第104話 地表戦……


 クレヤボヤンスの視点を高空にし、あらためて確認すると、ゲルマノイル帝国との国境付近の平原には、200機を超えると思われるシャトルが駐機している。

 シャトル1機の大きさはジャンボジェットサイズだろうか。

 あの巨大宇宙船から発進してきたとすれば、もっと数がいて、別の所にいる可能性もあるが、とりあえずこの200機のシャトルを何とかせねばならないだろう。

 空から空爆とかやられると、航空戦力を持たないアルタリアは短時間で壊滅的被害を被(こうむ)ることになる。


 私はエリアテレポートを発動し、敵シャトル団から見えないように、小高い丘の反対側に張りぼて宇宙船を出現させた。


 サイコキネシスで張りぼての機体を上昇させ、徐々にシャトル団の方へ移動していくと、シャトルのうちの3機ほどが将に飛び立つところだった。

 母船との通信が不能になったための偵察任務か、それともアルタリアを攻撃するための先遣部隊かは不明であるが、何にしても高速で移動されると補足が困難になるかも知れない。

 ここは十分に加速しないうちに落ちていただこう。


 垂直離着陸機のように真上へ上昇している3機のシャトルをカスミちゃんと手分けして、駐機中のシャトルへぶつけることにする。


「カスミちゃん、一番左のをお願い。

 私は真ん中のと右のをぶつけて、破片を駐機中のシャトルに当ててみるわ」

「分かった。私はできるだけたくさん巻き込めるように墜落させてみる」


 簡単に相談を終えると、私はサイコキネシスで真ん中を飛んでいるシャトルを無理やり動かし、右側を飛んでいたシャトルの土手っ腹に頭から突撃させた。


 真横から衝突されたシャトルは機体が真っ二つになり地表へと落ちていく。私は前半分と後ろ半分をそれぞれ別のシャトルへとぶつける。


 上空で僚機の土手っ腹を食い破ったシャトルはそのまま炎上しながら地表へと滑空していくので、その進路を少し修正して、地表のシャトル3機ほどを巻きこみながら墜落してもらった。これで7機。


 カスミちゃんも左を飛んでいたシャトルをサイコキネシスで動かし。直線上に並んでいた4機のシャトルを巻きこみながら墜落させることに成功した。これで12機。


 ぶつかられたシャトルが炎上しながら誘爆していく。

 誘爆の破片を別のシャトルの推進部にぶつけてみるとおもしろいように連鎖して誘爆していく。

 カスミちゃんと二人でサイコキネシスを駆使し、一つのシャトルの爆発で、その近くに駐機している別の2機を巻きこむ。次にその2機の誘爆に別の4機を巻きこむ。

 ねずみ算式に誘爆させていると、あっという間に無傷のシャトルはほとんどなくなった。


 前世に見た中に、七色の星々がある星域での戦いで、自艦にめり込んだミサイルを反転させただけで、そのミサイルが敵旗艦にあたり、敵旗艦の誘爆で僚艦空母が全滅したという古典的SFアニメがあったような気がするが、この光景はそれを上回る誘爆っぷりである。

 まあ、破片をサイコキネシスでぶつけているのだから、偶然誘爆したSFアニメと一緒にはできないだろうが……



 とりあえず、シャトルは全て潰したと油断したところで、一番離れたところに駐機していたシャトルが離陸していくのに気がついた。

 しかもこのシャトルは垂直にゆっくり上昇していた最初の3機と違い、草原の荒れた地面でランディングしてのテイクオフを敢行し、最初からかなりの速度で飛行している。


「追うよ!カスミちゃん」

 私は張りぼて宇宙船をサイコキネシスで飛ばし、逃げゆく敵シャトルを追う。


「アイネちゃん!私も操船して見たい!」

「いいわよ。サイコキネシスで持ち上げて動かすのよ。

 レビテーションと同じ感覚よ。」

「わかった。やってみる」


 私は操船をカスミちゃんに任せ、敵シャトルへと意識を集中する。

 すると敵機からチカッと2つの煌めきが見えた。

 クレヤボヤンスで確認するとミサイルだった。しかもホーミング機能がついているのだろうか。

 前方に射出したミサイルが180度回頭してこちらへ向かってこようとしている。


「カスミちゃん、ミサイルが来るわ。

 熱感知式なら問題ないけど、機体認識型みたいなの。進路修正しながら接近中!」

「了解、上昇して振り切ってみるわ」


 私たちの張りぼて宇宙船の上昇に合わせて敵ミサイルも進路を変える。

「やっぱりついてくるみたい。ミサイルの燃料ってどれくらい持つのかしら」

「とりあえず振り切るまで上昇してみるけど、敵機を見失わないでね」

「了解、クレヤボヤンスで確認しておく。」


 カスミちゃんは機体をどんどん上昇させていき、対流圏を抜けたあたりで敵ミサイルの燃料が切れて落下をはじめたようだ。

 敵シャトルは進路を私たちへと向けて追撃態勢に入っている。


「敵機が向かってくるわ。ちょうどいいから、あの燃料切れのミサイルでもぶつけてみましょう。」

「分かったわ。私は機体をこのままゆっくり降下させていくわ」 


 カスミちゃんにそのまま操船を任せ、私はサイコキネシスで燃料が切れて落下中のミサイルを操作し、姿勢制御して敵機との軸線上に乗せるとそのまま加速させた。


 数秒後、下方にまぶしい閃光がみえ、5秒ほど遅れて爆発音が聞こえた。

 とりあえず、ミッション完了である。


 これで当面空爆の危険はないだろう。


 後は地上に展開しているゲルマノイル帝国とローミラールの連合軍に降伏を勧告するだけである。そのためにはレーザー兵器を無力化できるこの張りぼて宇宙船が最適だろう。

 前回の戦いで、敵艦の巨大レーザーを反射した鏡面生成の仕掛けが機能することを確認した後、私たちは国境付近に展開してた帝国軍本体へと降下していった。






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