第30話 またまた意味深な事を言ってみた
またしても放ったらかしにされているカオス。
「だ・か・ら〜! 俺を無視すんなっつってんだろ‼︎」
強力な衝撃波を放ち、緩い空気を吹き飛ばすカオス。
「ぐっ‼︎」
「なんて凄い魔力⁉︎」
「挨拶は後ニャ! ちょっとカオスと話をさせてもらうニャ!」
猫師匠が前に出てカオスと話し始める。
「カオス! 何でお前が前線に出て来ているニャ⁉︎」
「ああ⁉︎ そんなもん、あいつに会う為に決まってるだろ!」
「会ってどうするニャ?」
「当然戦うさ!」
「ユーキの力はまだ封印されたままニャ! 今戦っても勝負にならないニャ! それはお前も本意ではない筈ニャ!」
「だから俺が力尽くで叩き起こしてやるのさ!」
「そんな事をしたら、マナの肉体が耐えられないニャ!」
「そんなもん知るかよ! あのガキの体が邪魔してんなら、ブチ殺して解放してやればいいだけの事だ‼︎」
「そんな事は、あたしがさせないニャ‼︎」
「ならば猫‼︎ お前が俺の相手をしてくれるってのか⁉︎」
「お前が強引なやり方をするというのなら、力尽くでも止めるニャ‼︎」
意味深な2人の会話を聞いていたパティ達が困惑している。
「ち、ちょっと師匠! さっきから一体何の話をしてるのよ⁉︎ ユーキの事を言ってるのよね? マナの肉体がどうのこうのって……」
「ああ、えっと……その辺の事は、また後で話すニャ! 今はカオスを何とかするニャ!」
「え、ええ! そうね……」
猫師匠が来た事により、少し考え込むカオス。
(とはいえ、どうしたもんか……ガキ共や国王達だけならどうとでもなるが、シャルまで来たとなると厄介だな……戦ってもいいが、さすがに無傷じゃ済まないだろうし、そんな状態であいつと戦っても面白くねぇしなー……)
「ところでお前ら! 城を放ったらかしにしてていいのかよ⁉︎ おそらくは主戦力がここに集まってんだろうが、今頃城は落ちてんじゃねぇのか⁉︎」
マルス達を揺さぶってみるカオスに、答えるアイバーン。
「それは心配無用だ! リーゼルの城はとっくに落ちている! 我々の手によってね!」
「はあっ⁉︎ テメエ、何言ってやがる⁉︎」
「聞こえなかったのかね? それとも理解力が無いのかね?」
「このガキ……」
「リーゼル城はとっくに落ちたと言ったのだ! 我々トゥマール軍によってね‼︎ 現在このリーゼルは、トゥマールの占領下にある‼︎ 従って、それを邪魔する者は全て敵と見なし排除する‼︎」
「そういう事だ、カオスよ‼︎ 我々リーゼルは既にトゥマールの軍門に下った……今はトゥマールの命に従って、パラス軍を排除しに来たのだ‼︎」
「なんだとー‼︎」
アイバーンの言葉を裏付けるように、リーゼル城の前でブレン率いるトゥマール軍が、パラス軍を迎え撃っていた。
「ハッハッハッー‼︎ 何だー⁉︎ 戦闘集団と言われるパラス軍の実力はこんなもんかー⁉︎ こんなヌルい攻撃じゃあ湯冷めしちまうぜー‼︎」
「意味が分からないです! ブレン様!」
側近のアッシュが冷静なツッコミを入れる。
「おそらく、戦いの戦闘と風呂の銭湯をかけているのだろう! さすがはブレン様だ‼︎」
もう1人の側近のラーバが分析する。
「相変わらずくだらないです、ブレン様」
「俺様がもっと熱くしてやるぜー! エルツィオーネ‼︎」
ブレンより吹き上がった無数の火炎弾が、パラス兵達に降り注ぐ。
「ぐわぁ‼︎」
「ぼ、防御‼︎」
「ダ、ダメです‼︎ 余りの高熱に、盾が溶けていきます‼︎」
「くっ! た、退避ー‼︎ 一旦退避しろー‼︎」
ブレンの攻撃に怯み、後退するパラス軍。
「もう終わりか? あさって来やがれ‼︎」
「おとといです、ブレン様……」
「あさってだと普通に来ちゃいますよー! ブレン様ー‼︎」
「ハッハッハッー‼︎ それもそうだなー‼︎」
「やれやれ……何はともあれ、パラス軍を退ける事は成功しましたね」
「まあ、俺様が居れば当然だがなっ‼︎」
「さすがです! ブレン様‼︎」
「ん⁉︎ ところで、さっきからフィーちゃんの姿が見当たらないが、どこ行った?」
アッシュにたずねるブレン。
「フィーさんなら先程用事があるとかで行かれましたが⁉︎」
「何だとー‼︎ リーゼルに用があると言うから連れて来たというのに、どこへ行ったんだ‼︎」
「ええ、ですからその用を済ませる為に行かれたんでしょう!」
「おお、なるほど! ならば良し‼︎」
「さすがはブレン様! 懐が深い‼︎」
「はあ、相変わらず暑苦しい2人だ」
テンションの高いブレンとラーバに比べて、どこか冷めているアッシュであった。
そして、程なくして怒りに震えるカオスの元に、パラス兵が報告にやって来る。
「カ、カオス様‼︎ リーゼル城攻略中に突如トゥマール軍が現れましたー‼︎ その数約2万5千‼︎ 更にリーゼル軍と共闘して我らに攻撃! 現在我が軍は圧倒されつつあります‼︎」
(2万5千? リーゼルの兵力はたかだか1万程度だった筈……そこへ2万5千が加わったとしても、圧倒される程の戦力差には……⁉︎ そうか! ヴェルンの奴等かっ⁉︎)
カオスの考え通り、正規のリーゼル兵1万にリーゼル兵に偽装したヴェルン兵1万5千、そこへトゥマール軍2万5千が加わり総勢5万人。パラス軍2万6千の、約2倍の兵力となる。
更にそのトゥマール軍を、アイバーンに匹敵する強さのブレンが率いる事により、戦局は一気にリーゼル側優勢に傾く事になる。
この一連の流れは、全てセラが考えた事である。
(俺が蹴散らせば済む話だが、やはり消耗は避けられないか……ならば!)
報告に来たパラス兵に命令するカオス。
「オイ! 全軍に撤退命令を出せ!」
「え⁉︎ 撤退、ですか?」
「ああ! このまま戦い続けても、無駄に消耗するだけだ! 引き上げるぞ‼︎」
「りょ、了解しました‼︎ 直ちに撤退命令を出します‼︎」
「という訳だ! 俺達は帰るぜ!」
「⁉︎ やけにアッサリ引き下がるニャ⁉︎」
「テメエが来るなんて計算外だったからな! シャル!」
「賢明な判断ニャ! 負け犬はとっとと尻尾を巻いて逃げるニャ!」
「なによ! ようやく今から本気出してコテンパンにしてやろうと思ってたのに! これに懲りたなら2度と来るんじゃないわよ、このヘタレ!」
「テ、テメエら……」
「2人共、帰ると言っている相手をわざわざ煽るんじゃない‼︎」
調子に乗って挑発する猫師匠とパティを諌めるアイバーン。
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