「ロロ〜?」

「はうっ‼︎ ロ、ロロを誘惑しようとしてもムダなのです! ロロ達は今回の大会でたくさん分け前を貰えるのです! もうお金では動かないのです!」


「ふ〜ん。だけどお金じゃ友達は買えないよね〜?」

「はうっ‼︎」

「せっかくネム達と友達になったから、これからは一緒にゲームしたり、美味しい物食べたり、遊園地とかに遊びに行ったりしたいな〜って思ってたのに、こんな簡単に敵に回るんだ?」


「はわわわっ! こ、今回は仕方なくなのです! ロロ達は絶対にユーキさんの敵にはならないのです! だからずっと友達でいてほしいのです!」

「じゃあネムとロロはずっと僕の味方だよね⁉︎」

「うん! ネムはどんな事があってもユーキ姉様の味方だよ」

「ありがと、ネム。ロロは?」


「ロ、ロロも勿論味方なのです!」

「2人共ありがと! それじゃあ友達同士、一緒に遊びに行こ〜!」

「おお〜!」

「お、おお〜なのです!」


 ネムとロロをまんまと味方に付けた事により、残るBL隊は4人となる。


(よし! この2人が味方になったのなら、行けるっ!)


 悪い顔でニヤリと笑うユーキであった。






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