第13話 パティの奮闘とアイバーンの魔装

「ストレングス‼︎」

「フライ‼︎」

 肉体強化魔法と飛行魔法を重ねがけするパティ。

 光の膜がパティの周りを覆う。

 飛行魔法といってもよく魔法使いがやっている、杖にまたがって飛ぶのではなく、そのままの体勢でふわっと浮いている感じだ。



「さて……あのサイズ……どの程度なら通用するかしらね」

 魔力を溜め始めるパティ。

「グワアアアア‼︎」

 ワイバーンがブレスを吐いてきた。

「こんな距離じゃ当たらないわよ!」

 旋回してブレスをかわしながらワイバーンに接近する

 人間ぐらいなら丸呑み出来そうな程の大きさだ。


「さすがに凄い迫力ね」


 ワイバーンの頭上につけ。

「ウインドソード‼︎」

 剣のような型をした風の塊が飛んで行く。

 ワイバーンの首元を狙って放ったが、僅かに刺さっただけで止まってしまった。

「かったいわねー!」


 ワイバーンが翼を羽ばたかせパティを吹き飛ばそうとする。

「あら、あおいでくれるの? じゃあお返ししないと、ね!」

 ワイバーンの巻き上げた風を取り込んで翼目掛けて打ち返すパティ。

「ストーム‼︎」

 風の刃が左の翼を切断する。


「グワオオオオ‼︎」

 ワイバーンが体を起こして来たが、ヒラリとかわすパティ。

 パティを掴もうと右腕、左腕と繰り出してくるが巧みに回転しながらかわすパティ。

「いや! やめて! 危ない!」

 だがワイバーンの顔の前まで追い込まれたときブレスを吐いてきた。

 直撃したブレスの勢いで吹き飛ばされるパティ。


「ぐっ! このお‼︎ ファイアーウォール‼︎」


 敢えて炎に炎をぶつけて相殺しようとするパティだったが。

「くっ! 相殺しきれない‼︎」


 かなり威力が弱まってはいたが、そのまま岩壁に叩きつけられるパティ。

「ぐうっ‼︎ いったあーーーー」

 強化魔法をかけていても、かなりの衝撃だった。

「まさかコンビネーションを使ってくるなんてね、やってくれるじゃない」


 カチンときたパティ。

「この大トカゲが‼︎ 舐めんなーー‼︎」

 再びワイバーンに向かって飛行するパティ。


「ホーミングアローズ‼︎」

 パティの周りに3本の光の矢が現れ、同じ速度で飛行している。

「アクセル‼︎」

 急激に加速して、光の矢を置き去りにして行く。


 ワイバーンの手前で急制動をかけるパティ。

 左腕を伸ばしてくるワイバーン。

 ニヤッと笑い、バク宙をする感じでふわっと体を水平にする。

「ひとつ!」

 パティの背後から先程の光の矢の1本が飛んで来て、ワイバーンの左手に突き刺さる。

「ふたつ!」

 2本目の矢が寸分違わぬ場所に刺さる。

「みっつ!」

 最後の矢が同じ場所に刺さった時、ワイバーンの左手首が吹き飛んだ。

「グオオオオオオ‼︎」

 吠えるワイバーン。


 くるっと1回転して元の体勢に戻るパティ。

「いかがかしら?」


 少し距離を取るパティ。

「効いたのはいいけど、これってば自分も加速しないと威力出ないのよねー」


「さて……お腹の強度はどうかしら?」



 パティを掴もうと両手を伸ばしてくるが。

「フラッシュボム‼︎」

 目くらましで腕をかわし、ワイバーンの腹の下に潜り込む。

 仰向け状態になりワイバーンの腹部を狙い打つ。

「ウインドソード‼︎」

 敢えて首の時と同じ魔法を打ち、ワイバーンのダメージを確認するパティだったが、首の時よりも浅い位置で止まる。

「こっちの方が硬いか⁉︎」


 そのまま尻尾のある方へ飛び抜けて行くと、ワイバーンはパティを叩き落とそうと尻尾を振り回してきた。

 それをヒョイヒョイとかわすパティ。

「もう‼︎ その尻尾、邪魔ー‼︎」


「ウインドソード‼︎」

 尻尾の付け根に突き刺ささる魔法。

 結果は同じかと思われたが、尻尾部分が消滅し砕けた魔石が落ちる。

「こんな所に魔石?」

 消えたのは尻尾だけで、本体は残っている。

「複合体⁉︎」

「そうか……それならこの大きさと機敏さも納得だわ」


 パティが考えを巡らせていると、突如ワイバーンが体を右に高速回転させて左腕を振り回してきた。

「早い⁉︎ しまった‼︎」

 弾き飛ばされ、壁に激突するパティ。

「あうっ‼︎」

 更に右腕で追い打ちをかけてくるワイバーン。

「ぐっ!」



 ダメかと思われた時。

「アイスニードル‼︎」

 氷の針山が下からせり上がってきて、ワイバーンの右手首を斬り飛ばす。

 氷の続く先を見ると、鞘に入ったままの大剣を地面に突き立てているアイバーンがいた。

 服はちゃんと着ている。


「アイ君⁉︎」

「やあ、パティ君……苦戦しているようだね」

 走り込んできてワイバーンの右足に剣を突き立て。

「フリージング!」

 剣の触れている場所から徐々に凍って行き、体全体に広がり動かなくなったワイバーン。

「アイ君!」

 アイバーンの手を取り、ワイバーンとの距離を開けるパティ。


「これで少しは時間が稼げるだろう……その間に回復したまえ、パティ君」

「なによ、偉そうに! 」

「ヒーリング!」



「ところで……今度は本気で戦ってくれるんでしょうね?」

 意味深な質問をするパティ。

「今度は、とはどういう意味かね?」

「とぼけないでよ! いくら相性の悪いワイバーンが相手だからって、あんたが簡単にやられる訳ないでしょ?」

「いやいや……買い被り過ぎだよパティ君、私は水が無いとダメダメな男なのだよ」

 ワイバーンの言葉を無視するように。

「今度手を抜いて、もしユーキに何かあったら……燃やすわよ‼︎」

 ギロッと睨むパティ。

 ゾクッとなるアイバーン。

「ハハ……氷使いである私を震え上がらせるとは……さすがだよ、パティ君」


「しかし、相手の起こした風を取り込んで威力を増したり、炎のブレスに炎をぶつけて相変わらず君の戦闘センスには感服するよ」

「そりゃどうも……ん? あんた‼︎ そんな最初から見てたんなら、もっと早く出てきなさいよ‼︎」

「いやいや、その頃はまだ完全に回復しきっていなかったのだよ」



 そんなやり取りをしていると、ワイバーンを覆っていた氷にヒビが入り始める。

「出てくるわよ」

「ふむ……では、ワイバーンより怖いパティ君に燃やされないよう、頑張るとするか」

「なんですってー‼︎」



 大剣を頭上で1回転させてから地面に突き立てると、立っている場所に魔法陣が現れる。

 両手を剣の上に置き、叫ぶーー


「魔装‼︎」


 地面の魔法陣から氷の山がせり上がって来てアイバーンを包み込む。

 そして氷が砕けると、黄金の鎧を纏ったアイバーンが現れた。



「さあ! 行くとしようか!」

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