第6話 夜空がきれいでした… (6話)

 イノシシを食することができない私はすぐにふて寝してしまった。

 早く寝すぎたため、いつもなら母の目覚めに合わせて明るくなってから目を覚ますのだが、今日に限って夜中に目を覚ましてしまった。


 夜に目を覚ましても暗すぎて本を読むこともできない。

 パイロキネシスを使ってランプの明かりで読んでもよいが、暗闇に明かりがあれば誰かに気がつかれやすくなる。


 やることがなくなった私はクレヤボヤンスを使って屋敷の外を見ることにした。


 どこまで視点を移動させても夜である。

 時刻は真夜中、地球でいえば午前零時。

 電気のないこの世界ではみんな寝ている。


 月明かりの風景をぼんやり眺めていると、目が慣れたのか森や遠くの山、月夜に咲く草花などが認識できるようになった。

 超能力でも目が慣れるってあるのかなぁ。


 空には真上に青白い大きな満月と地平線近くに小さな赤っぽい半月が出ている。

 どうやら衛星は2つ以上あるようだ。


 私はどこまで遠くに視点を飛ばせるか確かめたくなり、青い月に向けて視点を移動させた。

 高速で視点移動させるとどうやら宇宙空間に出たようである。

 私のいる星も大きな球に見えるところまで来た。


 色は夜の部分が黒に近い藍色、昼の部分は端っこにしか見えないがどうやらエメラルドグリーンの様な地球に似た色をしているようだ。


 そこから視点を更に動かし、太陽から遠い方角から惑星を観察する。

 自分の星が月ぐらいに見える距離まで移動すると、どうやら大きく見えた青い衛星は母星の近くを、小さく見えた赤い衛星は母星の遠くを周回しているだけで、大きさは同じくらいだということに気がついた。

 直径は母星である惑星の10分の1程度とかなり小さい。


 赤い方の衛星には更に小さな孫衛星が周回している。


 更に視点をずらすと惑星の陰に隠れて直径20分の1もない様な衛星が2つ、最も外側を回っているのに気がついた。


 どうやら連星のようだ。


 衛星が4つもあれば、この星の海の満ち引きはさぞかし複雑だろうなどと考えていると惑星の回りに何かきらきらするものがたくさん浮かんでいる。


 今度は視点を近づけると、土星の輪のような小惑星帯が惑星の赤道上空に無数にあることが分かった。

 この場合小衛星帯と言った方がよいのだろうか?

 最も内側の月より更に内側である。


 直径数十センチの小さな小惑星が惑星の重力に惹かれ流れ星となって星へと落ちていく。

 流れ星のあまりの美しさに私はもっと見たくなり、サイコキネキスを使って直径10センチほどの石を惑星に落としてみた。


 きらきらと光りながら燃え尽きていく。

 きれいだ。


 調子に乗った私はもう少し大きな小惑星を10個ほど流れ星にした。

 凄くきれいだ。

 10個の光がスーッと音もなく星へと沈んでいく。


 と、そのとき、一つの一番大きかった光が落ちた先に爆発が起きたような光がきらっと灯った。


 ものすごく悪い予感がした。


 私は視点を爆発の方向へ移動させる。


 そこにはキノコ雲があった。


 これは前世で見た桜島の噴火の噴煙に似ている。


 砂漠から立ち上ったキノコ雲。砂漠には直径数キロ、深さ数百メートルにも及ぶクレーター。


 幸い砂漠だったため人や生き物はいないようだ。

 しかし地形は変わってしまった。


 冷や汗ものであるが胎児な私は汗すらかかない。


 どうしてこうなった……。


 混乱する私に眠気が襲う。


『ピンポンパンポン クレヤボヤンス(暗視)を習得しました』

『ピンポンパンポン サイコキネキス コメットアタックもどき(彗星衝突もどき)を習得しました』

『ピンポンパンポン サイコキネキス メテオインパクトもどき(隕石激突もどき)を習得しました』


 なにやら物騒な魔法名を聞きながら私は眠りに落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る