第51話 再会は突然に… (51話)

 この広い星ではクレヤボヤンスを駆使しても、何の目印もなしに人一人を特定することは困難を極める。

 私はカスミちゃんの花壇がクレヤボヤンスに写る日をひた待ちにしながら、ボーッとしていることが多くなっていた。


 見習い冒険者としての依頼に、地竜を使った近隣の街への大きな荷物の輸送など今までなかったような依頼もあり、仕事はあるのだが、どうにも気合いが入らない。


 カスミちゃんが旅立って3ヶ月後、私は11歳になった。

 そろそろジョーイさんの実家にカスミちゃんたちがつく頃かななどと考えていたときに、その依頼は舞い込んだのだ。

 指名依頼である。


 直接ギルドマスター室に呼ばれ、依頼の内容を聞いて、受けるのであれば依頼人と面談することになるようだ。



 マスター室に着くと、ランバさんが待っていた。


「アリアちゃん、よく来てくれた。」


「おはようございます。ランバさん。

 それで、指名依頼って何ですか?

 見習い冒険者の私を指名するって、何か引っかかるんですが…」


「そう警戒しなくてもいいよアリアちゃん。

 この指名依頼は君を指名したというより、最も条件に合う冒険者を指名しているんだ。

 私の見たところ、その条件に最も合致しているのが君だということだ。」



 いったい何なのだろう。話の先が見えてこない。


「それで、どんな条件なんですか?」


「護衛と輸送の依頼だ。

 それもできうる限り早く実行できる冒険者を探している」


「護衛と輸送?

 私じゃなくてもいいような…」


「いや、君じゃないとおそらく無理だ。

 正確には君が猟犬にしている2頭の地竜だがな」



 カスミちゃんが実家に帰るにあたり、セキホウを連れて行くのは無理があるし、月面コロニー恐竜エリアとのテレポート移動は私にしかできないので、二頭とも私の所属としている。



 ランバさんは続けていう。

「ハクウンとセキホウはかなり速いだろ」


「ええ、2頭とも体長15メートルほどありますから、そこら辺の馬よりは速いと思います」


「持久力はどうだ?」


「試したことはありませんが、餌さえ与えれば一日中動き回れると思います」


「よし、話は決まりだ。

 地竜に依頼主を乗せてできるだけ迅速に送り届けてくれ」


「いつまでにどこへ送り届けるんですか?」


「それは直接依頼主に聞いてくれ。

 場所はギルドの向かいの宿屋だ。

 とりあえず、先方はものすごく急いでいる。

 たのむよ」


「わかりました」



 返事はしたものの、よく分からないまま私は宿屋の教えられた部屋へ向かう。


 トントン

 ノックしてから声をかけた。

「こんにちは

 見習い冒険者のアリア・ベルです。

 冒険者ギルドから紹介されてきました」


「ああ、待っていた。

 入りたまえ」


 中から落ち着いた男性の声がする。


「失礼します」

 ガチャリッ 

 ノブを回して部屋に入ると窓を眺めていた男性が振り返って自己紹介をはじめる。


「こんにちは、お嬢さん。

 私はアルタリア王国侯爵、ライオネット・フォン・ヘイゼン………」


 男性は自己紹介の途中で目を大きく見開き、紹介を中断する。

「アッ…アイネリア…」


「お父さま…」

 わたしは反射的に答えてしまっていた。


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