第28話 魔法少女の地位、危うし!
「君達‼︎ 今の内にこっちへ‼︎」
リンドブルムの動きが止まっている隙に、アイバーン達と合流するユーキ達。
ビストの治療をするセラ。
改めてネムに驚いているパティ達。
「か、かわいい……こんな小さな女の子が、あのワイバーンを召喚したなんて……」
ネムのかわいらしさにやられるパティ。
「そしてメルクを襲ったレイスもな」
「アイ君‼︎ それはもう言いっこなしだよ‼︎」
「そうです! その事はセラさんから聞きました。キスパー……じゃない、ネムさん? はただ依頼されて召喚しただけだって。だから僕はネムさんに対しては何の怒りも恨みもありません‼︎」
「許してくれる、の?」
「ハイ! むしろ、あんな凄い召喚獣達を呼び出せるネムさんを尊敬します‼︎」
「あ、ありが……とう……」
頬を赤くするネム。
「良かったね! ネム! ほら、みんないい人でしょ?」
「うん……ユーキ姉様の、おかげ」
「ねっ‼︎ 姉……様……⁉︎」
姉様という初めての響きに、異様なむず痒さを感じるユーキだった。
「ネ、ネムちゃん⁉︎ あたしも呼んでもらえる?」
「パティ姉様!」
「くうううっ‼︎」
何とも言えない感覚に震えるパティ。
「私も!」
「セラ姉様!」
「い、良い!」
「ぼ、僕もお願い出来ますか?」
「メルク兄様!」
「こ、これは中々……」
「わ、私も呼んでもらえるだろうか⁉︎」
「アイバーン!」
「……何故私だけ呼び捨てなのだ⁉︎ ネム君‼︎」
「だってアイバーン、ネムを殺そうとした……」
「ええー‼︎ アイ君、こんな小さい女の子を殺そうとしたの⁉︎ 信じられない‼︎」
「アイバーン様、酷い……」
「まさに鬼畜の所業ですぅ」
「ま、待ちたまえ‼︎ その時は、あのキスパーの姿をしていたからであって……しかも、メルクの仇だと思っていたし!」
「ふーん……アイ君って、見た目で人を判断する人だったんだー……何かショックー」
「ユ、ユーキ君までそんな事を言うのかね⁉︎」
「フフ、冗談だよ! みんなももう、勘弁してあげようよ!」
「そうね、これぐらいにしといてあげるわ」
「そうですね」
「楽しかったですぅ」
「君達! 楽しそうなとこ悪いんだけど、逃げなくてもいいのかい? リンドブルムが動きだしたよ⁉︎」
セラにより回復したビストが忠告する。
「どうする? アイ君……逃げる? それとも戦う?」
「Sランクの魔獣となると、戦えば我々も無事では済まないだろうし、先の戦いで皆消耗している……ここは逃げた方が得策だと思うが……ユーキ君はどう思うかね?」
「そうだね……別に無理に戦う理由も無いしね……逃げよう!」
「決まりですぅ! 逃げましょう!」
屋敷を出ようとするユーキ達だったが、何故かネムがリンドブルムをじっと見つめたまま動こうとしない。
「ネム⁉︎ 何やってるの? 早く逃げようよ‼︎」
「あの魔獣……中に誰か居る……」
「え? 誰かって? ネムみたいに誰かが中で操ってるって事?」
「違う……そういうんじゃなくて……中に取り込まれてる」
「取り込まれてるって……?」
「おそらく、あの魔獣を召喚した人……制御出来なくて食べられたのかも……まだ死んでないけど……」
「まさか! オーナー⁉︎」
「くっ……みんなは早く逃げて‼︎」
「逃げてって……ユーキ! あなたまさか、あのオーナーまで助けようって言うの⁉︎」
「まあ、ね……例え敵でも、誰かが死ぬのって嫌なんだよね……僕は消耗もしてないしほとんど無傷だから、みんなは早く逃げて‼︎」
「ネムも無傷……だから残る……」
「ロロも無傷なのです! 完全無欠ロロなのです!」
「ネム、ロロ……ありがとう」
「ユーキが残るって言うなら、あたしだって残るわ‼︎」
「パティはダメ!」
「な、何でよ⁉︎」
「パティ、そんな状態じゃ戦えないでしょ?」
「た、例え戦えなくても、ユーキの盾ぐらいにはなれるわ‼︎」
「絶対ダメ‼︎」
「ユーキいいい‼︎」
「聞き分けたまえ、パティ君! 消耗した我々が居たら、かえって足手まといになってしまう」
「ううううう〜……」
「こういう時のユーキ君の強さは、君も知っているだろう⁉︎ それにロロ君の驚異的な身体能力! そして、あの歳で強力な魔獣を作り出せるネム君! 大丈夫さ! 彼女達の力を信じてあげようじゃないか」
「わ、分かったわ……戦うとは言わない……でもせめて、ここでユーキ達の戦いぶりを見させて!」
「でも、こんな所に居たら危な……」
「もうこれ以上は譲渡しませーん‼︎」
ツンと顔を背けるパティ。
「もう、分かったよ……セラ! ゴメンね! みんなを守ってあげて!」
「ハイ! 任されましたぁ!」
「じゃあ行くよ!」
魔装具を具現化させ、黒いカートリッジをセットしてからロッドを前方で一回転させ、叫ぶユーキ。
「魔装‼︎」
空中に現れた魔方陣がユーキに近づいて来て体をすり抜けると、白い魔道士タイプの魔装衣が装着される。
「それじゃあネム! ロロ! 行こうか‼︎」
「あ、ユーキ姉様……ちょっと待って……」
「どしたの? ネム」
「ネムも魔装するから……」
「え? 召喚士が魔装ですって⁉︎ あたし、そんなの初めて聞いたわ」
「私もだよ」
「僕もです」
「右に同じですぅ」
ネムが、胸のペンダントを引っ張ると、魔道書タイプの魔装具が現れる。
「ロロ! 行くよ!」
魔装するのかと思いきや、何故かロロを呼ぶネム。
「ん? 何でロロを? ロロも魔装するの?」
ネムのそばに立つロロ。
魔道書のページが凄い速さでめくれて行き、ネムの足元に魔方陣が現れる。
そして叫ぶネム。
「魔装‼︎」
ロロの体が光に包まれネムと重なり合うと、ネムの体も同じ光の中に包まれる。
「え、どういう事? まさか召喚士の魔装って……」
ネムの魔装を見つめているパティ。
光が消えるとそこにロロの姿は無く、身長が伸びて少し成長したように見えるネムの姿があった。
「ええええ‼︎ ネ、ネム? 何だか見た感じちょっと大人になったみたいだけど……そ、それにロロはどうしたの? え? もしかして、ロロと合体したって事なの? じ、じゃあロロっていったい⁉︎」
「もうっ! いっぺんに聞かれても答えられないわ、姉様!」
「何か口調も変わったー‼︎」
そして、ユーキの魔装具が淡い光を放つ。
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