第6話 そんな所で寝てたら、風邪ひきますよ?

 アジトに戻って来た男達。


「何ー‼︎ それで尻尾巻いて逃げて来たってのかー?」

「でもよー兄貴ー、相手は王国騎士なんだぜー、俺たちじゃとても勝てねぇよー」

「ぐぐっ、くそー! お宝を目の前にしておきながら」



 その頃、パティとの待ち合わせ場所を目指していたユーキは、歩く事さえ辛い状態だった。


(あれ? 何でだ? 体がめっちゃ重いぞ……)

(あ、ダメだ……ちょっと休んで行こう)

 近くにあったベンチまで何とかたどり着き、腰を下ろすユーキ。

 辺りはすでに薄暗くなってきて、人影もまばらだ。


(あ、もしかして魔力切れ……か? いや、でも今日は風魔法1つしか使ってないのに? )

 薄れゆく意識の中で考えを巡らせる。


(一晩寝ただけでは殆ど魔力が回復してないって事か……? いや、どんだけ容量少ないんだよ……あ、ヤバい……こんなとこで気絶したら…………もしさっきの連中が……来たら………………)


 意識が遠のき、ベンチに倒れこむユーキ。



「お、おい! 居たぞ‼︎」

 先程の仲間達がユーキを見つける

「え? 寝てる……のか?」



 再びアジトでは。

「何とかしてあのピンクのガキだけさらえねえもんか?」

「でもよー兄貴ー、もしさらえたとしても魔装具に触ったらさー」

「任せろ! それはすでに考えてある! あとはあのガキさえさらってくれば……」




「兄貴ー‼︎ さっきのガキさらってきやしたー‼︎」

「何ーーーー‼︎‼︎」

「お、おめえら、いったいどうやって?」

「いやー、それが何故かベンチで寝てたのを偶然見つけやして」

「な、なんてラッキーな……よ、よし、起きる前にとりあえず縛っとけ! おめえら‼︎ 出発するぞ‼︎」




 その頃待ち合わせ場所に来ているパティ。


「遅い……1時間も過ぎてる……」

「道に迷った? 楽しすぎて時間を忘れてる?」

「ハッ‼︎ まさか何かあったんじゃ?」

 落ち着かないパティ。

「んーーーーーーー」



「やっぱり気になる‼︎」

 魔装具を具現化させ、杖を縦に構え。

「ウェイブソナー!」

 そう言って杖を地面にトン、と立てると杖を中心に円形の魔力の波が周りに広がって行く。


 目をつぶり、街中にある魔力を探って行く。

「これは違う……これでも無い……」

 間隔を開けて、何度も杖をつくパティ。

「ユーキの魔装具は最上位の白魔石(はくませき)を付けてる……その魔力を探せれば……」


 この魔法はあくまで魔力の強さや位置を探るだけで、人物の判別までは出来ないようだ。


「居た‼︎ 強い魔力‼︎ 近い‼︎」


 魔力を探知した場所に走って行くパティ。

 だがそこに居たのはユーキではなかった。


「え? アイ君にメル君?」

「やあ、パティ君! 久しぶりだね!」

「あ、お久しぶりです、パティさん」

 そこに居たのはアイバーンとメルクだった。




 めんどくさいのに出会ってしまったーー

 心の中でそう思うパティであった。

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