第8話 ユーキ3分の2

 波乱のうちに終了した前前前夜祭。

 宿屋に戻って来たBL隊の面々。


「ようやく観念したのね? ユーキ!」

「仕方ないだろー⁉︎ もうこうなったら、意地でも優勝してやるんだから!」

「んふふ〜、はたしてそう上手く行きますかねぇ⁉︎」


「今日はいきなり無理な頼み事をして済まなかったね! 残り2日の前夜祭の挨拶は、また別の者に頼む予定なので、君達は予選が始まるまではゆっくりしていてくれたまえ!」


「あ! そういえば、予選のグループ分けってどうなってるの?」

「ああ、それは今抽選が行われていて2日後、予選の始まる前日に会場である闘技場に貼り出されるから、確認しておいてほしい」

「そうなんだ⁉︎ てか、闘技場でやるんだね?」


「参加人数が千人近く居るからね! さすがに王宮には収まりきらないのだよ」

「ふええ⁉︎ そんなに居るんだ?」

「優勝したら王様になれるんですからぁ、そりゃあみんな出たいですよぉ」

「そんなに王様になりたいかね〜? 僕なんか願い下げだけど」


「この大会が無かったらぁ、ユウちゃんは自動的にリーゼルの王様になってたじゃないですかぁ⁉︎」

「まあ、そういう意味ではこういう形になって良かったと思ってるよ⁉︎ 今回僕が優勝しても、そのまま父様に国王を続けてもらえばいいし、4年後にまた開催されても僕は出ないから、他の人に任せられるし!」


「ユウちゃんは王様にならないんですかぁ?」

「ヤダよ! そんなの!」

「どうしてぇ?」

「だって王様になんかなったら色々やる事多過ぎて、趣味の時間が取れないじゃないかー‼︎」

「そ、そんな理由だったんですね⁉︎」

「僕にとっては一大事だいっ‼︎」


「ユーキ⁉︎ あなた、マナ王女としての記憶が戻ったのよね?」

「そ、そうだよ? だから何さ?」

「いや……偶〜に口調が変わる事はあるけど、性格は記憶が戻る前とそんなに変わらないな〜? って思って……」


「チッチッチッ! 考えてもみなよパティ! マナとしての記憶は14年分だけど、おっさんとしての記憶は35年分もあるんだ! マナの倍以上だよ? 倍以上! 3分の2がおっさんなんだから、そりゃおっさんぽくなるのは当然だろ⁉︎」

「うわあ〜⁉︎ 何だか納得しちゃったわ」



 そして2日後、予選のグループ分けが発表される。


「あたしはゲンゴロウ虫のGね」

「何故ゲンゴロウ虫⁉︎」


「私は遥かなる旅路のHですぅ」

「ロマンチック!」


「ネムはエロマンガのEだよ」

「子供がそんな事言っちゃダメ!」


「俺はフルフロンタルのFだ!」

「全裸⁉︎ てか、何でさっきから大喜利みたいになってんだよ⁉︎」


「そういうユーキはどこよ?」

「ぼ、僕は……Aだ!」

「一言は?」

「いや、言わないからっ‼︎」


 毎度のノリにはしゃぐBL隊だったが、乗ってこない2人に気付く。


「あれ? アイ君とメル君は?」

「そういえばそうね? 何も思い浮かばなかったのかしら?」

「パティが変なノリを始めるからでしょ⁉︎」


「私は……Cなのだが……」

「一言は?」

「それはいいってば!」


「Cから始まる言葉は難しいですからねぇ」

「だから〜!」


「C……キャッスル? クリスタル? う〜ん、イマイチ……」

「クラムなんてのもあるのです!」

「クラム? クラムって何?」

「クラムチャウダーのクラムなのです!」

「ハマグリ⁉︎」


「僕も、Cグループですね……」

「あらぁ⁉︎ アイちゃんと同じですねぇ」

「え⁉︎ じゃあ、アイ君とメル君は予選でぶつかっちゃうの⁉︎」

「ハハ、そういう事になりますね……」

「そっか〜、勝ち残ったとしても、どちらか1人しか本戦に出られないんだ⁉︎」

「ま、まあ、こればっかりは仕方ないですよ! お手柔らかにお願いしますね? アイバーン様!」


「メルク! 私は決してお前を侮らない! だからメルクも全力でかかって来るんだ!」

「ハ、ハイ‼︎」

「そして私は必ず勝って、ユーキ君と結婚する‼︎」

「ア、アイバーン様……」


「キャアアアア‼︎ アイちゃん、まさかの大胆告白ですぅ‼︎」

「な、な、な⁉︎ 何言ってんだよ、アイ君まで⁉︎」

「ユーキ君はAグループ! 私はCグループ! お互い勝ち進めば、準決勝でユーキ君と対戦する事になる! そこで必ず私はユーキ君に勝ってみせる‼︎」


「な、何言ってるんですか? アイバーン様! 勝ってユーキさんと戦うのはこの僕です‼︎ そして、必ずユーキさんを倒して、この僕がユーキさんと結婚するんです‼︎」

「んなっ⁉︎ メ、メル君まで? ど、どうしちゃったんだよ? 2人共⁉︎」


「んふふ〜、ユウちゃんを巡って2人の男が争う! これは萌えますねぇ‼︎」

「何で嬉しそうなのよ? セラ!」


「甘いぞ2人共‼︎」

「レノ⁉︎」

「仮にそこでマナに勝てたとしても、決勝で俺が勝てばマナと結婚出来る権利は俺に移るんだからな‼︎」

「そういう事ですぅ! まあもっともぉ、レノが優勝するなんて事はぁ、万に1つもありえませんけどねぇ」

「なにおぅ⁉︎」


「いや、それどころかぁ、レノでは予選通過すら難しいかもですぅ」

「セ、セラ! それが実の兄に対して言う言葉か⁉︎」

「そうだよ! 言い過ぎだよ? セラお姉ちゃん!」

「実に良い‼︎」

「良いのかよ⁉︎」


「もし途中でユーキを倒せたとしても、他の人に負けたら権利を奪われるんだから、ユーキと結婚するにはどの道優勝するしか無いのよね」

「その通りですぅ! みんな、ユウちゃんをゲットする為に頑張ってくださいねぇ!」


「だから、何であんたは第三者的立場に居るのよ⁉︎」

「私はぁ、ユウちゃんの味方であると同時にぃ、面白そうな方の味方ですぅ!」



「僕、何だかセラお姉ちゃんの事、嫌いになりそう……」


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