第8話 夢見るユーキ、その2(月とスッポンてどういう意味?)

 1時間程経った頃、元採掘場の前に到着したパティ達3人。

 山の一角を切り崩して、巨大な洞窟の様な穴が開いている。


「ここが採掘場だった場所か」

「ここにユーキが……」

 中に入ろうとするパティの襟元を後ろから掴んで静止させるアイバーン。

「うえっ!」

 一瞬喉が締まり苦しむパティ。

「うっ! ゴホゴホゴホッ! ちょっと! 何すんのよあんた‼︎」

 アイバーンの胸ぐらを掴むパティ。


「慌てるんじゃない、パティ君! 中の状況が全く分からないんだ……迂闊に飛び込むのは得策ではない」

「そんなの関係ないわ‼︎ 全員ぶち殺すだけよ‼︎」


 再び入ろうとするパティの襟元を掴む。

「ぐえっ‼︎」

「ゴホゴホッ‼︎ だから何よ‼︎」


「物騒だねー、だがもしユーキ君を盾にされたらどうする気だ?」

「う……な、何とかする!」

「考え無しか!」

 ユーキが居ないのでアイバーンがツッコむ。

「ユーキには傷1つだって付けないわ‼︎」


 また行こうとするパティの襟元を掴む。

「ぶえっ‼︎」

「いい加減にしなさいよ‼︎ あんたー‼︎」

 アイバーンの両頬を左右に引っ張るパティ。

「ふぁあ、ふぉひふひふぁはえ(まあ、落ち着きたまえ)」



「何にせよ、中の情報は必要だ! メルク! 頼めるかい?」

「はい! お任せください!」

「あ、でも僕はユーキさんの顔を知りません……パティさん、写真とかお持ちじゃないですか?」

「え? ええ、あるわよ」

 そう言って魔装具に触れると大量の写真が出てきた。


「いや、こんなにはいらないんだが」

「しかしこの写真……」

 まるで隠し撮りをしたかのような微妙な角度の写真ばかりが並ぶ。

「犯罪の匂いがするぞ? パティ君」

「いいのよ! あたしが趣味で撮ってるだけなんだから!」

「いや、そういう問題では……」

「うるさいわね! あんたに常識をとやかく言われたくないわよ!」


 2人が揉めている中、一枚の写真を手に取るメルク。

「か、可愛い……」

 写真を見て顔が赤くなる。

「そうでしょー、もうユーキったらフィリス1、いや世界一可愛いんだからー」

 何故か得意げに言うパティ。


 メルク、立ち上がり。

「では行ってまいります! お二人はここでお待ちください」

「うむ……頼んだぞ、メルク」

「お願いね、メル君」

「はい、お任せください」

 採掘場に入って行くメルク。






 暗闇の中、声が聞こえる。



「ユーキ‼︎ ねえちょっと、ユーキ‼︎ 起きなさいよ‼︎」

「うん?」


「ねえ! いつまで寝てんの? ユーキ!」

 聞き覚えのある声が聞こえる。

「この声は……魔道書、か?」


「そうよ! ねえ、あんた何やってんの? 何あんな奴らに捕まってんのよ!」

「え? 捕まった? ……あ、そうか……僕、あのままベンチで」


「せっかくあの時助けてあげたのに」

「あの時? あ、もしかして魔装具を取られそうになった時?」

「そうよ」


「そっかー、あの時は助かったよ、ありがとう」

「べ、別にあんたの為にやった訳じゃないんだからね」

「ああ、今回はツンデレか」



「疲れたから戻すニャ」

「戻すのかよ! ネタ切れか?」

「違うニャ! 飽きただけニャ!」

「そしてまた猫キャラか?」

「最近のマイブームニャ」


「マイブームて……まあいいや、聞きたい事あったんだ……何で僕、風魔法1回使っただけで倒れたんだ?」

「まだ魔力がほとんど回復してなかったからニャ」

「やっぱりか……魔装ってそんなに魔力使うんだ?」

「ん……んん? それは追い追い分かってくるニャ」

「煮え切らないなー」



「じゃあウインドウォールがすぐに消えちゃったのは? あの時直ぐに倒れなかったっていう事は、まだ魔力は残ってたって事だよね?」


「それは君とパティのレベルの差ニャ」


「レベル? どれぐらい?」

「君のレベルがまだ1で、パティのレベルは5ニャ」

「え? 1と5ならそれほど変わらないんじゃ?」


「全然違うニャ! 月とスッポン! ダイヤと石ころ! 富士山と砂山! F1と自転車! カニとカニかま! 金と金目鯛ぐらい違うニャ!」

「おい! 最後のは変だぞ‼︎」


「この世界の魔法レベルは7段階ニャ! だからパティに比べれば君のレベルは、下の下の下ーーの下下下の下ーーニャ!」

「腹立つ‼︎」


「てか、パティってそんなに強かったんだ」

「パティはああ見えて強いし、色々出来る娘ニャ! サイクロプスだってパティが魔装してたら一瞬で片がついてたニャ!」

「マジか‼︎」

「マジニャ‼︎」





「ところで……今ちょっと気になったんだけど?」

「ニャ?」




「さっきから君、やけにパティの事に詳しいけど……知り合い?」

「え? あ、あ、いや、え、ええと、そ、それは!」

ガチャッ‼︎

「キャッ‼︎ カップ倒しちゃった‼︎ タオル! タオルどこ? ああ‼︎ 服に紅茶が垂れて‼︎ いやーんシミになっちゃうーーー‼︎」

「ガタッ! ガチャガチャ! ドドドドドド‼︎ ガタッ」

「…………はて? 何の事ですか?」

「いやメチャクチャ動揺してたよねーー‼︎‼︎」



「へへーんだ! どうせ目が覚めれば全部忘れちゃうニャー‼︎ ザマーミロニャー‼︎」

「こいつ! ホント腹立つ!」


「ああ、1つだけ忠告してあげるニャ」

「君が今居る洞窟……ちょっとヤバい奴が居るから気をつけるニャ」

「ヤバい奴?」

「あ! でもどうせ忘れるから意味無かったニャー!

テヘペロニャ」

「それじゃあ、がーん、ばーる、ニャン‼︎」




「いつか燃やす」

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