第6話 アニメに出て来るオタクは大抵メガネかデブ

「いきなりユーキ選手が逃げるという事態から始まりましたこの試合でしたが、終わってみればまたしても一撃で勝負を決めたユーキ選手……これで2人勝ち抜き成功です‼︎」



 声援に応えるユーキ。



「あっさり勝っちゃいましたよ? アイバーン様」

「ふむ……ずっと警戒はしていたが、どうやら杞憂に終わったようだね」



 まだ倒れたままのキスパー。

「ブフ……ぼ、僕はただユーキたんとお友達になりたかっただけでフ……いじめるつもりは無かったでフ」


「押し潰そうとしただろ」

 やれやれと言った感じでため息をつき、キスパーに近付いて行くユーキ。スッと手を差し出し。


「べ、別にわざわざこんな事しなくても、友達ぐらいならなってやるから」

 少し照れながら言うユーキ。

「本当でフか? ユーキたん!」

「うん……だから立ちな」

 キスパーの手を取り、グイッと引き上げるユーキ。

(あれ? 意外と軽いな)


「ユ、ユーキたーん!」

 抱きつこうとするキスパーをサラリとかわし。

「それはやめろ」

 冷たくあしらうユーキであった。



「ではユーキ選手、また控え室の方でお待ちください」

「うん」

 控え室に戻るユーキ。



 少し経った後。



「さあ、次の挑戦者が決まりました! 紹介させていただきます! 名前はバルカン、18歳男性、クラスはナイト、魔装具はソードタイプ、魔力レベルは3、魔装具ランクは素材3プラス魔石3のランク6でございます!」



「今度のはちょっと手強そうね」

「ふむ……先の2戦は魔力を温存していたようだが、果たして今回も魔装せずに行くつもりなのか……」



 控え室でモニターを眺めているユーキ。

「レベル3かー……魔装されたら厳しいかな……まあギリギリまで粘ってみよ」


 ドアをノックして、スタッフが顔を出す。

「ユーキ選手、お時間です……闘技場までお越しください」

「うん、分かった」



「さあ出てまいりましたユーキ選手! 今度はどんな闘いを見せてくれるんでしょうか!」



(さて、今回はどんな作戦で行くか……)



「それでは! ユーキ嬢争奪戦、第3試合……始め‼︎」


「そのタイトルやめる気ねーな」



「ユーキ! 今回も魔装はしないのか?」

「ん? まあ、状況次第?」

「そうか……でも俺は遠慮なく行かせてもらうぞー!」

「うん、いいよ……気にしないで」

「そして見事勝ち! 君を彼女にしてみせる‼︎」

「あー、うん……まあ頑張って」

 冷ややかな反応のユーキ。



 バルカンが魔装具を具現化させると、盾と一体型になった剣が現れた。

 その剣を構えて叫ぶ。

「魔装‼︎」

 バルカンが炎に包まれその炎が消滅すると、銀色の鎧をまとった姿で現れた。


 だが観客席からブーイングが起こる。

「ユーキちゃんが魔装してないのに、なに魔装してんだテメェ‼︎」

「男として恥ずかしくないのかー‼︎」

「お前なんか素手で闘え、素手でー‼︎」


 心無い野次に反論するバルカン。

「ユーキがいいって言ってんだからいいだろー‼︎

「なに呼び捨てにしてんだこの野郎‼︎」

「ユーキ様とお呼びしろ! ユーキ様とー!」



 観客ともめているバルカンを見て、いたたまれなくなるユーキ。

「あ、あの……僕の勝手な都合で不快な思いさせてゴメン……魔装したままでいいから、気にせず闘ってよ」


「な、何言ってんだ? べ、別に気になんかしてないぞ? 勿論全力で行かせてもらう……ほら、よく言うだろ? 獅子は兎を狩るにも一兎をも得ずと」

「いや、何か混ざってて訳分かんないよ……めちゃくちゃ動揺してるね」

「けど、簡単には狩られないよ!」



「あの相手の人、何だかブレン様に似てますね」

「やめてくれメルク……思い出すだけでも暑苦しい」

「ん? 誰の事?」

 気になったパティがメルクに尋ねる。


「アイバーン様と同じ、王国騎士団の方です……アイバーン様と互角の強さをお持ちなんですが、その……何て言うか……色々と熱い方なんです」

「へえー、アイ君と互角なんてなかなかやるじゃないの」

「私との相性は最悪だがね」

「ああ、なるほど……炎使いね」




 バルカンと打ち合っているが、殆ど防戦一方のユーキ……打撃を受ける度に苦痛に顔が歪む。


(く……遠距離から魔法を撃ってもあの盾に防がれてしまう……魔力を高めようとすると、接近戦に持ち込まれる……結構ストレングスの威力も上げてるのに、まだ受け切れない……これが魔装をしてる者としてない者の差なのか?)


「ハハハ! そろそろ魔装したらどうだ? ユーキ! それとも出来ない理由があるのか?」

「へへ……まだまだこの程度じゃ、勿体無くて見せてあげられないね!」

「フッ! 言ってくれる……じゃあこれならどうだ‼︎」


「フレイムソード‼︎」

 バルカンの剣が炎に包まれる。

 その剣をロッドで受けるユーキだったが、強烈な熱がユーキの体に伝わる。

「ぐっ! 熱……」

 あまりの熱量に片膝をついてしまうユーキ。



「どうだユーキ! 魔装するか? ギブアップするか? それとも彼女になるか!」

「それいいな」

「お? 彼女になる事を選んだか?」

「そっちじゃないよ!」


「フレイムロッド‼︎」

 バルカンと同じように、ユーキのロッドが炎を纏う。

「何‼︎ くっ」

 咄嗟に距離を取るバルカン。



「これでもう君の炎は僕には効かない」

「さあ、反撃開始だ!」








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