第8話 全部弓で倒せばいいじゃん! とか言わないで

「卑怯者ー‼︎ 正々堂々勝負しろー‼︎」


「フン! 何とでも言え! これで嫌ってくれたらむしろ好都合だ……てか、こんないたいけな少女を寄ってたかって追い回すお前らに、卑怯とか言われたくねーわ‼︎」


「ユーキちゃーん!」

「俺と付き合ってくれー!」

「僕は友達からでいいからー!」


「まだ言うか!」


「え? オイ! あれって?」

「こっちに向かって来るぞ!」

「ヤバイ! みんな、戦闘準備だ!」


「ん? 何だ?」


 先程までと様子の違う声に、ふと後ろを振り返るユーキ。

 すると、巨大な人型魔獣が男達に襲いかかろうとしていた。


「あれって……確かサイクロプス?」

 かつてユーキを襲ったサイクロプスの姿に、足を止めるユーキ。


「い、いや……あいつらだって冒険者なんだ! あれぐらい何とかするだろ」

 ユーキが立ち去ろうとすると、更に4体のサイクロプスが現れる。


「あのサイクロプスが5体も? く……」

「何だ? 魔法が効かねえ!」

「サイクロプスに下級魔法は通用しない!」

「だけど動きが速すぎて魔力を貯めてるヒマが!」

「ぐわあっ‼︎」

「うぐっ‼︎」


 5体ものサイクロプスの攻撃に、パニック状態の男達。


(今なら楽勝で逃げられる……でも……)


 昨夜のパティとの会話を思い出すユーキ。


『ユーキって、色んな魔装出来るわよね?』

『うん、だけど魔力の消耗が激しいのが問題なんだよねー』


『それなら魔装はそのままで、魔装具だけを変型させたらどう? そしたら、魔力の消費をかなり抑えられるんじゃない?』

『魔装具だけ……それは考えた事無かったなー……うん、明日試してみるよ』


(それが出来れば、魔装せずに済む)

 ロッドを一回転させて叫ぶユーキ。

「サンダーボウ‼︎」


 すると、魔装をする事無くロッドが弓に変わった。

「おお! 何だ、出来るじゃないか……よし!」


 弓を思いっきり引きその状態で止めると、雷の矢が現る。

 更にその状態を維持していると、矢が強烈な光を発し始め、そして放つ。


「ライトニング・アロー‼︎」

 雷の矢が凄まじい速さでサイクロプスめがけて飛んで行き、一体に直撃すると全身に電撃が走り、そしてサイクロプスは消滅して行く。


「え? 雷の矢? 一体どこから?」


 更に弓を一回転させて叫ぶ。

「スピアー‼︎」

 すると今度は弓から槍に変型する魔装具。

 その槍を頭上で何度も回転させると、槍が光を放ち始める。


 回転を止め、サイクロプスに向かって走って行き、槍投げの様にして投げる。

「ゲイ・ボルグ‼︎」

 サイクロプスめがけて飛んで行く槍。

 そして一体のサイクロプスに突き刺さると、魔石を残してサイクロプスが消滅する。


「ユ、ユーキちゃん?」

「凄え! あっと言う間にサイクロプスを2体も倒した!」

「やっぱりユーキちゃんって強いんだ!」


「バインド‼︎」

 グイッと引っ張ると、さっき投げた槍がユーキの手元に戻って来る。

 そうして、集団の中に戻って来たユーキ。


「ユーキちゃん‼︎」

「戻って来てくれたんだね?」

「助けてくれてありがとう!」

「俺達の事心配して?」


「違わいっ! 魔石をゲットするチャンスだと思ったからだよ!」

 恥ずかしいので、誤魔化すユーキであった。


「うん、だとしても助かったよ、ありがとう」

「ほら! まだあと3体居るんだ、気を抜かないで!」

「あ、実はさっき更に3体増えたんだ……」

「何ぃ‼︎」


「ええー‼︎ 何だよ! 2体倒したのに、最初より数増えてるじゃないか!」

(何なんだよ? まだ始まったばかりだぞ? どんな無理ゲーだよ……くそっ! あのオーナー、絶対後でぶっ飛ばす!)



「ねえ! 僕が仕留めるから、何とかサイクロプスの動きを止めて!」

「あ、ああ、分かった! やってみる」


 再び槍を一回転させて叫ぶ。

「ソード‼︎」

 今度は槍から大剣に変わる魔装具。


「ウインド‼︎」

 剣を抜いて風をまとわせてから、また鞘に収める。

 男達がどうにかサイクロプスの動きを止めている。


「ユーキちゃん‼︎ 今だ‼︎」

 そのサイクロプスに向かって走って行き、剣を抜きサイクロプスの上に飛び乗り、剣を突き刺すユーキ。

「烈風斬」


 風の刃がサイクロプスを真っ二つに斬り裂き、魔石が落ちる。

「やったー、ユーキちゃん‼︎ 3体目だ‼︎」

「ふう、これでやっと始めの5体に戻った訳か……しんど……」


 だが、一瞬気を抜いたユーキの背後から、更に2体のサイクロプスが土の中から現れる。

「ユーキちゃん‼︎ 危ないっ‼︎」

「しまっ……」


 またあの時の再来かと思われた時。


「ブリザード‼︎」

 ユーキの背後から現れた2体のサイクロプスが、吹雪に晒され一瞬で凍りつき砕けた。


「え? 今のってまさか……」

「ダイヤモンド・ダスト‼︎」

 辺り一面の大気が凍り、残りのサイクロプス達を一瞬にして凍りつかせる。



 声のした方を見ると、そこにはGエリアで合流する筈だったアイバーンが居た。


「ふむ……Gエリアに着いたものの、ユーキ君が見当たらなかったので気になって来てみたが……どうやら正解だったようだね」


「アイ君‼︎」

「ケガは無いかね? ユーキ君」

「アイ君、わざわざここまで来てくれたんだ?」

「当たり前だろう? 君を守ると約束したからね」



「アーイくーーーん‼︎」

「ユーキくーーーん‼︎」


 まるでスローモーションの様に駆け寄る2人。



 だがアイバーンの手前でジャンプするユーキ。


「いい加減に服着ろおおおっ‼︎」

 ユーキの飛び蹴りが、未だに海パン姿のアイバーンの腹に突き刺さる。

「ぐほぉぉ‼︎」

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